DBLについて 
2022/07/09 Sat. 23:44 [edit]
昨日のGIANTのSLR1ホイールに付いて、
DBLこと ダイナミック バランスド レーシング仕様「ではない」と
書きましたが 一部 誤りがありました。

↑これは別件でお預かりしている GIANTのSLR1です。
リムは 昨日のSLR1と同じもので、年代もコスメチックも一致します。

チューブが チューボリートのもので、

薄いウェイトを注意深く貼っている点が 昨日のホイールとは違います。

で、リムにDBLという表記があるのですが
これは昨日のホイールのリムでも同様でした。
DBLというのは 昨日も書きましたが
フリー側の最終交差を成すスポーク2本で
スポーク比重を変える、フランジ片側での異径組みのことです。

↑これは昨日の記事のSLR1ですが、
最終交差の2本のスポークは同径でした。
なので DBLではありません。
そもそも DBLかどうかを疑っているのだから
私が それを見落とすことはありません。

↑これは今日のSLR1で、なるべく同じように撮った画像です。
最終交差の2本が異径なのですが、
違うのはスポークの厚みなので横から見た幅に 差はありません。
が、昨日のSLR1と比べると
昨日のほうがスポークの横幅が広いのが分かります。

2:1組みの反フリー側ラジアル組みのスポークに
カンパニョーロ/フルクラムのスポーク供回り押さえ工具の
B溝を当てました。

B溝の中に スポークが奥まで入りません。
このB溝は、サピムのCX-RAYと
DTのエアロライトに ちょうど合う幅です。

つづいて、フリー側のヤマアラシさん方向のスポークでは、

反フリー側のスポークと同じ寸法のスポークだったので
結果は同じでした。

最後に、フリー側の反ヤマアラシさん方向のスポークでは

奥まで入ります。
昨日の記事に書いた
「エアロスポークの場合 3ヵ所で2種類のスポークが使われている」
というのは これのことです。
では 昨日のSLR1で「3ヵ所とも同径スポークなのに
リムにDBLの表記があるのは間違いでは無いのか?」となりますが
実は それも間違いではありません。
DBLには「スポークのDBL」と「ハブのDBL」があり、
昨日のSLR1でも ハブのDBLだけは盛り込まれていたからです。

その前に もうひとつ。
これは自作の工具で、B溝を サピムのCXスプリントや
DTのエアロコンプの幅に合わせたものです。
つかんでいるスポークは 今日のSLR1の
フリー側のヤマアラシさん方向のスポークです。
X状の切り欠きは区別のための印です。
昨日のSLR1は この工具に合う厚みで
幅のみ さらに少し広いという寸法のスポークで
3ヵ所とも同じものでした。

ハブ側のDBLというのは、ヤマアラシさん方向のスポークと
反ヤマアラシさん方向のスポークで
長さを変えているという仕様です。余計なことを・・・。
これは「最終交差の2本のスポークのフランジ穴が
片側フランジでハイローフランジになっている」わけですが、
その量は大きくないので ホイールの性質に関わる要素の大小でいえば
スポーク比重を変えるほどの影響はありません。
デジカメ本体を ハブの右エンドに当てて
スポークヘッドが だいたい画像中央に来るように撮った・・・

↑ヤマアラシさん方向のスポークヘッドです。

↑つづいて反ヤマアラシさん方向です。
スポークヘッドとフランジとの位置関係が違うのが分かります。
今日のSLR1は、お客さんから
「シュータッチするほどではないが
何となく走らないので 何とかしてほしい、方法は任せる」
ということで お預かりしているものです。
スポークのDBLもしているので、
フリー側の交差を にぎにぎしたときのスポークの変形が
反ヤマアラシさん方向のスポークのほうが大きいというのが
誰でも簡単に観測できる状態でした。
このことが 乗って分かるレベルの良くない意味での感触に
現れているのではと思います。
結線などもそうですが、手で にぎにぎした程度で はっきり分かる違いが
間接的とはいえ足で踏んだ感触で 分からないわけがありません。
昨日の記事でも書きましたが、スポークのDBLに相当する
スポークアレンジメントは 私も過去に手組みホイールで試しました。
売り物になると考えられるのであれば のむラボホイールに盛り込んでいます。
GIANTが悪質なのは、リム(見た目も含む)とハブが全く同じで
スポークだけ しれっと仕様を変えている点です。
今後 このコスメチックのリムのSLR1を見たときに、
スポークのDBLをしているかどうかの確認をしないといけなくなりました
(まあ、どのみちGIANTのホイールは全数 DBLを疑うんですが)。
そういえば、DTのねじ込み式スキュワーと ほぼ同じもの
(レバーと逆側のカンの部分の
フレームやフォークの切り欠きに対する形状が違う)の
GIANTブランド版も出していましたが、
自社の完組みホイールのハブのベアリングサイズが ロヴァ―ル同様に小さいので
ちょっと強く締めただけで ベアリングがすぐ逝くことから
ロード用の100/130mm用のものは ひっそり廃版にしていました。
リヤ135mmのみ残していたのは、
フロントが100×15mmスルーアクスルで
リヤが135mmクイックという 過渡期のMTB
または シクロクロス用です。
SLR1の後輪は 2:1組みのЖ(ジェー)組みなので、
通常は真横から見た場合 フリー側の最終交差の交点を
反フリー側のラジアル組みのスポークが通ります。
これが、DBLだと交点のほうが ねじれているので通りません。

これは肉眼(片目)でも カメラのレンズを通しても
同じことができますが、
ハブシャフトの中空穴を まっすぐ見通せるアングルからだと
きれいなЖ組みを 見ることはできません。

きれいなЖ組みが見えるアングルにすると、
ハブシャフトの中空穴が見通せなくなります。
今日のSLR1については、ハブのDBLは どーしようもないので
フリー側を左右同径かつ 反フリー側よりスポーク比重が小さい
左右逆異径組みにしたうえで結線という
2:1組みに対するいつもの対処になるかと思います。
ハブのDBLの影響度は それほど大きくないので、
昨日のSLR1は スポーク比重が大きいこともあってか
最終交差をにぎにぎしたときの差は感じられませんでした。
昨日の記事は一部 内容を訂正して、この記事への相互リンクを貼ります。
昨日のSLR1については(→こちら)
DBLこと ダイナミック バランスド レーシング仕様「ではない」と
書きましたが 一部 誤りがありました。

↑これは別件でお預かりしている GIANTのSLR1です。
リムは 昨日のSLR1と同じもので、年代もコスメチックも一致します。

チューブが チューボリートのもので、

薄いウェイトを注意深く貼っている点が 昨日のホイールとは違います。

で、リムにDBLという表記があるのですが
これは昨日のホイールのリムでも同様でした。
DBLというのは 昨日も書きましたが
フリー側の最終交差を成すスポーク2本で
スポーク比重を変える、フランジ片側での異径組みのことです。

↑これは昨日の記事のSLR1ですが、
最終交差の2本のスポークは同径でした。
なので DBLではありません。
そもそも DBLかどうかを疑っているのだから
私が それを見落とすことはありません。

↑これは今日のSLR1で、なるべく同じように撮った画像です。
最終交差の2本が異径なのですが、
違うのはスポークの厚みなので横から見た幅に 差はありません。
が、昨日のSLR1と比べると
昨日のほうがスポークの横幅が広いのが分かります。

2:1組みの反フリー側ラジアル組みのスポークに
カンパニョーロ/フルクラムのスポーク供回り押さえ工具の
B溝を当てました。

B溝の中に スポークが奥まで入りません。
このB溝は、サピムのCX-RAYと
DTのエアロライトに ちょうど合う幅です。

つづいて、フリー側のヤマアラシさん方向のスポークでは、

反フリー側のスポークと同じ寸法のスポークだったので
結果は同じでした。

最後に、フリー側の反ヤマアラシさん方向のスポークでは

奥まで入ります。
昨日の記事に書いた
「エアロスポークの場合 3ヵ所で2種類のスポークが使われている」
というのは これのことです。
では 昨日のSLR1で「3ヵ所とも同径スポークなのに
リムにDBLの表記があるのは間違いでは無いのか?」となりますが
実は それも間違いではありません。
DBLには「スポークのDBL」と「ハブのDBL」があり、
昨日のSLR1でも ハブのDBLだけは盛り込まれていたからです。

その前に もうひとつ。
これは自作の工具で、B溝を サピムのCXスプリントや
DTのエアロコンプの幅に合わせたものです。
つかんでいるスポークは 今日のSLR1の
フリー側のヤマアラシさん方向のスポークです。
X状の切り欠きは区別のための印です。
昨日のSLR1は この工具に合う厚みで
幅のみ さらに少し広いという寸法のスポークで
3ヵ所とも同じものでした。

ハブ側のDBLというのは、ヤマアラシさん方向のスポークと
反ヤマアラシさん方向のスポークで
長さを変えているという仕様です。余計なことを・・・。
これは「最終交差の2本のスポークのフランジ穴が
片側フランジでハイローフランジになっている」わけですが、
その量は大きくないので ホイールの性質に関わる要素の大小でいえば
スポーク比重を変えるほどの影響はありません。
デジカメ本体を ハブの右エンドに当てて
スポークヘッドが だいたい画像中央に来るように撮った・・・

↑ヤマアラシさん方向のスポークヘッドです。

↑つづいて反ヤマアラシさん方向です。
スポークヘッドとフランジとの位置関係が違うのが分かります。
今日のSLR1は、お客さんから
「シュータッチするほどではないが
何となく走らないので 何とかしてほしい、方法は任せる」
ということで お預かりしているものです。
スポークのDBLもしているので、
フリー側の交差を にぎにぎしたときのスポークの変形が
反ヤマアラシさん方向のスポークのほうが大きいというのが
誰でも簡単に観測できる状態でした。
このことが 乗って分かるレベルの良くない意味での感触に
現れているのではと思います。
結線などもそうですが、手で にぎにぎした程度で はっきり分かる違いが
間接的とはいえ足で踏んだ感触で 分からないわけがありません。
昨日の記事でも書きましたが、スポークのDBLに相当する
スポークアレンジメントは 私も過去に手組みホイールで試しました。
売り物になると考えられるのであれば のむラボホイールに盛り込んでいます。
GIANTが悪質なのは、リム(見た目も含む)とハブが全く同じで
スポークだけ しれっと仕様を変えている点です。
今後 このコスメチックのリムのSLR1を見たときに、
スポークのDBLをしているかどうかの確認をしないといけなくなりました
(まあ、どのみちGIANTのホイールは全数 DBLを疑うんですが)。
そういえば、DTのねじ込み式スキュワーと ほぼ同じもの
(レバーと逆側のカンの部分の
フレームやフォークの切り欠きに対する形状が違う)の
GIANTブランド版も出していましたが、
自社の完組みホイールのハブのベアリングサイズが ロヴァ―ル同様に小さいので
ちょっと強く締めただけで ベアリングがすぐ逝くことから
ロード用の100/130mm用のものは ひっそり廃版にしていました。
リヤ135mmのみ残していたのは、
フロントが100×15mmスルーアクスルで
リヤが135mmクイックという 過渡期のMTB
または シクロクロス用です。
SLR1の後輪は 2:1組みのЖ(ジェー)組みなので、
通常は真横から見た場合 フリー側の最終交差の交点を
反フリー側のラジアル組みのスポークが通ります。
これが、DBLだと交点のほうが ねじれているので通りません。

これは肉眼(片目)でも カメラのレンズを通しても
同じことができますが、
ハブシャフトの中空穴を まっすぐ見通せるアングルからだと
きれいなЖ組みを 見ることはできません。

きれいなЖ組みが見えるアングルにすると、
ハブシャフトの中空穴が見通せなくなります。
今日のSLR1については、ハブのDBLは どーしようもないので
フリー側を左右同径かつ 反フリー側よりスポーク比重が小さい
左右逆異径組みにしたうえで結線という
2:1組みに対するいつもの対処になるかと思います。
ハブのDBLの影響度は それほど大きくないので、
昨日のSLR1は スポーク比重が大きいこともあってか
最終交差をにぎにぎしたときの差は感じられませんでした。
昨日の記事は一部 内容を訂正して、この記事への相互リンクを貼ります。
昨日のSLR1については(→こちら)
category: ハブ片側で異本異径組みする話
18Hの後輪はフランジ片側で異本組みせざるを得ない話 
2013/11/17 Sun. 05:44 [edit]
スポークのDTが ハブの分野に手を出したのはそんなに昔のことではありません。

現行モデルの前までは「Hugi(フギ)」というブランド名で展開していました。
(ウムラウトの入力が面倒なので「u」と打ちました)

で、このフギハブですが ハブとしては特に見るべきところはありません。
が、あまりにも珍しい点がひとつありまして、
これ18Hのリヤハブなんです。

18Hということは、片側9Hということですね。

↑私はハブフランジをこういう風に展開して考えることが多いです。
メルカトル図法的展開と書いてますが、
アドミラル的展開、またはミツカン的展開でもいいです。
追記:切り取り線の入れ方を間違っていたので訂正しました。
ご指摘のコメントありがとうございます。

で、片側9Hで2本組みを取っていったとすると、
奇数なので1本余ります。これはどう考えてもホイールバランスが悪いので、
なるべくバランスが破綻しない組み方を考えます。

↑となると この2つしかありません。
2本組みとラジアル組みを交互に挟むか、2本組みの中にラジアル組みを通すかです。
リム全周に対する縦振れのばらつきが少なくて済むのは 前者なので
私は18Hで後輪を組む必要があるとなればXI型で組みます。

片側のフランジに タンジェント組みとラジアル組みが混在しているので、
当然 各々の組み方のスポークテンションは異なります。

ホイール組みは、リムの位置をハブ全体の幅のセンターに持って来つつ
なるべく高い妥協点で縦振れと横振れを少なくするという作業です。
この縦振れの青いラインを

↑なるべく円の形に持っていきたいわけですが、
そのときのタンジェント組みとラジアル組みのスポークテンションは異なります。

↑もしスポークテンションのほうを合わせたならば、
極端に描けば こういう状態になります。
縦振れを取ればテンションがばらつき、テンションを合わせれば縦振れが出ます。
ホイールとして使ううえで どちらがまだましかというと前者です。

スポークテンションは スポークにかかっているテンションです。
上の図で言うところのRKとは異なります。
スポークテンション=RKではありません。
ニップルによるリムの破損に関係するのはRKのほうですね。
同じRKの場合、スポークが太くなればスポークテンションは下がります。
RKは現実的には測りようがないので
リムメーカーは耐破損の閾値として スポークテンションを定めていますが、
同スポークテンションでも太さによってRKは変わります。
スポークテンションが同じだと太いスポークほどRKが大きくなるので
例えば120kgfが上限値のリムを
2.0mmプレーンで120kgfで張った場合、
そのときのリムの破損リスク(=RK)は
CX-RAYの140kgfと同じくらいかもしれないわけです。
ただ、 リムの方が「120kgfまで!」と
スポークテンションのほうで上限を決めているので そちらに従うしかありません。
スポークテンションはRKと違い かなり正確に概算値が出せるので
メーカーとしては 閾値はそちらで指定するしかないのです。

話がそれましたが スポークの径とスポークテンションは
「太い=低い、細い=高い」という関係になるということです。

で、XI型の組み方を全て同じモデルのスポークで組んだとします。
これは フランジ片側での同径異本組みです。

同径異本組みを、スポークテンションに関してだけですが
異径同本組みで表現することは可能です。
もし異径同本組みの2種類のスポークの比重を任意に無段階で変更できるとしましょう。
(ニップルの穴径も含めてプレーンスポークの径を自分で任意に決められるとします)
そうなれば
18H同径異本組みの
「タンジェント組み:ラジアル組み」のスポークテンション比を
18H異本同径組みの
「細いスポーク:太いスポーク」で同じ比にすることもできるはずです。
実際は タンジェント組みとラジアル組みでは
ねじれ入力に対する振る舞いが異なるので、そうなった場合は
3分の2だけタンジェント組みを残している同径異本組みのほうが
ねじれに対しては強そうではありますが。
DTフギ18Hリヤハブでは
片側フランジ異本組みをせざるを得ません。
また、後輪では両側ラジアル組みは絶対にNGなので
少なくとも片側はタンジェント組みをしなければなりません。
ではもしこれが、18Hの前輪だったらどうでしょう。
その場合は普通 ラジアル組み一択ですね。
片側フランジ異径組みというのは、スポークテンション的には
ちぐはぐの太さのスポークでラジアル組みをするのと同義です。
ちぐはぐの太さのスポークでラジアル組みをすることの優位性を
説くことができるのであれば、
片側フランジでタンジェント組みとラジアル組みを混ぜる優位性も
説くことができると思うのですが、私には無理です。
これは理論上もそうですが 経験的にもそうです。

私個人のアホイール(※アホなホイール)で
32Hの片側16Hで、1クロスのねじり組みとラジアル組み2本が
ひとまとまりとなる組み方をしたことがありますが、
縦振れがきれいに取れませんでした。
赤く描いたラジアル組みのスポークの方がテンションが低いわけですが、
テンションが低いというのは ゼロにより近いということです。
実際に使うとラジアル組み側が
駆動伝達と剛性担保の仕事をしていない感触になりました。
大げさに言えばねじり組みのスポークだけのホイールと大差ない感じです。
あと、このラジアル組み側のスポークがよくゆるみます。

なのでちょっと組み方を変えてラジアル組みを1クロスに変更しました。
こうなると違いは ねじっているかどうかだけなのですが、
2ヶ月ほどでスポークの首が飛んだのでばらしてしまいました。
売り物にするつもりもなかったのですが、売り物にはならんなぁという
ほぼ分かりきった答えが出ただけです。
片側フランジ異径組みは基本的にはNGです。
DTにトライコンというコンセプトのホイールがありますが、
あれはハブ側のスポークの出しろのフランジ高さを変えてあることと
非ラジアルの2本のスポークの向きがよく練られているので
スポークテンションの差はありますが
首飛び頻発問題は避けられているんじゃないかと思います。
それ以前にストレートスポークですね。それも大きいです。

↑探してたら見つかりました。
かつて組んでいたときの画像です。
これは「フリー側ヌポークXI組み/反フリー側反ヌポークラジアル組み」ですね。
この後に反フリー側も全ヌポークXI組みにしたのですが、
そのときの画像はありませんでした。
XI組みとか造語を使ってますが、起源の主張をしたいわけではありません。
18Hのリヤハブを渡されたら誰であろうが 実質こう組むしかないからです。
これの相方の前輪はTniカーボンハブ18H XI組みだったのですが、
当時の私には異径スポークというアイデアが無かったのと
試作品なので細いスポークは怖いのとで 全て2.0mmプレーンで組んでいます。
ヌポークとかヨンロク組みとかXI組みとかいう用語を作っておけば、
たいていどんな組み方でも類型に当てはめることができるので便利です。

↑スポークテンションだけに固執するのであれば
3本のラジアルスポークを細いスポークにすれば、
(実際の比重差をどのくらいにすればいいのかは分かりませんが)
6本のタンジェントスポークに近しくはなるはずです。
異本異径組みにしてなるべくプラスマイナスゼロに持っていこうという考えです。
が、これでそろうのはスポークテンションであって スポークの変形量や
ニップル側のRKまではそろいません。
しかし、これら(テンション・変形量・RK)を全てそろえる画期的な組み方があります。
マネしてもらってもいいですよ!
それは同本同径組みです!18Hでタンジェント組みだと
全てのスポークを同本組みにできないのでラジアル組みにしちゃいましょう!
全てのスポークを同じモデルにしてラジアル組みすれば
前輪ならスポークテンションも変形量もRKもそろいます!
18HのXI組みは「18Hのリヤハブで後輪を組むことになった」場合にのみ
仕方なくせざるを得ない組み方で、メリットは ほぼありません!
最大のデメリットはスポークテンションのばらつきです。
まあこれはテンションメーターを使わないとはっきり分からないことですが。

現行モデルの前までは「Hugi(フギ)」というブランド名で展開していました。
(ウムラウトの入力が面倒なので「u」と打ちました)

で、このフギハブですが ハブとしては特に見るべきところはありません。
が、あまりにも珍しい点がひとつありまして、
これ18Hのリヤハブなんです。

18Hということは、片側9Hということですね。

↑私はハブフランジをこういう風に展開して考えることが多いです。
メルカトル図法的展開と書いてますが、
アドミラル的展開、またはミツカン的展開でもいいです。
追記:切り取り線の入れ方を間違っていたので訂正しました。
ご指摘のコメントありがとうございます。

で、片側9Hで2本組みを取っていったとすると、
奇数なので1本余ります。これはどう考えてもホイールバランスが悪いので、
なるべくバランスが破綻しない組み方を考えます。

↑となると この2つしかありません。
2本組みとラジアル組みを交互に挟むか、2本組みの中にラジアル組みを通すかです。
リム全周に対する縦振れのばらつきが少なくて済むのは 前者なので
私は18Hで後輪を組む必要があるとなればXI型で組みます。

片側のフランジに タンジェント組みとラジアル組みが混在しているので、
当然 各々の組み方のスポークテンションは異なります。

ホイール組みは、リムの位置をハブ全体の幅のセンターに持って来つつ
なるべく高い妥協点で縦振れと横振れを少なくするという作業です。
この縦振れの青いラインを

↑なるべく円の形に持っていきたいわけですが、
そのときのタンジェント組みとラジアル組みのスポークテンションは異なります。

↑もしスポークテンションのほうを合わせたならば、
極端に描けば こういう状態になります。
縦振れを取ればテンションがばらつき、テンションを合わせれば縦振れが出ます。
ホイールとして使ううえで どちらがまだましかというと前者です。

スポークテンションは スポークにかかっているテンションです。
上の図で言うところのRKとは異なります。
スポークテンション=RKではありません。
ニップルによるリムの破損に関係するのはRKのほうですね。
同じRKの場合、スポークが太くなればスポークテンションは下がります。
RKは現実的には測りようがないので
リムメーカーは耐破損の閾値として スポークテンションを定めていますが、
同スポークテンションでも太さによってRKは変わります。
スポークテンションが同じだと太いスポークほどRKが大きくなるので
例えば120kgfが上限値のリムを
2.0mmプレーンで120kgfで張った場合、
そのときのリムの破損リスク(=RK)は
CX-RAYの140kgfと同じくらいかもしれないわけです。
ただ、 リムの方が「120kgfまで!」と
スポークテンションのほうで上限を決めているので そちらに従うしかありません。
スポークテンションはRKと違い かなり正確に概算値が出せるので
メーカーとしては 閾値はそちらで指定するしかないのです。

話がそれましたが スポークの径とスポークテンションは
「太い=低い、細い=高い」という関係になるということです。

で、XI型の組み方を全て同じモデルのスポークで組んだとします。
これは フランジ片側での同径異本組みです。

同径異本組みを、スポークテンションに関してだけですが
異径同本組みで表現することは可能です。
もし異径同本組みの2種類のスポークの比重を任意に無段階で変更できるとしましょう。
(ニップルの穴径も含めてプレーンスポークの径を自分で任意に決められるとします)
そうなれば
18H同径異本組みの
「タンジェント組み:ラジアル組み」のスポークテンション比を
18H異本同径組みの
「細いスポーク:太いスポーク」で同じ比にすることもできるはずです。
実際は タンジェント組みとラジアル組みでは
ねじれ入力に対する振る舞いが異なるので、そうなった場合は
3分の2だけタンジェント組みを残している同径異本組みのほうが
ねじれに対しては強そうではありますが。
DTフギ18Hリヤハブでは
片側フランジ異本組みをせざるを得ません。
また、後輪では両側ラジアル組みは絶対にNGなので
少なくとも片側はタンジェント組みをしなければなりません。
ではもしこれが、18Hの前輪だったらどうでしょう。
その場合は普通 ラジアル組み一択ですね。
片側フランジ異径組みというのは、スポークテンション的には
ちぐはぐの太さのスポークでラジアル組みをするのと同義です。
ちぐはぐの太さのスポークでラジアル組みをすることの優位性を
説くことができるのであれば、
片側フランジでタンジェント組みとラジアル組みを混ぜる優位性も
説くことができると思うのですが、私には無理です。
これは理論上もそうですが 経験的にもそうです。

私個人のアホイール(※アホなホイール)で
32Hの片側16Hで、1クロスのねじり組みとラジアル組み2本が
ひとまとまりとなる組み方をしたことがありますが、
縦振れがきれいに取れませんでした。
赤く描いたラジアル組みのスポークの方がテンションが低いわけですが、
テンションが低いというのは ゼロにより近いということです。
実際に使うとラジアル組み側が
駆動伝達と剛性担保の仕事をしていない感触になりました。
大げさに言えばねじり組みのスポークだけのホイールと大差ない感じです。
あと、このラジアル組み側のスポークがよくゆるみます。

なのでちょっと組み方を変えてラジアル組みを1クロスに変更しました。
こうなると違いは ねじっているかどうかだけなのですが、
2ヶ月ほどでスポークの首が飛んだのでばらしてしまいました。
売り物にするつもりもなかったのですが、売り物にはならんなぁという
ほぼ分かりきった答えが出ただけです。
片側フランジ異径組みは基本的にはNGです。
DTにトライコンというコンセプトのホイールがありますが、
あれはハブ側のスポークの出しろのフランジ高さを変えてあることと
非ラジアルの2本のスポークの向きがよく練られているので
スポークテンションの差はありますが
首飛び頻発問題は避けられているんじゃないかと思います。
それ以前にストレートスポークですね。それも大きいです。

↑探してたら見つかりました。
かつて組んでいたときの画像です。
これは「フリー側ヌポークXI組み/反フリー側反ヌポークラジアル組み」ですね。
この後に反フリー側も全ヌポークXI組みにしたのですが、
そのときの画像はありませんでした。
XI組みとか造語を使ってますが、起源の主張をしたいわけではありません。
18Hのリヤハブを渡されたら誰であろうが 実質こう組むしかないからです。
これの相方の前輪はTniカーボンハブ18H XI組みだったのですが、
当時の私には異径スポークというアイデアが無かったのと
試作品なので細いスポークは怖いのとで 全て2.0mmプレーンで組んでいます。
ヌポークとかヨンロク組みとかXI組みとかいう用語を作っておけば、
たいていどんな組み方でも類型に当てはめることができるので便利です。

↑スポークテンションだけに固執するのであれば
3本のラジアルスポークを細いスポークにすれば、
(実際の比重差をどのくらいにすればいいのかは分かりませんが)
6本のタンジェントスポークに近しくはなるはずです。
異本異径組みにしてなるべくプラスマイナスゼロに持っていこうという考えです。
が、これでそろうのはスポークテンションであって スポークの変形量や
ニップル側のRKまではそろいません。
しかし、これら(テンション・変形量・RK)を全てそろえる画期的な組み方があります。
マネしてもらってもいいですよ!
それは同本同径組みです!18Hでタンジェント組みだと
全てのスポークを同本組みにできないのでラジアル組みにしちゃいましょう!
全てのスポークを同じモデルにしてラジアル組みすれば
前輪ならスポークテンションも変形量もRKもそろいます!
18HのXI組みは「18Hのリヤハブで後輪を組むことになった」場合にのみ
仕方なくせざるを得ない組み方で、メリットは ほぼありません!
最大のデメリットはスポークテンションのばらつきです。
まあこれはテンションメーターを使わないとはっきり分からないことですが。
category: ハブ片側で異本異径組みする話
ゾンダG4先生 
2013/11/06 Wed. 04:57 [edit]
先日、私がここで書いているようなホイールの理屈は
理が先にあって結果が付いてきたわけではなく
度重なる試行の果てに得られた どうも確からしいと思われる結果に対して
理の方を後付けで考えていると書きました。
ホイールやその他パーツに関しては、もうひとつ別の観点から
より良いものを作るためのヒントが得られることがあります。
「他人の作ったものを見て、なぜそうしたのか考える」というのがそれです。
例えば1999年の初代キシリウムです。
フリー側をラジアル組みするという発想は
それまでの自転車100年の歴史の中に無かったものです。
(少なくともキシリウム以前に 定着してよく知られたものはありません)
で、一見そういう掟破りで不可思議なことをしているのを見て
「何でこれ、こんなことしているんだろう」という理由を
考えることがヒントになります。

マヴィックではフリー側ラジアル組み
(厳密には疑似ラジアルの場合もあるので0本組み)のことを
ISOPULSEと呼んでいますが、
イソパルスのメリットを書いているものの
なぜそうなるのかについては触れていません。

↑タンジェント組みの場合、最終交差する2本のスポークの
引っ張り方向の合力は上の図のようになりますが、
これはラジアル線上にあるので ラジアル組みなら斜め方向の損失無しに
この合力方向の引っ張りが得られます。
ということはタンジェント組みは 合力(上の図のF3)を得るのに
ラジアル組みよりも 大きな力で引っ張る必要があり、
大きな力でということはスポークテンションが上がるということです。
ということはラジアル組みのほうがスポークテンションが低くなるということであり、
フリー側をラジアル組みにすると 反フリー側のスポークテンションとの差が
相対的に縮まるということです。
というのが私なりの解釈ですが、マヴィックのカタログにはここまで書いていません。
で、これは大きな刺激になりました。
私の言う左右異本組みというのは ある意味「手組みにおける疑似イソパルス」です。
これが無ければ 例えば32Hの後輪なら 左右6本組みで組むことに何の疑問も感じず
一生6本組みでホイールを組み続けていたかもしれません。
イソパルスの意味するところはフリー側ラジアル組みだけでなく もう一つ、
反フリー側をほぼ接線方向で引くというのも含まれます。
ここでいう接線とはハブフランジに対しての接線で、
私が言うところのまぎらわしい最接線組みや真の最接線組みとは異なります。
なぜ私が反フリー側のスポークの伸長方向を、
「あるハブとリムとスポーク本数のときに
スポークがハブフランジの接線に最も近しくなるn本組み」にせず
「とにかく可能な限りnが大きくなるn本組み」にするのかは
ここには書けません。
仮にキシリウムの後輪が24Hであったなら
イソパルス的解釈ではゼロヨン組みになります。
が、私の左右異本組みではゼロロク組みになります。
マヴィックが間違っているというのではありません。
メリットデメリットを取捨選択すると私なりの解はそうなるということです。
マヴィックがイソパルスを詳述しないように
私も左右異本組みを詳述しません(笑)。
コールの後輪のときに書きましたが、完組みといえど ほとんどの後輪は
「20Hか24Hのハブでヨンヨン組みかヨンゼロ組みしてるだけ」です。
それにメーカーのロゴ入りステッカーが張ってあるというだけです。
こういうホイールは面白くないですね。
WH-7700系やR-SYSのように、デメリットが明らかに見えているような
ホイールでも「普通じゃないこと」をしているホイールのほうが
見ていて面白いです。
で、そろそろ表題の回収に入ります。


↑ここにカンパニョーロの1998年から2007年までのカタログがあります。
ある時期から1997年まで カンパニョーロのカタログには
Tecnologia ed emozioneというキャッチコピーが
表紙に書いてあったのですが
1998年からはTechnology and emotionと英語に変わり
2002年からは なくなりました。
それはいいとして ゾンダの変遷だけを見ていくことにします。

まずは1998年。
シャマルが前後12Hというエアロホイールだったときに
それより下位グレードで前後16Hのエアロホイールとして出ていました。

次に1999年。
ブラックリムになりハブの仕様が変わりました。
CULTが出たのはずっと後ですが、
この年以降のホイールからCULT化が可能です。

仕様というか重量的にはゾンダのほうが軽いのですが、
カタログ順ではヴェントのほうが先になっています。

2000年は カタログ落ちしました。

2001年は ハイプロファイルのホイールはボーラとシャマルのみ、
ミディアムプロファイルのホイールはまだありません。
この頃までは完組みがスペシャルなものという位置付けだったので
練習用は手組み、スポーク数が少なかったり市販のリムではありえないリム高
(といっても40mmとか50mmとか)は完組み、という棲み分けがあったのです。

2002年からミディアムプロファイルのホイールが出てきました。
ゾンダはG3ホイールとして復活です。
この年くらいから完成車に組み込まれるような価格帯の
カンパニョーロホイールというのがそろってきています。

で、前輪もG3なんですね。
このときのミディアムのフラッグシップはエウラスですが、
エウラスはラジアル組みです。
前輪のG3組みは、はっきり言って単なるファッションです。
理屈を伴っていません。ペアスポークが目新しいから、ただそれだけのことです。
後輪と違いスポーク数が右2:左1とはいきませんから、
左右同数になるよう右2:左1の隣は 右1:左2の逆G3にしないといけません。
で、G3の束の総数が偶数でないと左右同じ本数にならないので
G3×7の21Hや G3×9の27Hにはできません。
この年のゾンダの前輪はG3×6の18H、シロッコがG3×8の24Hです。
~2003年はこの記事の主題なので後回し~

2004年は前輪のG3をやめてラジアル組みに変更になりました。
シロッコはあいかわらずG3の前輪です。
エウラス寄りのスペックになったということですね。

2005年は変更無しです。

2006年はフルクラムが本格デビューした年でもあるのですが、
ニップルを磁石で呼ぶ仕様に変更になり リムテープが要らなくなりました。
2:1のレーシング3か G3のゾンダか、という選択肢になっています。
この年からシマノフリーも選択可能になりました。
画像はシルバーバージョンですがブラックもあります。
2007年はゾンダに関しては同スペックなので割愛します。
シャマルウルトラゴールドが出た年です。

で、問題の2003年です。
この年だけゾンダG4という前輪があるんです。


G4組みは2003年のゾンダの前輪だけです。

どうなっているか分かりにくいので 同年のスペアパーツカタログより
組み方の図解を。
AスポークとBスポークがありますが Aが反ヌポークラジアル、
Bが自分から見てヌポークヤマアラシさん方向になっています。
図ではハブの左から見た図になっていますが(玉当たり調整ナットがあるので)、
自分から見て近い側が常にヤマアラシさん方向というのは
要はJIS組みになっているということです。
前輪をランダムにはめても性質の違いが出ないように表裏をなくす、
という配慮なのでしょうが 何となく気持ちが悪いです。

私は基本的に資料は自分で用意することにしているのですが
(メーカー・ショップ・個人など 他人様の画像を使わない)、
こればっかりは現物の画像がないので
ネットで見つけてきました。

ハブの穴は均等間隔ですが 反ヌポークラジアルと
ヌポークJISタンジェント側のみが混在しているのが分かるでしょうか。

↑バルブ穴は束の真ん中にあいています。

ゾンダG4の作り方
まず、ヌポークラジアルの前輪と JIS組みの前輪を用意します。
ともに20Hなので 足すと40Hの前輪ができあがります。
右辺のごちゃごちゃした物体がそれです。

両辺とも2で割ります。
これの右辺がゾンダG4です。
ちょっと戻って画像を見てもらうと
「40Hからスポークを間引いた20Hの前輪」なのが分かると思います。

ハブ穴の位相がずれているのが気持ち悪いので
間引いたスポークの穴を消した上で均等間隔にします。
というのがゾンダG4の構造なのですが、
ここから後付けでメリットを見出しましょうというのが お題です。
難しいですね。私もこれのメリットを説明できません。

G4の一束だけを描いてみました。
Aスポークだけのホイールであったなら
ロルフ的ペアスポークのホイールのようにも見えますが、
BスポークとしてJIS組みのヌポークが間に割って入っています。
AスポークとBスポークですが、スポークテンションは同じにはなりません。
同じにならないからイソパルスや左右異本組みが成立します。
片側のフランジで違う組み方を混ぜると スポークテンションの違いや
乗車時にかかるストレスの違いで、顕著にゆるむスポークが出てくることになるはずです。
このBスポークがせめてイタリアン組みのヌポークであったなら
回転方向に対して左右のABスポークの挙動は同じになると思うのですが、
ホイールに疎い人が前輪を適当にはめてもいいように表裏のない
BスポークJIS組み相当にしている事情も理解はできます。

コリマでヤマアラシさん方向のスポークだけのホイールがありますが、
スチールスポークで剛性担保は無理なのでカーボンスポークになっています。
これは見方によっては「イタリアン組みから 反ヤマアラシさん方向の
スポークを間引いた」形になっています。
理に走りすぎな感はありますが、面白いですね。

↑話をG4に戻します。
こちら側から見てハブの回転方向が時計回りになると
進行方向は右向きになりますが、
そこからハードブレーキングしたとすると
進行方向右側のフランジのBスポークはテンションが張る側になりますが
反対側はテンションが抜ける側になります。
これを前輪のローテーション無しで(いや、普通そんなことはしませんが)
継続使用すると左右のBスポークで首折れを起こす確率などが
変わってくると思います。
駆動輪ではないとはいえなんとなく嫌ですね。
この状態からリム穴も均等間隔にしてAスポークをラジアルではなく
Bスポークと拮抗するようにタンジェント組みすると
「普通のJIS組みの前輪」になりますが
JIS組みはヌポークの左右の挙動が違うのが嫌だ、
それなら逆イタリアン組みの方がまだましだ、
というのが私の個人的見解なのでこのゾンダG4は受け入れがたいものがあります。
でも欲しい。
何が言いたいかというと片側のフランジで違う組み方を混ぜるのはNGということです。
この記事のカテゴリの「ハブの片側で異本・異径組みをする話」のうち、
異本組みの実例の話でした。
つづく
理が先にあって結果が付いてきたわけではなく
度重なる試行の果てに得られた どうも確からしいと思われる結果に対して
理の方を後付けで考えていると書きました。
ホイールやその他パーツに関しては、もうひとつ別の観点から
より良いものを作るためのヒントが得られることがあります。
「他人の作ったものを見て、なぜそうしたのか考える」というのがそれです。
例えば1999年の初代キシリウムです。
フリー側をラジアル組みするという発想は
それまでの自転車100年の歴史の中に無かったものです。
(少なくともキシリウム以前に 定着してよく知られたものはありません)
で、一見そういう掟破りで不可思議なことをしているのを見て
「何でこれ、こんなことしているんだろう」という理由を
考えることがヒントになります。

マヴィックではフリー側ラジアル組み
(厳密には疑似ラジアルの場合もあるので0本組み)のことを
ISOPULSEと呼んでいますが、
イソパルスのメリットを書いているものの
なぜそうなるのかについては触れていません。

↑タンジェント組みの場合、最終交差する2本のスポークの
引っ張り方向の合力は上の図のようになりますが、
これはラジアル線上にあるので ラジアル組みなら斜め方向の損失無しに
この合力方向の引っ張りが得られます。
ということはタンジェント組みは 合力(上の図のF3)を得るのに
ラジアル組みよりも 大きな力で引っ張る必要があり、
大きな力でということはスポークテンションが上がるということです。
ということはラジアル組みのほうがスポークテンションが低くなるということであり、
フリー側をラジアル組みにすると 反フリー側のスポークテンションとの差が
相対的に縮まるということです。
というのが私なりの解釈ですが、マヴィックのカタログにはここまで書いていません。
で、これは大きな刺激になりました。
私の言う左右異本組みというのは ある意味「手組みにおける疑似イソパルス」です。
これが無ければ 例えば32Hの後輪なら 左右6本組みで組むことに何の疑問も感じず
一生6本組みでホイールを組み続けていたかもしれません。
イソパルスの意味するところはフリー側ラジアル組みだけでなく もう一つ、
反フリー側をほぼ接線方向で引くというのも含まれます。
ここでいう接線とはハブフランジに対しての接線で、
私が言うところのまぎらわしい最接線組みや真の最接線組みとは異なります。
なぜ私が反フリー側のスポークの伸長方向を、
「あるハブとリムとスポーク本数のときに
スポークがハブフランジの接線に最も近しくなるn本組み」にせず
「とにかく可能な限りnが大きくなるn本組み」にするのかは
ここには書けません。
仮にキシリウムの後輪が24Hであったなら
イソパルス的解釈ではゼロヨン組みになります。
が、私の左右異本組みではゼロロク組みになります。
マヴィックが間違っているというのではありません。
メリットデメリットを取捨選択すると私なりの解はそうなるということです。
マヴィックがイソパルスを詳述しないように
私も左右異本組みを詳述しません(笑)。
コールの後輪のときに書きましたが、完組みといえど ほとんどの後輪は
「20Hか24Hのハブでヨンヨン組みかヨンゼロ組みしてるだけ」です。
それにメーカーのロゴ入りステッカーが張ってあるというだけです。
こういうホイールは面白くないですね。
WH-7700系やR-SYSのように、デメリットが明らかに見えているような
ホイールでも「普通じゃないこと」をしているホイールのほうが
見ていて面白いです。
で、そろそろ表題の回収に入ります。


↑ここにカンパニョーロの1998年から2007年までのカタログがあります。
ある時期から1997年まで カンパニョーロのカタログには
Tecnologia ed emozioneというキャッチコピーが
表紙に書いてあったのですが
1998年からはTechnology and emotionと英語に変わり
2002年からは なくなりました。
それはいいとして ゾンダの変遷だけを見ていくことにします。

まずは1998年。
シャマルが前後12Hというエアロホイールだったときに
それより下位グレードで前後16Hのエアロホイールとして出ていました。

次に1999年。
ブラックリムになりハブの仕様が変わりました。
CULTが出たのはずっと後ですが、
この年以降のホイールからCULT化が可能です。

仕様というか重量的にはゾンダのほうが軽いのですが、
カタログ順ではヴェントのほうが先になっています。

2000年は カタログ落ちしました。

2001年は ハイプロファイルのホイールはボーラとシャマルのみ、
ミディアムプロファイルのホイールはまだありません。
この頃までは完組みがスペシャルなものという位置付けだったので
練習用は手組み、スポーク数が少なかったり市販のリムではありえないリム高
(といっても40mmとか50mmとか)は完組み、という棲み分けがあったのです。

2002年からミディアムプロファイルのホイールが出てきました。
ゾンダはG3ホイールとして復活です。
この年くらいから完成車に組み込まれるような価格帯の
カンパニョーロホイールというのがそろってきています。

で、前輪もG3なんですね。
このときのミディアムのフラッグシップはエウラスですが、
エウラスはラジアル組みです。
前輪のG3組みは、はっきり言って単なるファッションです。
理屈を伴っていません。ペアスポークが目新しいから、ただそれだけのことです。
後輪と違いスポーク数が右2:左1とはいきませんから、
左右同数になるよう右2:左1の隣は 右1:左2の逆G3にしないといけません。
で、G3の束の総数が偶数でないと左右同じ本数にならないので
G3×7の21Hや G3×9の27Hにはできません。
この年のゾンダの前輪はG3×6の18H、シロッコがG3×8の24Hです。
~2003年はこの記事の主題なので後回し~

2004年は前輪のG3をやめてラジアル組みに変更になりました。
シロッコはあいかわらずG3の前輪です。
エウラス寄りのスペックになったということですね。

2005年は変更無しです。

2006年はフルクラムが本格デビューした年でもあるのですが、
ニップルを磁石で呼ぶ仕様に変更になり リムテープが要らなくなりました。
2:1のレーシング3か G3のゾンダか、という選択肢になっています。
この年からシマノフリーも選択可能になりました。
画像はシルバーバージョンですがブラックもあります。
2007年はゾンダに関しては同スペックなので割愛します。
シャマルウルトラゴールドが出た年です。

で、問題の2003年です。
この年だけゾンダG4という前輪があるんです。


G4組みは2003年のゾンダの前輪だけです。

どうなっているか分かりにくいので 同年のスペアパーツカタログより
組み方の図解を。
AスポークとBスポークがありますが Aが反ヌポークラジアル、
Bが自分から見てヌポークヤマアラシさん方向になっています。
図ではハブの左から見た図になっていますが(玉当たり調整ナットがあるので)、
自分から見て近い側が常にヤマアラシさん方向というのは
要はJIS組みになっているということです。
前輪をランダムにはめても性質の違いが出ないように表裏をなくす、
という配慮なのでしょうが 何となく気持ちが悪いです。

私は基本的に資料は自分で用意することにしているのですが
(メーカー・ショップ・個人など 他人様の画像を使わない)、
こればっかりは現物の画像がないので
ネットで見つけてきました。

ハブの穴は均等間隔ですが 反ヌポークラジアルと
ヌポークJISタンジェント側のみが混在しているのが分かるでしょうか。

↑バルブ穴は束の真ん中にあいています。

ゾンダG4の作り方
まず、ヌポークラジアルの前輪と JIS組みの前輪を用意します。
ともに20Hなので 足すと40Hの前輪ができあがります。
右辺のごちゃごちゃした物体がそれです。

両辺とも2で割ります。
これの右辺がゾンダG4です。
ちょっと戻って画像を見てもらうと
「40Hからスポークを間引いた20Hの前輪」なのが分かると思います。

ハブ穴の位相がずれているのが気持ち悪いので
間引いたスポークの穴を消した上で均等間隔にします。
というのがゾンダG4の構造なのですが、
ここから後付けでメリットを見出しましょうというのが お題です。
難しいですね。私もこれのメリットを説明できません。

G4の一束だけを描いてみました。
Aスポークだけのホイールであったなら
ロルフ的ペアスポークのホイールのようにも見えますが、
BスポークとしてJIS組みのヌポークが間に割って入っています。
AスポークとBスポークですが、スポークテンションは同じにはなりません。
同じにならないからイソパルスや左右異本組みが成立します。
片側のフランジで違う組み方を混ぜると スポークテンションの違いや
乗車時にかかるストレスの違いで、顕著にゆるむスポークが出てくることになるはずです。
このBスポークがせめてイタリアン組みのヌポークであったなら
回転方向に対して左右のABスポークの挙動は同じになると思うのですが、
ホイールに疎い人が前輪を適当にはめてもいいように表裏のない
BスポークJIS組み相当にしている事情も理解はできます。

コリマでヤマアラシさん方向のスポークだけのホイールがありますが、
スチールスポークで剛性担保は無理なのでカーボンスポークになっています。
これは見方によっては「イタリアン組みから 反ヤマアラシさん方向の
スポークを間引いた」形になっています。
理に走りすぎな感はありますが、面白いですね。

↑話をG4に戻します。
こちら側から見てハブの回転方向が時計回りになると
進行方向は右向きになりますが、
そこからハードブレーキングしたとすると
進行方向右側のフランジのBスポークはテンションが張る側になりますが
反対側はテンションが抜ける側になります。
これを前輪のローテーション無しで(いや、普通そんなことはしませんが)
継続使用すると左右のBスポークで首折れを起こす確率などが
変わってくると思います。
駆動輪ではないとはいえなんとなく嫌ですね。
この状態からリム穴も均等間隔にしてAスポークをラジアルではなく
Bスポークと拮抗するようにタンジェント組みすると
「普通のJIS組みの前輪」になりますが
JIS組みはヌポークの左右の挙動が違うのが嫌だ、
それなら逆イタリアン組みの方がまだましだ、
というのが私の個人的見解なのでこのゾンダG4は受け入れがたいものがあります。
でも欲しい。
何が言いたいかというと片側のフランジで違う組み方を混ぜるのはNGということです。
この記事のカテゴリの「ハブの片側で異本・異径組みをする話」のうち、
異本組みの実例の話でした。
つづく
category: ハブ片側で異本異径組みする話
よくとぶ かみひこうき 
2013/11/02 Sat. 03:13 [edit]
3~4回くらいの記事に分けて
「ハブの片側で異本・異径組みをする話」を書こうと思います。
いま そういうカテゴリタグを設けました。
話の前に、私の後付け結果論的なものの考え方について書きます。
仮に私が「よく飛ぶ紙飛行機」の折り方を考えるとします。
とにかく色々と胴体や翼の形状を変えてバンバン飛ばしてみることにします。
すると、「よく飛んだもの」「あまり飛ばなかったもの」
「すぐ墜ちたもの」など 色々な結果が得られます。
そこから何となく こういう形は飛ぶんだな、あるいは飛ばないんだな、という
経験的にどうも確からしい一連の傾向というものは分かってきます。
そこから よく飛ぶ紙飛行機の形状だけを抜き出して「なぜこいつは より飛ぶのか」という
理論的な根拠を後付けで探す、というのが 私のものの考え方です。
ホイールでいうならば「こう組めば良くなるはず」と思って
一発で回り道なく答えを出せればいいのですが、
それが私には出来ないから 無駄なものも含めて試行を重ねるしかないのです。
思考が完璧なら そもそも試行を重ねる必要はありません。
机上の計算だけで神様のごとく一発で最適解を出せるなら
理想的な紙飛行機の形状を ただ一つだけ求めることができるはずです。
手組みホイールの場合は、飛行機の形状のように
事実上無限の解があるというわけではありません。
左右同数フランジ穴のハブと
それと同じ穴数で均等間隔穴のリムを組むわけですが、
前輪はオチョコが無ければ左右同径スポーク同本組みになります。
後輪は20H・24H・28H・32H・36Hなどで
X本のスポークでY本組みするにあたって
「Y≦X/4」の範囲で かつ
「フリー側のY≦反フリー側のY」を満たすような
左右同本または異本組みをして
スポークの比重が「フリー側≧反フリー側」となるよう
左右同径または異径組みするというのが現実的にありうる組み方の「場合の数」です。
上の条件では除外されていて 私も意識的に避けている「反フリー側ラジアル組み」と
掟破りの「真の最接線組み」を加えても、数十種類もありません。
このくらいの場合の数なら全て試すことも可能です。
実際 そのほぼ全てを組んだ私なりの経験則の一部が普段ここに書いていることです。
なるべく主観を排除して採るよう努めた数値を根拠に、
なぜその数値が出たのか後から理由を考えているので
「そういう現象は事実としてあるけれども、
それについてこじつけた理論らしきものは間違っている」ということはありえます。
あるスポーク数のホイールでヨンヨン組みよりもヨンロク組みのほうが
左右バランスが良い という現象が事実であったとしても、
なぜそうなるかという私の理論が正しいとは限らないということです。
手組みホイールの組み方の「場合の数」の十分な試行というのは
のむラボのオープンまでに済ませています、
なので お客さんを実験台にはしていません!と言いたいところですが
28Hのヨンパチ組みだけは 割りと最近の思いつきなので
まだ十分なデータがありません。
過去これくらいでしょうか、理が先行した結果の組み方は。
あとは紙飛行機の山から生まれた経験則です。
完組みホイールメーカーなら
ペアスポークとか 超ハイローフランジとか 左右異数スポークとか
特殊材質スポークとか リム直下の第3フランジとか
設計からやりたい放題なので出来るものも違ってきます。
いつも書いていることですが完組みのこういうところには手組みでは勝てません。
それを認めるところがスタート地点です。
「俺の組む手組みは××(←完組みホイールの名前)より走る」とか
言ってるうちはそのスタートにすら立っていません。
私がそういうことをあまり明言しないのはそう考えているからです。
お客さんからは「のむラボホイール○号は××に匹敵する」とか
「××と比べて 具体的に こういう感じ」という感想をいただくことはありますが、
ここには書きません。恥ずかしいので。
でも たいへん参考になっております。
全然「ハブの片側で異本・異径組みをする話」をしていませんね。
それは次回から書きます。
「ハブの片側で異本・異径組みをする話」を書こうと思います。
いま そういうカテゴリタグを設けました。
話の前に、私の後付け結果論的なものの考え方について書きます。
仮に私が「よく飛ぶ紙飛行機」の折り方を考えるとします。
とにかく色々と胴体や翼の形状を変えてバンバン飛ばしてみることにします。
すると、「よく飛んだもの」「あまり飛ばなかったもの」
「すぐ墜ちたもの」など 色々な結果が得られます。
そこから何となく こういう形は飛ぶんだな、あるいは飛ばないんだな、という
経験的にどうも確からしい一連の傾向というものは分かってきます。
そこから よく飛ぶ紙飛行機の形状だけを抜き出して「なぜこいつは より飛ぶのか」という
理論的な根拠を後付けで探す、というのが 私のものの考え方です。
ホイールでいうならば「こう組めば良くなるはず」と思って
一発で回り道なく答えを出せればいいのですが、
それが私には出来ないから 無駄なものも含めて試行を重ねるしかないのです。
思考が完璧なら そもそも試行を重ねる必要はありません。
机上の計算だけで神様のごとく一発で最適解を出せるなら
理想的な紙飛行機の形状を ただ一つだけ求めることができるはずです。
手組みホイールの場合は、飛行機の形状のように
事実上無限の解があるというわけではありません。
左右同数フランジ穴のハブと
それと同じ穴数で均等間隔穴のリムを組むわけですが、
前輪はオチョコが無ければ左右同径スポーク同本組みになります。
後輪は20H・24H・28H・32H・36Hなどで
X本のスポークでY本組みするにあたって
「Y≦X/4」の範囲で かつ
「フリー側のY≦反フリー側のY」を満たすような
左右同本または異本組みをして
スポークの比重が「フリー側≧反フリー側」となるよう
左右同径または異径組みするというのが現実的にありうる組み方の「場合の数」です。
上の条件では除外されていて 私も意識的に避けている「反フリー側ラジアル組み」と
掟破りの「真の最接線組み」を加えても、数十種類もありません。
このくらいの場合の数なら全て試すことも可能です。
実際 そのほぼ全てを組んだ私なりの経験則の一部が普段ここに書いていることです。
なるべく主観を排除して採るよう努めた数値を根拠に、
なぜその数値が出たのか後から理由を考えているので
「そういう現象は事実としてあるけれども、
それについてこじつけた理論らしきものは間違っている」ということはありえます。
あるスポーク数のホイールでヨンヨン組みよりもヨンロク組みのほうが
左右バランスが良い という現象が事実であったとしても、
なぜそうなるかという私の理論が正しいとは限らないということです。
手組みホイールの組み方の「場合の数」の十分な試行というのは
のむラボのオープンまでに済ませています、
なので お客さんを実験台にはしていません!と言いたいところですが
28Hのヨンパチ組みだけは 割りと最近の思いつきなので
まだ十分なデータがありません。
過去これくらいでしょうか、理が先行した結果の組み方は。
あとは紙飛行機の山から生まれた経験則です。
完組みホイールメーカーなら
ペアスポークとか 超ハイローフランジとか 左右異数スポークとか
特殊材質スポークとか リム直下の第3フランジとか
設計からやりたい放題なので出来るものも違ってきます。
いつも書いていることですが完組みのこういうところには手組みでは勝てません。
それを認めるところがスタート地点です。
「俺の組む手組みは××(←完組みホイールの名前)より走る」とか
言ってるうちはそのスタートにすら立っていません。
私がそういうことをあまり明言しないのはそう考えているからです。
お客さんからは「のむラボホイール○号は××に匹敵する」とか
「××と比べて 具体的に こういう感じ」という感想をいただくことはありますが、
ここには書きません。恥ずかしいので。
でも たいへん参考になっております。
全然「ハブの片側で異本・異径組みをする話」をしていませんね。
それは次回から書きます。
category: ハブ片側で異本異径組みする話
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