のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

センター出しをする意味について  

ホイールのセンター出しについて
「どこかのブログに高圧充填して実走するとセンターずれは解消する。
ノンストレスでセンター出しは神経質になんなくても良いよ、的な見解が有ります。
どう思われますか?特にカーボンホイールは顕著とかないでしょうか?」
というコメントをいただきました。

これについてお答えします。
まず「高圧充填して実走するとセンターずれは解消する」というくだりですが、
ざっくりし過ぎていて ホイールのことを何も分かっていないのが明白です。
空気圧で リムがずれるのは(ついでに書くと経年使用で リムがずれるのも)
必ずフリー側に向かってです。しかも ごく微量です。
かすかに反フリー側にずれている状態で ある空気圧まで加圧すれば
ちょうどセンターが出る、という可能性はありますが
フリー側にずれている後輪で センターが出ることはありません。

そのブログとやらも その文意も知りませんが、少なくともこの表現だと
「加圧によるずれは 必ずセンターに向かって誘導される」ということになります。
そんなわけはありません。
また、加圧によるずれは 加圧の時点で完了すると思いますが
上の表現では「さらに実走を要する」ということになっています。
これも意味不明です。

あと、加圧によるずれの量はチューブラーと チューブドWOと
チューブレスではそれぞれ異なり、リムによっても変わります。
さらに、1気圧当たりでリムがずれる量というのも一定ではありません。
例として 具体的なことを書くと
WH-6800の後輪で23Cチューブレスの場合、
6~7気圧ではセンターずれは ほとんど発生しません。
8気圧くらいから観測可能なずれが発生します。

以前にもどこかで書きましたが、
イーストンのEA90RTとチューブレスタイヤの組み合わせで
お客さんが分かる量のセンターずれが発生するということがあり、
お客さんの希望で 使用時の空気圧に加圧した状態で
センターを出すという作業をしたこともありました。

マヴィックの後輪は ほとんどの場合
リムが反フリー側にずれていますが(→こちら)、
これについて「加圧時にセンターが出るように わざとしているのでは?」と
考えたこともあります。
しかし、その ずれの量は一定ではないですし センターが出ていることもありますし、
なにより ずれている必要がまったく無いリムブレーキの前輪がしばしば ずれている
ことから、単に まともなホイールを組む能力が無いだけだという結論に至りました。

DSC04700msn2.jpg
↑USTチューブレスタイヤの指定限界を超えて
10気圧以上に加圧しても、さすがに このすき間は埋まりません。
これについて「神経質にならなくていい」と言えるのであれば
私は そいつの神経を疑います。

では 経年使用や加圧によるずれを見越して
あえて反フリー側にリムをかすかにずらせばいいのでは?と言われそうですが
乗り手の仕様時の空気圧に応じて リムのずれにくさも勘案して
その量を絶妙に調整する、というのは不可能なので
私は 加圧無しでのセンタードンピシャを基本としています。
経年使用に関しては それを調べるために
私物の後輪を紙1枚程度 反フリー側にずらしていたことはありました。
あと先ほど書いたように お客さんの希望で実際にそれをやった例もあります。

加圧無しでドンピシャ状態、からの加圧でずれる量は
「神経質にならなくてもいい」と言っていいと思いますが
コメントにある「神経質にならなくてもいい」は
センター出しすらできない奴のタワゴトです。

じゃあ例えば 吊るしの状態で加圧無しセンタードンピシャの後輪
(レーシングゼロなどは だいたいそんな感じ)だったら
加圧によって フリー側にずれるのは気にしないのか、
という話になりますが・・・
ああ、こいつの見解では
「加圧と実走によってセンターずれは解消する」という表現なので
加圧無しセンタードンピシャの後輪は 加圧でずれることは無いんだったな。
後輪が 事情を汲んで ずれるべき左右を判断し 都合よくセンタリングするらしい。

上の画像では リムが反フリー側(左側)にずれているわけですが、
通常 シュータッチが起こるのは左側に限られます
(右側もシュータッチするほどスポークテンションを抜くと
正常に乗れる後輪として成立しません)。
同じことを先日書いたところですが、ワイドリム且つ
調整幅が少ないダイレクトマウントブレーキだと
まともなセッティングそのものができない場合があります。

DSC09432amx5.jpg
↑これは吊るしのゾンダWH-7801Cの後輪ですが、
この状態を見せられたうえで
「これくらいのずれなら神経質にならなくてもいいっすよ」と言われたり
「加圧と実走でセンターずれは解消するので大丈夫です」と言われたりして
そのままで突っ返されても 納得する、というのであれば
残念ながら私の出番はありません。どーぞどーぞ そのまま使ってください。

追記:上の画像、ゾンダじゃなくてエボライトハブに見えます、
というコメントをいただきました。
すみません、ゾンダではありません間違っておりました。
ゾンダと7801を併記した記事があったので勘違いしておりました。
ご指摘ありがとうございます。
画像の引用元は(→こちら)です。


あと カーボンホイールの場合は加圧の影響が顕著になりますか?
とのことですがコスミック プロ カーボン SLの場合は
タイヤとニップルが離れている(=リム高が高い)ので 影響が少ない条件だと思います。
マヴィックに限らず、カーボンチューブレスリムだと
8気圧以上入れることは まず無いと思うので
センターずれが顕著に出ることは無さそうというのもあります。

リム高が低くて 軽いリムで チューブレスタイヤ、などの条件が揃うと
実使用上で観測可能なずれが出るかもしれませんが、
加圧無しでセンタードンピシャからであれば 気にすることはありません。
つまり、初期状態が センタードンピシャかどうか
気にする必要はあるということです。
どーしても気になるのであれば
あるタイヤのある気圧のときにドンピシャになるよう 個別対応はします。

センター出しで それより重要なのは、
とんでもなくずれている後輪を排除することにあります。
あと、オチョコの無い前輪は 加圧や経年使用で ずれませんので
センター出しをキッチリすることに 何の異論もないはずです。

初期状態について言及せずに「加圧して実走すればセンターずれが解消する」と
断言しているのは明らかにおかしいですし、
こういうことを言っている奴は いま挙げた個別対応をするだけの
技術も無いでしょうから、聞くだに値しません。というのが私の見解です。
冒頭の文中の言葉を借りれば
「ノンストレスでのセンター出しに神経質になるからこそ、
そこからの加圧については神経質にならなくて済む」のではないでしょうか。
「ノンストレスでセンター出しは神経質になんなくても良いよ」なんて
とんでもない話です。
コメントありがとうございました。

category: ホイールの話

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経年使用によるセンターずれと ニップル1回転当たりのリムの横移動量について  

組んだときに間違いなく センタードンピシャであったはずの後輪が、
1年間とか数千kmくらい使ったあとで点検すると
ほんのうっすら リムがフリー側に寄っている、という現象が起きることは
経験的に分かっていました。
スポークのねじ山からニップルがゆるんだ、
というのは もちろん除外しての話です。

経年使用でずれるのは、厳密には「後輪」ではなく
「オチョコがあるホイール」です。
なので、両切りのピストの後輪は ずれず、
ディスクブレーキ仕様の前輪は ずれるということになります。

といってもディスクの前輪では、オチョコ量が少ないためか
実際に 明らかなずれを観測したことはありません。

もし両切りピストの後輪で 片側のギヤのみを使い続けたときに
センターずれが出るようであれば、
ドライブトレインの動作によるストレスも原因だということになりますが、
これも経験上 有意な観測結果はありません。

DSC007495amx8.jpg
↑これは、私が組んだR450リムの後輪を
オープンプロに組み直した件のときに、
後輪をバラすついでに ある実験をしたものです。
画像のデータによれば撮影日は2016年2月13日で、
約2年前ですが そのときからこの記事を書こうと思っていたのです。
ちなみに この件です(→こちら)。
のむラボホイール5号の32Hリムが当時 欠品していたので、
オープンプロの32Hで組み換えています。

実験というのは、
センタードンピシャ横振れ無しの状態で
フリー側のセンターゲージの位置を採り、
それから左右のニップルを きっかり1周ゆるめて
再びフリー側にセンターゲージを当てると
どうなるのか?というものです。

DSC007496amx8.jpg
こうなりました。
フリー側で当てたのは、実験の結果を知っていたからです
(ハブ側のすき間を撮りたいので)。
ニップルをきっかり1周ゆるめた、といっても
厳密に狂いなく360°ずつでは無いでしょう。
358.2°のところもあれば360.9°のところもあるかもしれません。
が、ほぼ360°になるよう かなり気を遣って回しました。
実は、横振れさえなければ 少々センターがずれていてもいいですし
リムがオフセットリムでも構わないのですが(R450は違う)、
一応 非オフセットリムのセンタードンピシャ状態で始めました。

DSC03051amx8.jpg
↑こういうことです。
ここで確かなことは、オチョコがあるホイールの場合
ニップル1周あたりのリムの横移動量が左右で違う
ということです。
条件により異なりますが、経験上
フリー側1周と 反フリー側3/4周が同じくらいになります。
「条件」については あとで書きます。
このことは ホイール組みをするうえでも知っておくと便利です。

で、思ったのですが、
経年使用(あるいは年単位で放置)したホイールは
スポークテンションが低下しますが
(先ほども書きましたが ニップルのねじ山ゆるみは除外します)、
これはスポークに伸びが発生しているためです。
伸びが発生しているということは、かすかながら
スポークの長さが長くなっているということになります。

DSC03053amx8.jpg
なので、多少乱暴に言えば
経年使用のスポークの伸びと 意図的にゆるめたスポーク長さの伸びは
リムの横移動量に及ぼす影響が同じということになります。
これが「経年使用でフリー側にリムがずれる理由」です。

DSC03054amx8.jpg
リムがセンターですら ありませんが、
かなり極端な状態として上の図のようなホイールを描いてみました。
ここから、同じ量だけ(例えば1mm)スポークが伸びるか
ニップルをゆるめるかすると
DSC03055amx8.jpg
リムはフリー側に寄るはずです。
同じ1mmが横に向かって使われる割合が
左右で異なるためです。

DSC03056amx8.jpg
「同じ1mm」という前提ですが、
これはスポークの伸びの場合では正確ではありません。
ニップルをきっかり1周ゆるめた場合は「同じ長さ」だけ
スポークが伸びることになりますが、
オチョコがある後輪は 左右でスポークの長さが異なるので、
スポークの伸びは「長さに対する割合」で伸びると思うのです。
例えば シマノハブとオープンプロリムで32Hの反フリー側が
6本組みだとするとスポーク長さは295mmとなり、
ラジアル組みだと281mmになります。
ここからスポークが0.1%伸びるとすると 6本組みが0.295mm、
ラジアル組みが0.281mm伸びることになりますが、
経験上間違いないこととして
「ラジアル組みのほうが リムのずれが起きるスピードが早い」というのがあります。
ラジアル組みのスポークのほうが リムの伸びに対する角度の損失が無いので、
要素の大小で言うと スポーク長さに対する割合よりは
角度のほうが大要素ということになります。
これは 先ほどのニップル1周ぶんの横移動量の条件のひとつでもあって、
反フリー側ラジアル組みは フリー側のニップルの回転量に比べて
非常に少ない量で横移動量が釣り合います。
フリー側1周に対して 反フリー側2/3周か、半分ちょっとくらいでしょうか。
ハブの寸法的条件でも変わりますが。

DSC03057amx8.jpg
私の想像では こうです。
ここでは左右に厚みのあるホイールではなく平面的な図として見てください。
ラジアル組みのスポークはスポークの軌道そのもの、
タンジェント組みのスポークは最終交差を通るラジアル線(上の図青い線)で
1mmぶんだけリムを押し出すのに必要な長さは、
タンジェント組みのほうが大きくなります。

「ハブとリムの関係はスポークの「引っぱり」だから押し出すという表現はおかしい」
というツッコミをいただきそうですが、すでにテンションによって
内周側に引っぱられたリムが、テンションが和らいで外周側に移動するのを
見かけ上「押し出す」と書いたまでです。

あとこれは 私の気のせいかも知れませんが、
2:1組みの反フリー側のスポークが伸びるのは
左右同数スポークよりも早い気がします。

その原因として「左右異数組みは左右同数組みと比べて
反フリー側のテンションが高いので より伸びやすい」というのは誤りです。
もし そういうことであれば 普通のホイール、
つまり左右同数組みの後輪の場合は
「フリー側のほうが高テンションなので フリー側のスポークが伸びやすい、
よって経年使用ではリムは反フリー側にずれる」ということになります。
が、実際は そうはならないので
経年使用におけるリムのずれに関して スポークテンションは
オチョコによるスポーク角度の差より 小要素ということになります。
反フリー側ラジアル組みは ずれるのが早い、というのは経験上間違いないので
左右異数組みの反フリー側は基本的にラジアル組みになる以上
そういう感覚に陥るだけの事かも知れません。

で、ひとつ前の記事にあるように
4年間ノーメンテの のむラボホイール1号の後輪の点検をしたときに
リムがフリー側にずれていたと書きましたが、
お客さんには事前に
「おそらくは、フリー側で採った寸法を反フリー側で当てると リム側で空きます」
と言って フリー側にずれていることを言い当てました。

あるトライアスリートのお客さんのレーシングゼロの後輪で、
センタードンピシャにした1年後に点検すると
思っていた以上にずれていたということがありました。
ほぼ振れ無し、当店以外で触った履歴は 確実にありません。

私物の常用している後輪を 紙1枚ほど反フリー側に寄せて組み、
チューブラータイヤを交換するたびに
センターゲージを当てて調べていましたが、
1年半ほどでセンタードンピシャになったことがあります。

経年使用でセンターずれが起きることは間違いないのですが、
こういうことを書くと 微細なフリー側へのセンターずれ全てについて
「ああ、これ よく乗ったからですよ」などと言い出す
同業者が出てきそうなのが嫌です。ここを読むまで知らんかっただろ絶対。
実際は、短期間に大きなずれが発生するわけではありません。
私が フリー側への微細なセンターずれには寛容で(あくまで微細な場合)、
反フリー側へのセンターずれには「これは元からずれてるわ」と
断言するのは こういうわけです。

それなりの数の カンパニョーロ/フルクラムの後輪を
点検していれば分かることですが、
リムがずれている場合は ほとんどがフリー側に寄っています。
新品に限ってもそうです。
これは、組んでから売れるまでの 数ヵ月~2年くらいの間に
スポークが伸びてずれた、という現象が起きているような気がします。
とくに アルミスポークのモデルでは。
後輪で散見されるセンターずれの量を
前輪ではほとんど見かけない、というのも そう思う理由です。
前後輪ともメーカーの検品の段階では
センタードンピシャだったのではないかと。


例外的に、ほとんどの場合反フリー側に(しかも思いっきり)
ずれている後輪があります。R-SYSです。
DSC03058amx8.jpg
R-SYS系の後輪ですが、
反フリー側のスポークのみカーボンで、カーボンは伸びません。
スポークの伸びでリムがずれる要素が フリー側のみなのです。

DSC03059amx8.jpg
マヴィックのアルミスポークもカーボンスポークも、
ねじ山の径が大きく ねじ止め剤が強いことから
経年使用でニップルがゆるんでくることは ほぼありません。
しかもカーボンスポークの場合
スポークヘッド、カーボンのスポーク部分、ニップルのねじ山部分が
ひとつのカタマリになっているので なおのこと自然に回ることがありません。

R-SYS系の後輪のセンターずれについては
反フリー側にずれていたのが
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)←この記事中に 今日の記事の伏線あり
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)、

フリー側にずれていたのが
(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)←R-SYS系としては珍しく リムがフリー側に寄っていますが、
という記述あり
です。
ざっと調べただけなので漏れが無いとは言い切れませんが
恣意的に抜き出したわけでもないので、これって「統計」と言っていいのでは・・・。
ていうか ずれてる場合のずれの量が えぐいですね。
あと もうひとつ重要なことを。
R-SYSはニップル1周あたりの
リム移動量の左右差が最も大きい後輪です。
フリー側1周の移動量が 反フリー側1/2周か、それ未満で釣り合います。
左右アルミスポークのキシリウムの場合、フリー側がラジアル組みですが
それでもニップル1周あたりのリムの移動量は反フリー側のほうが上です。
ラジアル組みかタンジェント組みかより オチョコのほうが大要素だからです。
R-SYSでは 反フリー側がラジアル組みなので
「スポークの角度が寝ているほう+ラジアル組み」という条件がそろい
キシリウムよりもニップル1周あたりの横移動量の左右差が大きくなっています。

つづいて、先日のレイノルズの後輪の増し締め(→こちら)について
記事中で補足できる量ではなくなったので
ここで しておきます。
DSC03060amx8.jpg
センターずれ無しの最初の状態のフリー側のH1ST(A)を、
お客さんに見せました。

そこから、張ってあるフリー側の増し締めが困難なので
反フリー側を3周ゆるめ、
フリー側を1周+1/2周+1/4周締めました。
このとき、微細な縦振れ取りもしていますが
テンションの多寡には ほぼ関係ありません。
この時点の、リムが最もフリー側にずれきった状態の
フリー側のH1ST(B)をお客さんに見せました。
反フリー側がゆるいのにAとBが ほぼ同じくらい(Bがやや高い)です。
これ以降、微細な横振れ取り以外では フリー側を触りません。

そこから、反フリー側を再び3周 締めました。
フリー側を1と3/4周増し締めているので
リムはセンターにまで戻りません。

そこからさらに、リムがセンターになるまで
反フリー側を一方的に増し締めできるわけですが
この増し締めボーナスぶんの
上の図プラスアルファのニップルの回転量は、
フリー側の増し締め量の1と3/4周より少なくなるはずです。
実際にそうなりました。
最終的にセンターが出た状態でのフリー側のH1ST(C)が、
数値のバラつきの下限が H1ST(A)の上限と同じか
やや上になったのを お客さんに見てもらっています。

追記:さらに別件ですが、かなり前にいただいたコメントで
「後輪を組むときに、左右同量ニップルを回しているのに
センターがずれます」という内容のものがありましたが、
それは左右同量で回しているからです。

category: ホイールの話

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FH-M755ハブで のむラボホイール1号を組みました  

今日もホイー(以下略)。
DSC02799amx8.jpg
理由あって 組み換え前のリムは撮れませんが、
お客さんから XTの初代ディスクブレーキハブで組まれた
後輪をお預かりしました。

DSC02800amx8.jpg
リヤハブはFH-M755で、
XTRがM950系のときの M750系XTです。
M950系XTRにはディスクブレーキの仕様がありません。
「純XC用途だとVブレーキで十分、ディスクブレーキはDH系のパーツだから」
と思っていたのか、あるいは
「XTRでディスクブレーキ出して しくじったら怖いから まずはXTで出すぞ」
と思っていたのかは知りませんが、とにかく755系ディスクは
XTだけでなく シマノ初のディスクブレーキです。
ローターの固定方式も センターロックではありません。

DSC02826amx8.jpg
今回の件には関係ないのですが、
まさに今しか書く機会が無さそうなので脱線します。
Vブレーキというのは「ロングアームカンチブレーキ」の
シマノ製品での呼称です。本来は一般名詞ではありません。
「(シマノ以外のブランド名)のVブレーキ」というのは
正確な表現ではないということです。

それを承知で今後も Vブレーキと書きますが、
一般的なVブレーキ(シマノ製品以外も含む)のアームは
メトロノームの振り子の棒のような軌道で動作します。
が、シマノの上位モデルのVブレーキには
「パラレルリンク」という機構が採用されており、
シューの部分の動作が ほぼ水平になります。
それによって シューの斜め摩耗を防ぐことができ、
斜め摩耗したシューが ズズッとリムに沈み込むようになる
「ダイブイン」を防ぐことができるというわけですが、
パラレルリンクを採用すると 当然 重量は重たくなります。
上の画像のXTRは BR-M951で、BR-M950の改良版です。
BR-M950はパラレルリンクのプレートに肉抜きが施してあり、
シュータッチ以降のブレーキレバーの握り込みで
パラレルリンクがたわむという欠点がありましたが、
BR-M951では多少マシになりました。
M950系XTRの時点でパラレルリンクを採用していたのは
XTのBR-M750と LXのBR-M570でしたが、
ブレーキの制動力の順でいうと アームがごついLXが明らかに最強、
次いでXT、その次にXTRと グレードと逆順になっていました。
ブレーキ前後セットでの公称重量は
XTR BR-M950が395g、M951が394g、
XT BR-750が455g、
LX BR-M570gが542g、
デオーレ BR-M510が420gで、
デオーレが軽いのはパラレルリンク式ではないためです。

シマノが XTRでディスクブレーキを採用したのはM960系からですが、
当時「新XTRでは、Vブレーキとディスクブレーキの重量差は ほぼありません!」
と喧伝していました。といっても Vブレーキのほうが数十グラムは軽かったはずですが。
ここで問題なのは、M960系VブレーキのBR-M960は
M950系よりアームが はるかに ごつくなり
公称重量でも484gもあったということです。
Vブレーキを約100g重たくしておいてディスクブレーキとの重量差を
小さく見せるなんて せこいマッチポンプだ、
BR-M95Xからだと百数十グラムの重量増じゃねーか、
と当時 思ったものです。
当時の時点でもVブレーキよりディスクブレーキのほうが
制動力が上だったことは 確かではありますが。

DSC02801amx8.jpg
話を戻します。
組み換え前の後輪ですが、
24Hリムと36Hハブで、ハブ穴とばしをして組んでありました。
スポークの向きがねじれないハブ穴とばしなので このこと自体は問題ありません。
組み方は逆イタリアン組みで、
ハブ穴の数えはロクロク組みとなりますが スポークの重なりは2クロスなので
24Hハブでの「ほぼ」ヨンヨン組みに相当します。
同じハブとリムだと YHのX本組みで Y/Xが同じならスポークの軌道は全く同じ、
長さも角度も全く同じというのを 以前に書きました。
36Hの6本組み(36/6)と 24Hの4本組み(24/4)の
スポークの軌道は同じというわけです。
ということは この最終交差を見ると36/6となるので
(存在はしませんが)FH-M775の24Hハブで 4本組みしたのと
スポークの軌道が全く同じ・・・にはなりません。
この36Hハブ穴を24Hと見立てるとハブ穴の間隔に
疎密があることになるので、それが原因で全く同じにはなりません。
が、「ほぼ」同じといっても いいです。

組み換え後は表題にもあるとおり
のむラボホイール1号のリムになりますが、
XR300リムは32Hまでしかありません(オーダーすれば別ですが)。
というわけで、24Hリムで組み換えをすることにしたので
DSC02820amx8.jpg
36Hハブと24Hリムでホイールを組む場合の展開図を
ハブ~リム~ハブ型で描いてみました。

今回の件に関係ないですが、
32Hハブと24Hリムでホイールを組む場合も描いています。
その場合、2:1組みになります。

スポークの軌道がおかしくならないように組もうと思えば、
ラジアル組みの場合は
スポークの線が横線に対して垂直である必要があり、
タンジェント組みの場合は
スポークの線が傾いていても 同じ角度で反復していれば
タンジェント組みさえすれば最終交差の向きの合成が
ラジアル線に乗るのでOKです。

どういうことかというと
DSC02821amx8.jpg
異なる穴数のハブとリムで0本組みするとき、
展開図のスポークの線が横線に対して垂直であれば
スポークの軌道がラジアル線上になり
「ラジアル組み」になります。
これが垂直でない場合、0本組みのスポークの軌道は
ねじれたようになり 厳密な意味でのラジアル組みにはなりません。

DSC02822amx8.jpg
リム穴とハブ穴を結んだスポーク線が
ラジアル線からそれた角度であったとしても、
垂直線からプラスマイナス同じ角度だけ違っているのが
反復している場合、

DSC02823amx8.jpg
タンジェント組みに変換できます(18Hの片側9Hなどは 奇数なので無理)。
この最終交差の合成はラジアル線なので
スポークの軌道がおかしくないホイールが組めます。
先ほどの図、32Hハブ24Hリムの2:1組みのフリー側が これに相当します。
XI組みで描いていますが Ж組みでスポークの線を引いてもいいです。
実際 組む場合はバルブ穴の位相がおかしくならないように
気を付ける必要がありますが。

DSC02824amx8.jpg
少し前に 触ることすらお断りした件として、
32Hのダイナモハブと コスミックカーボンの20Hリムで
無理組みしていた前輪というのがありました。

コスミックカーボンの20Hリムは リヤリムなので
リム横に空いている穴の高さが左右で違っていて、
それで前輪を組むこと自体も 気持ちが悪いのですが
それは別として0本組みをタンジェント組み3ペアぶん描いてみました。

DSC02825amx8.jpg
それをタンジェント組みに変換するとこうなります。
この状態から中央のリムの線を左右に動かしても
全てのタンジェント組み最終交差の合成を
ラジアル線に乗せることはできません。
つまり、20Hリムと32Hハブでは
スポークの引っ張り方向がねじれていないホイールを組むのは
無理ということになります。

この前輪、テンションが異常にヌルいうえに ばらつきもあり
(ヌルいスポークと 超ヌルいスポークが混在)、
点検をお願いされましたが これはホイールじゃないと言ってお断りしました。
最悪 怪我しますよとも言ったのですが 今でも使ってるんだろうなあ。

DSC02802amx8.jpg
組み換え前のスポークは星の黒スターブライトで、
DSC02803amx8.jpg
磁石に くっつく個体でした。
DSC02804amx8.jpg
ちょっと感動したので
スポークの黒塗装が安っぽいぞとか書くのをためらいましたが
結局 書きました。

DSC02805amx8.jpg
DSC02806amx8.jpg
ハブはオーバーホールします。

DSC02808amx8.jpg
DSC02809amx8.jpg
↑フリー側
DSC02811amx8.jpg
DSC02810amx8.jpg
↑反フリー側
とくに傷みはありませんでした。

DSC02812amx8.jpg
組めました。
ホイール組みより記事を書くほうが 数倍の時間を要しています。

DSC02813amx8.jpg
DSC02814amx8.jpg
JIS組みにしました。
フランジ穴のとばしを無視した 穴の読みでは
フリー側が6本組み 反フリー側が8本組みなのでロクヨン組みですが、
実際はフリー側が2クロス 反フリー側が3クロスなので
「だいたいヨンロク組み」ということにしておきます。
左右異本組みを盛り込んだというのが大事な点です。
スポークはフリー側が 黒リーダー 反フリー側が黒コンペで
チャンピ/コンペに相当します。
黒スポークの場合14番プレーンの用意が
サピムのリーダーになるからです。

あと、反フリー側の結線もしています。

DSC02815amx8.jpg
スプロケットの錆び落としと洗浄、ハブ体の洗浄、
ディスクローターのパッドが接触しない部分の錆び落としもしています。

category: ホイールの話

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5800のリヤハブのオーバーホールをしました  

わざわざ記事にするほどの内容は無いのですが、
お客さんの前で作業したわけではないので
作業前後の状態を撮ってあるものを 後日上げておきますと約束したので
記事にしました。
DSC02200amx8.jpg
これはシクロクロス用ということで かつて私が組んだ後輪ですが、
ハブはFH-5800です。
スチール製のフリーボディの外側に 錆びが浮いています。

私は やりませんが、スチール製のスプラインの場合
うっすらとグリスを塗っておくことで 錆びの進行を防ぐことが出来ます。

DSC02201amx8.jpg
ハブの回転に濁りは無いものの、グリスが切れている感触があり
それとは別にホイールを振るとシャンシャンと音がします。

DSC02204amx8.jpg
鋼球に傷はありませんでした。

DSC02202amx8.jpg
DSC02203amx8.jpg
スプロケットの汚れがヤバかったです。
チェーンに押された油泥団子が 歯の間に詰まっていました。

DSC02208amx8.jpg
フリーボディを外しました。

DSC02207amx8.jpg
フリーボディ内側に付いているラバーシールを めくり取りました。

DSC02205amx8.jpg
小さい鋼球がバラ玉で並んでいますが、
もう一玉 入りそうで入らないすき間が一箇所あり(画像の部分)、
ここのグリスが切れるとリヤハブ(または後輪)を振ると
シャンシャンと音がするようになります。これは異常や瑕疵ではありません。
歴史的に見れば この手のシマノ式フリーボディは
「ボスフリーギヤのギヤ無し状態」であり、
そこに歯の部分のみのパーツである
カセットスプロケットを取り付けることになりますが、
ボスフリーと同様 適度な固さのオイルを差してやることで
音や錆びを抑えることは可能です。

シマノからフリーハブグリスというのが出ていますが、
あれは シマノ式フリーボディに差すものではなく
爪がラチェットの山に対して起きる ラチェット&ポール式のリヤハブに使うもので、
7800系デュラエースと M800系セイントのリヤハブが それに相当します。
最近いただいたコメントにありましたが
WH-6600(完組みホイール)のリヤハブ部分も、7800と同じ形式です。
が、FH-6600(コンポーネントのリヤハブ)は
シマノ式フリーボディになっています。
セイントの現行グレードのM820系も シマノ式フリーボディになっているので
現状 フリーハブグリスの出番は ほぼ無くなっていますが、
DTがスターラチェット用にピンク色のペースト状の専用グリスを出しているように
ハブメーカーがラチェット&ポール用のグリスを出している・・・という例は
ほとんど無い(※)ので、シマノのフリーハブグリスを
シマノハブ以外で使ってみるのもいいかもしれません。

※マヴィックのフリーボディ専用オイルくらい

シマノのフリーハブグリスは、液体ヘリウムの超流動とは理屈が違いますが
フタのねじ山のすき間が大きいと思われる 旧型のグリス容器の場合
グリスが表面を伝って容器の外側を薄く覆う性質がありましたが、
現行の容器では ましになったようです。

DSC02209amx8.jpg
↑フリー側のワンです。ボールレースに傷はありません。
ワンに2ヵ所ある切り欠きは
メーカー内でのフリーボディの組み立てに必要なものだと思われますが、
ここからフリーボディを空転させると
切り欠きの部分までは回らずに その外側だけが回ります。
その間のすきまは 先ほどの小さい鋼球のバラ玉並びのほうに繋がっているので、
フリーボディを外さずに注油する場合は こちら側のすきまからオイルを差します。

DSC02210amx8.jpg
反フリー側のワンです。こちらにも傷はありません。

DSC02211amx8.jpg
洗浄してグリスアップして組み立てました。

DSC02212amx8.jpg
DSC02213amx8.jpg
スプロケットも洗浄しました。


おまけ
DSC02236amx8.jpg
これは また別件でのシマノ式フリーボディですが、
XTの完組みホイールに付いていたものです。
走行中に突然 固定ギヤの様になったので
帰ってからスプロケットを外したところ
スプラインが ばくはつしていたそうですが、
シマノに言っても交換してもらえなかったので
お客さん負担で修理したときの外し品です。

DSC02237amx8.jpg
ここが
DSC02238amx8.jpg
取れます。
クラックで広がったすき間に鋼球が詰まり 固定ギヤ状態になったようです。

DSC02239amx8.jpg
DSC02240amx8.jpg
ここにポール(爪)が内蔵されていました。
噛んでいた鋼球を除いたので 押すとパチパチ動きます。

DSC02241amx8.jpg
フリーボディ内側から。ポールが噛むラチェットの山です。

以上、記事としてのバリューが薄いところに
前々から書こうと思っていた話をぶち込んで
無理やり記事にしてみました。

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コスミックカーボンアルチメイトのニップルをアルミにできませんでした  

私物のコスミックカーボンアルチメイトの後輪の
反フリー側のニップルを しんちゅうからアルミにしようと思ったのですが、
DSC02199amx8.jpg
無理でした。
元祖コスミックカーボン系のスチールスポークは
プレーン部分が 13番なのですが、
このカーボンスポークの先に埋め込まれている
スチールスポークのねじ山も 13番だったのです。
うーん、やるやんけ。
ちなみに、アルミニップル化したかった理由は
軽量化ではなく「青くしたかっただけ」という
しょーもない理由です。

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