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のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

コメントのお返事(手組みホイールに吹く逆風の話)  

コメントをいただきました。
要約すると
「右フランジ幅が18.5mmのハブと20.55mmのハブ、
それぞれでホイールを組んだところ この約2mmの差が
スポークテンションの左右差に影響大だと気づきました。」
という内容です。

ええ、そうなんです。
この2つの条件でホイールをそれぞれ組むと歴然と分かることです。
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私なりの目安ですが、
右フランジ幅(ハブ中央から右フランジ外側までの寸法)が20mmを切ると
オチョコによって反フリー側のスポークテンションが上げにくくなります。
これが20mmプラスマイナス1mmの
19mmと21mmで比べても顕著に分かります。
19mmのハブは「反フリー側がまだダルダルなのに
フリー側がすでにこんなに張ってるのか!」となります。

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シマノの11S対応ハブは右フランジ幅を
約2mm詰めることで対応していることが多いです。
この2mm、フランジ幅が2mm狭くなることによる横剛性の損失もありますが、
それはホイール組みの段階では体感しづらいことです。
しかし、この2mmで右側のスポークの角度が立って
スポークテンションの左右差が大きくなったというのは
ホイールを組んでいて すぐに体感できます。

完組みホイールであれば 極端なハブ寸法なりスポークアレンジメントなりで
オチョコの損失を取り戻し得ますが、
手組みのハブの場合、従来(10Sハブ)の条件から右フランジを2mm
詰められただけ、という格好になるので
シマノ11S化対応によるホイール組みの理屈上の損失は
手組みホイールのほうがずっと大きい
ということになります。
これが表題にある逆風ということなのですが、
そんな時代に「手組みホイールもいいですよ」とあえて言う以上は
普通に組んでいては完組みホイールに置いていかれるので、
最大限の工夫を以って当たるべきです。
その工夫というのが当ブログでいつも触れているあれやこれですね。

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オチョコは絶大な要素という話をします。
オーバーロックナット寸法(以下OLD)が126mmのハブがあったとします。
図ではフリーボディハブですが 126mmだと大抵はボスフリーハブです。

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エンド幅130mmのフレームに合わせるために
左側に4mm分スペーサーを追加しました。
必要とあればシャフトも交換します。
右側に追加するのはNGです。
オチョコが大きくなりますし、なにより変速の調整位置が変わります。
(そのホイールの為だけの変速調整というのであれば別にいけますが)

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新OLD130mmに合わせてリムのセンターを出し直します。
このときのリムの移動量は、左シャフトに追加した幅の半分です。
で、たった2mmのことなのですがスポークテンションの左右差が劇的に減ります。
この場合の リムを反フリー側に寄せるということは、
反フリー側のニップルだけを、リムが2mmもずれるくらい増し締めできるという
反フリー側のスポークテンションに取って ものすごいボーナスです。

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次に、先ほどとは逆の場合です。
MTBなどのOLD135mmのハブを130mmにカットして使う場合です。
シマノの小径車用コンポ、カプレオのハブはOLD135mm仕様しか出ていませんが
エンド幅130mmの小径車用のホイールを組む場合は
こういう措置が必要になります。

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この2.5mm分 リムがフリー側にずれるというのが実に厳しい!
近々こういうホイールを組む予定があります。
こういうホイールを左右同本組み(ロクロク組みとか)で組んでも
ちょっと話にならないというくらい厳しいものがあります。

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↑左右同径フランジからフリー側がラージフランジ化、
反フリー側がスモールフランジ化した状態が上の図です。
フリー側のスポークの角度がラージ化によって外に張り出していますね。
これがシマノ10Sハブであったとして、
11S化対応によって 約2mm右フランジが内側に寄るとします。
上の図のフリー側の赤いスポークが、元あった角度(黒いスポーク)を
割りこまずに済めばいいのですが・・・。
残念ながら多少のラージフランジ化ではそうはならないのです。
角度がより立ってしまうということは、
オチョコがひどくなったということです。

オチョコに関して厳しくなった手組みのシマノ11S化事情にとって、
左右異本組みなどは「やった方がいい」を超えて
「むしろ必須」なのでは、と私は考えています。


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ここまではホイールを前後方向から見た場合の話ですが、
左右方向から見た場合についても触れます。
ハイローフランジというのは反フリー側のスモールフランジ化とも言えますが、
それが上の図のような「スポーク前後方向にぎにぎ」に与える影響について。

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ハブ穴の位相が同じラージフランジとスモールフランジのハブを
それぞれ考えます。

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これにスポークを通すのですが、
スモールフランジのほうが交差の角度がラジアル線に近いですね。
ということは、スモールフランジのほうが「横にぎにぎテスト」の
変形に対して より弱いということになります。
(角度もありますが、そもそもスポークが長くなるというのも
スポークの変形量が大きくなる理由のひとつです。
実際には角度よりもスポーク長さのほうが変形量の増大に対して
影響大と思われるので、角度のせいだけにして考えるのはダメです)

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かと言ってラージフランジがいいというのは早計です。
スモールフランジ化によって スポークとホイールの中心線との角度が
鋭角化したことによるオチョコの軽減という要素と、
同時に発生した「横にぎにぎテ」の変形量増大という要素、
秤にかければオチョコの軽減のほうが大事なのは明らかです。

「横にぎに」の軽減がさほどに重要ならば、フルクラムのホイールは
超ハイローフランジではなく左右超ラージフランジになっていることでしょう。

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でも「横にぎ」をなるべく殺せばよりカッチリしたホイールになるのではないか、
というのが私が結線ハンダ付けをする理由のひとつです。
結線をすれば、それよりハブ側のスポークの変形量がほぼゼロになります。
スポークの交点が「横ぎ」に関してのみハブフランジのようになります。
スポークの変形に関してのみ超ラージフランジ化した
という見方ができるということです。

以上が「手組みを普通に組んでも 完組みには到底勝てないだろう」という話です。

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あともうひとつ。
ラジアル組みの場合はフランジの大きさに関係なく
スポークの角度が一定です。
これをある種の強みとして ラジアル組みの(特に反フリー側ラジアル組みの)
欠点を補って採用するならば、超ハイローフランジか2:1スポークが必要になります。
前者は手組み用でハブが無く(あるのは知ってますがそれはストレートスポーク用です)、
後者は首折れスポークでやるべきではないと私は考えています。
いずれにしても手組みホイール向きの組み方ではなさそうです。

category: 手組み 対 完組み

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手組みホイールVS完組みホイール  

私はこのブログでホイールの理屈うんぬんについて色々書いていますが、
完組みホイールを設計からよく見ると「ホイールにとって理にかなっていて
しかも手組みホイールでは不可能な工夫」というのがなされているものがあります。
そういうのを見るたびに「ああ、手組みじゃこれに勝てんわ」と思うわけですが、
ただ漫然と組まれた手組みホイールではなく、私なりに考えて考え抜いて
手組みホイールというものを見直して組めば、
「完組みホイールと比べて一長一短あるけど こっちの方がいい点もあるよ」という
ホイールは組めると思っています。それが普段ここに書いているあれこれなんですが、
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どうあがいてもライトウェイトには勝てません。
例えばライトウェイトのスタンダードG3チューブラーを例に考えます。
カタログ重量はフロント480g、リヤ614gです。
これと同じ剛性でより軽いホイール、またはこれと同じ重量でより剛性のあるホイール、
どちらでもいいですが 上位互換になるようなホイールを手組みで組めれば手組みの勝ちです。
無理です。もう一回言いますが無理です。
これより前後で100g以上軽いホイールを手組みで組むことは可能ですが、
同じ剛性にはなりませんし、同じような剛性にもなりません。
ENVEの1-45リムを硬めに組めばスタンダードG3比で
「重量同じくらい・剛性やや柔らかい」くらいには肉薄すると思いますが、
勝つことはあり得ません。

ライトウェイトを越える手組みホイールを組める!という人が
もしいたとすれば、それは自分の組んだホイールを客観視できないゆえの妄言です。

もし私が湯水のようにホイールの開発費を使うことができ
かつカーボンホイールの生産設備を持っていたとするなら、
ライトウェイトみたいなホイールを開発すると思います。
そのホイールが ショップで普通の材料で私が組んだ手組みホイールより
低性能なわけがありませんね。
同じ賢さなのであれば、設備のいい方・材料から吟味できる方が有利なのは当然です。
というのが上の図です。

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実際にはライトウェイトは、私よりずっと賢い人たちが
試行錯誤した結果のホイールです。
先ほどの「私の考えたライトウェイトもどき」よりも高性能なのも確実です。
さらに、リサーチ&デヴェロップメントにも恵まれています。
世界のトッププロに供給、あるいは自費で買わせて使ってもらってるわけですが、
「ここをもうちょっとこういう風にしてくれよ」という文句の説得力が
世界一ある人たちからデータを採っています。

のむラボホイールの場合、私自身 または組んで渡したお客さんの意見がそれに相当します。
このお客さんの意見はものすごく貴重です。

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これはライトウェイトに限らず完組みホイール全般に言えることですが、
どこの誰がどう使うか分からないので、「考えうる最強のホイール」から
安全マージンを多めにとるという補正がかかります。

あと大抵のホイールではいくらで売るかという想定価格もあるので、
コストの面でも補正がかかります。
↑これの針を振り切ったのがライトウェイトとみてもいいでしょう。

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手組みホイールであれば、私がお客さんを見て 問題なく使える範囲内で
剛性や軽さをある程度コントロールできます。
これは完組みには絶対できませんから、手組みが完組みに噛みつく隙が
あるとすればこの点ですね。

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ライトウェイトは、ホイールの性能と関係ない部分で2つ 問題があります。
ひとつはあまりに高価なこと。
もうひとつは振れ取りができないことです。
振れ取りができないことは、それによって得られた剛性があるので
性能のために犠牲にしたと思えば仕方がありません。

こんなホイールに、手組みホイールが性能で勝てるわけがありません。

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↑前にも同じような図を書きましたが、
私の中でのホイールのヒエラルキーはこんな感じです。
上から
カーボンスポーク+カーボンリム
スチールスポーク+カーボンリム
特殊スポーク(アルミ・カーボンなど)+アルミリム
スチールスポーク+アルミリム
の4層に分かれていて、
スチールスポーク+アルミリムのホイールは、
さらにストレートスポークか首折れスポークかに分かれます。
ファストフォワードやコリマなどはカーボンリムで組まれていても
首折れスポークの場合があったりと多少の例外はあります。

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手組みホイールはスチールスポークでしか組めません。
ここで のむラボホイールの対抗馬・仮想敵がどのあたりになるのか
私なりの考えを書いておきます。

まず のむラボホイール1号ですが、例えばレーシングゼロには勝てません。
あの硬さはスチールスポークでは出せないのです。
しかし、スチールスポーク+アルミリムのホイールと比較するなら、
ストレートスポークのものよりも(特に後輪は)カッチリ組めていると思いますので
そういうホイールの中では性能的に良い方だという自信はあります。
卑怯かもしれませんが前後29000円という価格を持ち出せば
「同価格帯では最高」と言い方もできます。

のむラボホイール2号では、Tniのカーボン38リムが38mmで347gと
そこそこ軽いので、硬く組みさえすればヒルクライム限定ではボーラよりも
走るかも知れません。平地を含む総合的な状況ではボーラの方が有利です(断言)。
またまた卑怯な話かもしれませんが2号は前後86000円のホイールだという点で
コストパフォーマンスも含めて 見てほしいところです。

Tniのリムの限界スポークテンションは38mmで130kgf、
50mmで100kgf、80mmで120kgfなのですが、
ENVEの1-45は45mmで295g前後で
限界スポークテンションが140~150kgfと完全に上位互換なので
より軽くよりカッチリしたホイールが組めます。
これはスチールスポーク+カーボンリムという階層の
かなり上の方に位置するホイールになり、
私の手組みホイールで理論上最高性能のものは 現時点ではこれです。


ということで走るホイールが欲しい方はライトウェイトのG3がまずオススメです。
548000円がちょっと・・・(いやちょっとどころじゃないやろ)という方には
カンパニョーロ・ボーラワン(234000円くらい)がオススメです。
そこに86000円ののむラボホイールはいかがですか・・・と悪魔のささやきを入れつつ、
私の手組み最強ENVEホイール(190000円前後)も提示するわけです(笑)。
私のENVE手組みはボーラより硬さにやや劣り、
外周部重量でやや優れているという感じです。
完組みホイールの(例えば85kgの人が使うことを想定している)剛性が
オーバースペックになるのであれば、その人に応じて(←手組みの特権!)軽さに振った
ホイールの方が良い場合もあるのではないかな、と思っています。

category: 手組み 対 完組み

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コメントのお返事  

今度出たシマノ9000のC35のチューブラーホイールについてどう思いますか?
また、同じようなスペックの手組みのホイールを組むとすれば
どういう材料で組みますか?というお問い合わせをいただきました。

9000のC35について書く前に、私がシマノホイールについて
思っていることをまず書きます。

まず、私はシマノの7900のC24のWOは非常にいいホイールだと思うんです。
少なくともWOであの重量であのテンションで張っているホイールというのは
他に例がありません。リム重量はフロントで実測385gでした。
RS80のC24もリムは同じということらしいですが、
実測が392gだったので(これは個体差の範囲程度)リムが同じというのは本当でしょう。
マヴィックのオープンプロは430gくらいですが、
これの16Hが存在していたとしても 手組みではちょっと組めません。
C24のWOはそう考えると スチールスポークのWOリムホイールという
ふるいにかけたときに、最後の最後に残るホイールなんですね。
重量的に競合しているのはR-SYSくらいです。
(ホイールじゃなくてリムの重量がです)

これが7900のC24のチューブラーであれば、外周部重量で競合するリムが
いくつか存在するので、WOのときと違ってその分野で唯一というわけではありません。
他に検討してもいいという候補が出てきます。
ホイールというのは結局「リムをぶん回している物体」になるわけですが、
穴数が合うものとして 7900のハブを使い、C24相当のリム高の
他のリムに置き換えたとき、「こっちの方が走るわ」というリムが
ある可能性もあります。少なくとも もっと軽いというリムはあります。
しかし競合するリムといっても ごく少数なのでC24のチューブラーも
同じようなホイールの中でふるいにかけると
最後まで残るホイールのひとつには違いないと思います。

これが7900のC35とC50になるともっと競合するリムが増えます。
しかし問題はもっと別のところにあって、リムがどうこう以前に
リヤハブの左フランジを内側に寄せるということをしていますので、
理論上も実際上も横剛性が落ちるハブをわざわざ使っているという時点で
個人的にはあまり好きではありません。リムはいいのに。
左フランジを寄せたハブについては
9000のホイールの解説に「低い安定性」とシマノ自ら謳っているほどです。

シマノのホイールは毎度アイデアは面白いと思いますが、
設計思想が一貫せず、世代ごとに ころころ変わっています。
7700はスポークの出たフランジの反対側のリムサイドにスポークを引っかけて
テンションを張る構造+ペアスポークです。

7701はリヤハブのフリー側をラジアル組みにしました。
(このとき、7700よりテンションバランスが良くなったと謳っています)
前輪は7700もそうですが 理論上JIS組みです。
これについては後日ちょっと書くことがあります。

7800はハブ側ニップル+フリー側ラジアル組みです。
スポークの間隔は均等になりました。
(7701とちがいホイールのどこでも振れが取れます!とは謳ってませんが)

7900はリヤが理論上 反イタリアン組みでニップルはリム側になりました。
(7800の方が外周部の整流効果がいいです!とは謳ってませんが)
リム高が高いモデルは リヤハブの左フランジを内側に寄せています。

で、9000ですね。C24は完成されているのか、7950と大きな変更点はありません。
C35以上のリム高のモデルについてはスポーク数の左右比を1:2にしたことと、
リム高に関係なくリヤハブの左フランジを広くとっているのが特徴です。

ハブとリムをつなぐホイールの構造としては 7800が過去最高傑作だと思ってましたが、
9000もなかなか良さそうです。最もフリーボディに近いスポークが
進行方向に対して前を向いている(逆イタリアン組み相当)ことだけは
個人的にどうかと思いますが、それ以外はかなり良くなったと思います。
(=以前は悪かったってことです)
その9000の中でもC35についてですが、ロードレース中の大抵の状況で
C50やC75より おいしい時間が長いと思われますので、これも絶妙です。
日本のレースに限って言えば 周回レースが多いので、登り下りも考えると
35mmというやや低め(35mmが低めというのも隔世の感がありますが)の
リム高がいいので、全部買えればいいですが(笑)一つ買うなら
ベストバイはC35になると思います。

で、私がそのC35に対して競合するようなホイールを手組みで組むとするなら、
リム高はC50寄りですが ENVEの1-45を手組みの理屈フル動員で組むと思います。
左右異径スポーク・リヤが24Hならヨンロク組み・反フリー側の結線ハンダ付け、に加えて
完組みの専用設計には及ばないもののリヤハブはハイローフランジのものを選ぶ、
リム高45mmでは厳しいですが必要とあればヌポーク組みにする、などです。
(私の過去の例では1-45はヌポークで組むことが多いです)

1-45はEDGEの最終ロットで274gくらい、
ENVEの現行ロットで296gくらいが実測重量の振り幅の最低値だと思いますが、
リム高も勘案すれば(実は勘案しなくても)外周部重量はC35より軽いです。

あとはこれを 完組みホイール並みにカッチリと組めればいいのですが、
首折れスポークではなかなか難しい話です(いつも書いてることです)。
特にフロントの縦の硬さは絶対に勝てません。
また、(C35と比べて)1-45の方が座屈に弱いので
体重のある方には強くオススメしません。

Tniのカーボン38(のむラボホイール2号ですね)ではリム重量347gです。
C35に対して性能で完全上位互換は無理ですが それでもリムの軽さや、
無負荷のハブの回転の軽さ(シャフトを持って手で回したときのすとヌルヌル度)や、
組み方しだいによっては 見かけ上のスポークテンションの
左右差の少なさについては太刀打ちする自信があります。
まあ前後ペア86000円で売っているホイールなので、
それと比較すること自体がおこがましいのですが。

のむラボホイール1号は29000円のホイールでは最強、
2号は86000円のホイールでは最強、というのを目指しています。

ENVEの1-45で手組みして ハブも組み方もそれなりに考えて組んだ場合
試算したら186000円ほどで組めると出ました。
WH-9000-C35-TUは254371円ですね。
といってもこれは希望小売価格です。
私の手組みホイールは実売価格です。
という情報をお客さんに伝えるわけですが、
選ぶのはお客さんです

あと、いただいたコメントの冒頭で
アンチシマノホイールの野村さんと書かれておられましたが、
別にアンチシマノでもアンチシマノホイールでもないですよ。
冒頭で7900のC35が好きではないと書きましたが、
これはそのモデルのみについてのことで
メーカーでホイールを評価するなど色眼鏡も甚だしいです。
「メーカーロゴやステッカーを取っ払った真っ黒いホイール」として
ホイールを見たときに 頭の悪い構造のホイールが嫌いなだけです。


以下 私の好きなシマノ製品(ホイール関係)
7701のカーボンの前輪は好きです。ペアスポークでエア抜けがいいのか
旧モデルになるうえラジアル組みでもないのにウルリヒがTTで使ってましたね。
7801の後輪も好きですよ。左右のテンション差だけに注視した場合の
スチールスポークのスポークアレンジメントとしては、多分 結論です。
C24のWOの前輪も好きです。7900でもRS80でもどっちでもいいです。
同じリムなので。

あと旧品ですがデュラエースAXのスポークヘッド埋め込みフランジのハブも好きですし、
デオーレのディスクブレーキハブの初期モデルの引っかけフランジのハブも好きです。
↑これは理屈的にアウトですが、それでも好きです。

あと6600アルテグラのリヤハブも好きです。
左フランジの横の張り出しがデュラエースよりも出ているので、
デュラエースのハブよりも横に強いホイールが組めます。
ワイドフランジで生じる左右のスポークテンション差は組み方で取り戻せますが、
フランジが狭い結果落ちる横剛性はどうすることもできません。
6700も仕上げ以外は同じハブですが、6600は24Hがあったので
カーボンホイールを組むのによく使いました。


私はここで シマノホイールについて辛辣なことを書くこともありますが、
何も「シマノだからダメ」というわけではないです。
理屈上ダメなものはダメというだけです。

category: 手組み 対 完組み

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手組みホイールの限界  

私が たまにホイールのことについて長文を書くことがありますが、
それらを書き切ったら 「手組みホイール 対 完組みホイール」という
総括の話を書こうと思っていました。
今はその前振り段階ですが、多分まだ半分も書いてません。

しかし思うところがあるので、理論上の話は時間をみて進めつつも
先に総括の話を書くことにします。

DSC09915amx.jpg
結局、良いホイールというのは、踏んでより進むホイールのことです。
上死点からペダルを踏み込むと(上の図の1)、
リヤホイールが ガッ!と進む(上の図の2)わけですが、
1の入力が同じ力の大きさなのに、2の結果がホイールによって変わると
すれば、それはホイールの性能差そのものです。
あるパワーでペダルを上から踏んだ時に、ペダルのベアリングの内部抵抗、
クランクのたわみ、フレームのたわみ、BBの内部抵抗、
チェーンとチェーンリングの抵抗、チェーンの内部抵抗、
チェーンとスプロケットの抵抗、
リヤディレイラーのチェーンテンションを保つ力、スポークのたわみ、
他にもあるかも知れませんが そういう部分で少しづつ間引かれて
残った力がリヤホイールが地面を蹴る力になります。
タイヤの特性(接地面積やグリップなど)も大きな要素の一つですね。

そのうちの、ホイールの間引き分を理論上どうすれば
減らせられるかというのが普段の長文のテーマです。

上の図の2で示した力の多寡をホイールの反応性と呼ぶことにします。

DSC09916amx.jpg
その反応性を決める要素を考えてみました。
私の考えですが、剛性(厳密には縦剛性と横剛性に分かれる)・軽さ・空力特性・
左右のホイールバランスの4つに分かれると思います。
それをパラメータグラフで表すと、上の図のようになります。
上の図では あるホイールが4つの要素で
5点満点中すべて3点ということです。
それを結んだ赤い四角形の面積が大きいほど反応性の高いホイールと
言いたいのですが・・・
DSC09917amx.jpg
反応性に対する要素の大きさは平等ではありません。
最も軽視していいのはバランスです。
前輪はオチョコがないので元々左右のバランス差が無いですが、
後輪で左右のバランス差が大きいと 先日も書いた通り
左側だけシュータッチするホイールになります。
しかし、左のスポークテンションが多少ぬるくても、右側(フリー側)が
きっちり張ってあれば 実際はそれほど大きな問題ではありません。
(左にシュータッチさえしなければ)
上の図ではバランス以外の要素が3点、バランスのみ1点ですが、
DSC09918amx.jpg
これがバランス4点になったとしてもホイールの反応性には
大きく影響しない(そんなに面積が変わらない)ということです。
左右のスポークテンションが同じロードの後輪というのは基本的に存在しません。
バランスが5点というのは左右のスポークテンションが一緒のホイールだけに
与えられるものだと(私が勝手に決めたのですが)すれば、
私のWフリー リヤホイールは左右バランス5点ということになります。
しかしあれは剛性が自己採点で0.5点です(特に横剛性が弱い)。
反応性にとって重要なのは圧倒的に「剛性>バランス」なので、
バランスのために剛性を捨てては意味がありません。

DSC09919amx.jpg
DSC09921amx.jpg
もう一つ。状況によっても反応性に対する評価は変わります。
例えばホイールの空力性能に対する重要度は、ヒルクライムとトラックレースでは
全く異なります。軽さ4点・空力1点(例えばR-SYS)をトラックレースで使ったり
軽さ1点・空力4点(例えばコスミックカーボン)をヒルクライムで使うのは
適材適所でありません。
ここで大事なのは、
ホイールは 剛性が一番大事な要素
ということです。
例えヒルクライム専用の異常に軽いホイールであっても、
剛性が弱くては使えません。

DSC09923amx.jpg
で、「反応性の高いホイールを作る」ということだけを考えて
手組みホイールと完組みホイールの各要素について考えていきます。
まずはハブから。普通のハブは首折れスポーク用のフランジのものに
限られ、スポーク穴の間隔も等間隔であいたものしか ありません。
ハイローフランジのリヤハブもありますが、
あまりに極端な左右差のものはないです。

対して完組みホイールは、組み付けるリムを想定してフランジ形状を
専用ハブとして設計できますし、汎用性を捨てて かなり極端なデザインのものを
作ることができます。

DSC09924amx.jpg
つづいてスポークとニップル。
手組みホイールではいわゆる普通のスポークとニップルしか
使えませんが、完組みホイールでは材質からしてアルミやカーボンなど
特殊なものを使うことも出来ます。

手組みホイールのスポークはハブとリムが決まった状態から
組み方を変えることができ、黒くペイントしたスポークでない限り
結線ハンダ付けが可能です。

それが上の画像で赤い丸で囲った部分ですが、
これは手組みホイールが完組みホイールにたてつく上で、
数少ない有利な要素です。

DSC09926amx.jpg
最後にリム。完組みホイールではリムのスポーク穴位置を
自由に設定できます。
普通のリムでは 普通のハブと組み合わされる都合上
リムのスポーク穴も等間隔にあいたものしか ありません。

ここでは反応性がより高いホイールを作ることだけを考えているので、
普段の振れ取りがしやすいとか スポークの替えが入手しやすいなどの
「メンテナンス性能」はホイールの性能とは見なしていません。
「クロモリフレームには32Hや36Hのホイールを付けたほうが情緒がある」
などの審美性もどうでもいいです。

完組みホイールでもっとも有利な要素はストレートスポークです。
これにするだけで、首折れスポークではまず上げられないような
スポークテンションでホイールが組めるので、
ホイールの最重要要素の剛性も簡単に高く出来ます。

DSC09937amx.jpg
ホイールの結論ですが、実は「ライトウェイト買ってください」で終了です。
さっき書いたことと重複しますが、振れ取りのできるできないは
ホイールの反応性に関係ないので(ここでは)どうでもいいです。
あとはマヴィックのコスミックカーボンアルチメイトや
レイノルズのRZRシリーズなど、カーボンスポークのカーボンチューブラー
ホイールが多分最強のホイールです。
TTのときは後輪がディスクの方がいいだろ、とかごく限られた状況を除いては
これらのホイールより反応性が高いホイールはないでしょう。
手組みのホイールで、「ライトウェイトと同重量で より強い」または
「ライトウェイトと同剛性で より軽い」などの上位互換のホイールを
組むのは不可能(少なくとも私には)なので、これは専用設計ホイールの
極みであって、手組みホイールでは太刀打ちできません。

DSC09929amx.jpg
次に、40~50mmくらいのリム高のカーボンチューブラーホイールを
考えてみます。振れ取りできるので常用に耐えるし、価格も飛びぬけていない
ということで、実際に所有している人数はライトウェイトの比ではない多さです。
私のこの分野での仮想敵はカンパニョーロのボーラやジップの404などですが、
DSC09930amx.jpg
このクラスの場合、エンヴェの1-45のリムでホイールを組めば、
一長一短あるものの 遜色ない性能のものを組む自信があります。
縦剛性でやや劣り、外周部重量でやや勝るといった感じでしょうか。
乗り手の体重に応じて組み方やスポーク本数を調整できるという点でも
手組みの方が有利ですね。
ボーラワンが欲しいという人に、エンヴェにしときなさい、
とまでは言いませんが エンヴェが欲しいと言われたら、
「こっちを選んでよかった」と思ってもらえるようなホイールを組みます!
上の画像は実際にそういう風に私が組んだものです。

DSC09933amx.jpg
次にアルミのリムをアルミやカーボンのスポークで組んだ
WOのホイールについて。
WOのリムではマヴィック・オープンプロがオススメですが、
これをどう組んだところで、R-SYSより軽く組んだり
レーシングゼロより硬く組むことは出来ません。
(後者は厳密には可能ですが、レーシングゼロより重たくなります)

チューブラーはめんどくさいなあ、でも走るホイールが欲しい!という方には
私はフルクラムのレーシングゼロをオススメすることが多いです。

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最後にアルミリムをスチールスポークで組んでいる
WOのホイールについて。
このクラスのホイールは、完成車に元々付いていることも多く、
手組みホイールとの違いはストレートスポークかどうかくらいです。
ものによっては首折れスポークだったりもします。
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このクラスなら、Tniのアルミリムで「こっちの方がいいよ」と
オススメできるホイールを組む自信があります!
リムが届くのが明日なので、続報は明日!

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↑スチールスポーク仕様であれば、完組みホイールに比肩する
手組みホイールが組める可能性があるということですね。

category: 手組み 対 完組み

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