のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

スポークテンションメーターと第3のスポークテンション  

スポークテンションとテンションメーターの話を書きます。
これを書かないことには「手組みでフリー側ラジアル組み」
「片側フランジで左右異径組み」「0本組みだけどラジアル組みではない」
などの話が書けません。
去年の12月くらいには書いているはずだったのですが
色々あって長引きました。

まずはテンションメーターの原理と使い方から。
DSC09701amx2.jpg
スポークの変形量を見るために てこのように3ヶ所でスポークを押さえます。
うち2ヶ所は不動、1ヶ所は可動になっていて 圧縮の抵抗から
スポークの変形量を測るようになっています。

DSC09703amx2.jpg
↑そのときの変形量を、メーターに付属の換算表に落としこんで
スポークテンションを調べます。
このときの変形量とスポークテンションの関係は
上の図のような弓なりの曲線になっていますが、

DSC09705amx2.jpg
もしこれが直線になるとしましょう。
そのうえで「スポークは2.0mmプレーン以外 使わない」と
スポークの種類をただひとつに定めたならば
DSC09706amx2.jpg
メーターの読みそのものがスポークテンションの表示になるような
テンションメーターが作れるはずです。
(上の図の破線は ずらして描いてますが同じ線上です)

実際は 弓なり曲線なのとスポークの種類が豊富なことから
換算表無しでテンションメーターを使うことは出来ません

DSC09731amx2.jpg
ここが非常に重要な点ですが、
このブログで単に「スポークテンション」と書いてあった場合、
少なくとも3つの意味があるうちのどれかを指しているのですが
それについて詳細に書かないという方針でずっと書いてきました。

これからも基本的にはそのつもりです。

私個人の勝手な呼び方では、
「テンションメーターで測ったときのスポークの変形量」は
「第1のスポークテンション」です。
「見かけ上のスポークテンション」と呼んでいる場合は
たいていこれですが、読み返してみると そうでもなかったりします。
スポークの変形量をスポークテンションと呼ぶことについてですが、
変形量の少なさとスポークテンションの高さには因果関係があるので
「スポークテンション的なもの」ということで
これを第1のスポークテンションと勝手に呼んでいます。

次に、換算表で換算した後のスポークテンションの概算値を
「第2のスポークテンション」と呼んでいます。
これも過去を見ると「真のスポークテンション」と呼んでいる場合が多いですが
例外も多いので「第2=真の」とは限りません。
こちらは一般的な意味での、普通スポークテンションと言えば
これを指す「スポークテンション」ですね。

次に、第3のスポークテンションについて。
これはスポークテンションそのものではありません。
第1と第2のスポークテンションと
スポークの太さ(厳密には比重)と
スポークとハブのラジアン感覚的な角度を
ある定数に当てはめて得られる数値です。
定数については書けません。私の勝手な定義です。
ただ、経験的に第3のスポークテンションの多寡が
ホイールのかかりの良さを 第2のスポークテンション以上に
正確に表現しているという確信はあります。
第3のスポークテンションは 概ね「スポークの変形量」のことですが
第1と違うのはスポークの比重と 張っている角度も
盛り込んで算出されているということです。
同じスポークテンション(←さてこれは何番目のスポークテンションかな?)でも
ラジアル組みとタンジェント組みでは駆動伝達効率が違いますから、
スポークの張ってある角度は かかりの良さにとって重要です。
第3のスポークテンションは「かかりの良さの数値化」だと思ってください。
ちょっと違いますが だいたいそうです。

「第4のスポークテンション」というのもありますが、
ホイールを組むという作業の上では まず必要の無い考え方なので
このブログで触れたことはありません。
後述しますが現状 第4の研究は出来ないのです。返せ。

DSC09704amx2.jpg
丸スポークと扁平スポークで少し例外はありますが、
太いスポークと細いスポークを同じ換算表に表すと上の図のようになります。
どちらも曲線なので メーターの読みと概算後のスポークテンションの関係、
つまり第1と第2の関係は 太いスポークと細いスポークで同じ割合にはなりません。
後輪を組むとして 全コンペと全CX-RAY、どちらも左右同径組みではありますが
全CX-RAYのほうがスポークテンションの左右差が
全コンペよりも少なくなるのです。
双方とも フリー側を第2テンション1000Nで張ったとしましょう。
当然 組み方もリムもハブも同じです。
そのときに体感的な反フリー側のスポークにぎにぎ変形量は
全CX-RAYのほうが張っている感じになります。
これを第3のスポークテンションで計算しても やはりCX-RAYのほうが
より高い数値になります。第3の計算式にスポークの比重が入っているからです。


まずはテンションメーターの原理と使い方から。とか書いておきながら
かなり脱線してしまいました。
DSC09707amx2.jpg
スポークテンションメーターの話に戻ります。
まずはホーザンのテンションメーターから。
私が普段使うのはこれです。
税別定価は44000円です。ご参考までに。

DSC09709amx2.jpg
真ん中の測定子をスポークに押し付けて変形量を測ります。

DSC09710amx2.jpg
↑校正はここのダブルナットのかけ具合でしているのですが、
ここは絶対に触ってはいけません。校正が狂うからです。
トルクレンチもそうですが、経年使用でへたってくると
測定値も徐々に変わってきます。
ホーザンのテンションメーターの場合は
メーカーに送れば校正し直してくれます。
計器系の工具でこれが出来るか出来ないかは非常に重要です。

説明書から抜粋すると
「換算値は一品ごとに異なるので、個別に公的検査を受けて換算表を作成しております。
換算表は大切に保管してください。
万一換算表を紛失された場合は本器の再検定が必要となります。」
とあります。

この「個別に」という点が他のメーカーと違うところです。

DSC09711amx2.jpg
続いてDTのテンションメーターです。
これがないとホーザンのテンションメーターが使えません(なぜかは後述)。
税別定価は72380円です。ご参考までに。

DSC09712amx2.jpg
↑ここにスポークを挟みます。

DSC09713amx2.jpg
スポークを挟むと 握力を鍛えるグリップを握るような形となり、
測定子が押されて変形量が測れるわけですが、

DSC09714amx2.jpg
DSC09715amx2.jpg
↑測定子は握力グリップに いもねじ止めされているだけです。
ここをいじると校正が出来ます。
先ほどのホーザンでは絶対にいじるなと言っている校正が、
DTでは出来ます。

なぜかというとDTの換算表はメーターごとではなく唯一決まったものだからです。
換算表通りの数値が出るようにメーターのほうを調整しろというわけです。

DSC09720amx2.jpg
↑これが その換算表です。

DSC09721amx2.jpg
参考までに2.0mmチャンピオン。
DSC09722amx2.jpg
つづいて2.0-1.5mmレボリューション。

先ほど 太いスポークの弓なり曲線の下に細いスポークの弓なり曲線があるという
図を描きましたが、この2つを見る限り同じように見えますね。
だまされてはいけません。グラフの最大値と範囲が全然違います。
例を挙げるとチャンピオンは2.2mmの変形で1000Nですが、
レボリューションは1.3mm弱で1000Nになっています。

DSC09737amx2.jpg
ホーザンはメーターごとに個別の換算表が付属しており、
別の同じメーター(←おかしなニホンゴ)の換算表とは互換性がありません。
また、校正のたびに付属の換算表も刷新されます。

この換算表ですが、一般車用に作られているためなのか
13番と14番と15番のプレーンスポークの
スポークテンションしか求めることは出来ません。
これ以外のサイズやエアロスポークなどの特殊スポークは
無理と はっきり書いています。

DSC09738amx2.jpg
DTの場合は、唯一の換算表に対して忠実なメーターであることを
「正しい」としています。
DTのテンションメーターを複数持っていて、
同じ2.0mmチャンピオンに当てると
どれもきっかり2.2mmの変形を指す、など 同じ値を指すとしましょう。
そのうちひとつだけを常用し続けると狂ってきます。
そのときに基準となる別のDTのメーター(正確さが確からしい)があれば
ユーザー側で校正が出来ますね。
なので出来ればDTのメーターは2つ以上あったほうがいいのです。
2つ以上のDTのメーターでホイール組みをする「ゼロイン組み」と
私が勝手に呼んでいる組み方があるのですが、
今は1つしか持っていないので出来ません。
今の私のホイールの組み方では、ゼロイン組みが より良いホイール組みに
直接つながるかと言えば そうでもないので別にいいのですが。

DTの換算表は DTの全てのスポークのモデルの弓なり曲線が載っています。
厳密にはバテッド長さが違うので同一品ではないですが
サピムのCX-RAYはDTのエアロライト、
レースはコンペティション、レーザーはレボリューションと同じものとすれば
サピムスポークもDTのメーターで測れます。
誤差は少ないと思われるので私はそうしています。
リーダーとチャンピオンはプレーンスポーク同士なので 違いはほぼ無いでしょう。

で、DTのメーターが1つしか無ければどうするのか?ですね。
「チャンピオン2.0mmプレーンの1000Nは変形2.2mm」
と決まっていても メーターを当てて2.2mmの変形を指したところが
本当に1000Nなのか?という疑問が出てきます。
「間違いなくこいつ1000N」というメトロノーム的な基準があれば
チューニング出来ますが・・・。
「先ほどのDTのメーターを2つ用意する」というのは
楽器同士でチューニングするようなものです。

でも新品である限りはDTのメーターは狂いや個体差が非常に少ないので
1つだけ買ったとしても 校正しないのであれば問題はありません。
校正を要するのは毎日ホイールを組んでいるような場合ですが、
この完組み全盛のご時勢に そんな奴はいないでしょう。

DSC09740amx2.jpg
で、ホーザンのメーターで どうやってバテッドとエアロのスポークを
測っているのかですが、100Nごとの変形量を
DTとホーザンで測り比べた 自作の換算表を使っています。
これで「CX-RAY(実はエアロライト)の
ホーザンでの○.○mm変形は ○○○○N」などと換算できます。
これは「DTとホーザンでのゼロイン組み」に相当しますが
現状のホーザンを校正まで使い続ける限り ずっと使えます。

DSC09732amx2.jpg
↑換算表などが3部。

DSC09733amx2.jpg
DSC09734amx2.jpg
測定子のいもねじ調整用PB製2.5mmアーレンキーが
DSC09735amx2.jpg
3つ。

えーと、管理を他人に任せると扱いが荒くて散逸してしまうという
痛い目にあったため いま私はDTのメーターを1つしか持っていません。
換算表無しでは(DTは入手できそうですが)無用の長物なのと
君には過ぎた道具だから 無くしてなければ返したまえ。

ゼロイン組みが出来ないのは別にいいとしても、
第4のスポークテンションを検証するのには
DTのメーターが 最低2つは要るんだよおおぉぉぉ!




DTのメーターと換算表のおかげで、ホーザンのメーターを
コンペティションやCX-RAYで使うことが出来るようになりました。
そのときにいちいち換算表と にらめっこして使っているかというと、
「CX-RAYで1100Nなら針は この辺」とか
だいたい そらで覚えてしまっているので
よく使うDTコンペとCX-RAYの場合は換算表を見ません。
メーターの読みこと第1のスポークテンションで組んでしまいます。
実は完組みホイールメーカーでも
この数値を規定スポークテンションにしているところがありまして、
「このホイールのフリー側はDTのメーターで変形量が何mm」という
指定の仕方をしているのです。
このやり方は賢いかもしれません。
必ずしもスポークがDT製である必要もありません。
「うちのホイールはDTのメーターを使って組んでるだけ」でいいのです。
そういうこともありDTのメーターはショップ必携です。
海外メーカーのホイールの修理に不可欠な場合があるので。
という理由で換算表無しで使っているとしても返したまえ。

DSC09728amx2.jpg
最後に。
「パークツールのTM-1はどうですか?」と訊かれそうなので先に書いておきます。
税別12300円と安価なのでホームメカニックの方にはオススメですね。
ただ、精度というか再現性が やや怪しいのでその点には注意が必要です。
カシメの硬さゆるさの個体差が非常に大きく、摺動部の抵抗感が物ごとに違います。
また、カシメを調整したり注油することで ある一個体でも針の上がりやすさが
大きく変わってしまいます。
そんなことがないようにするための堅牢さが ホーザンやDTにはありますが
それが価格にも出ています(それにしてもDTは高いと思いますが)。
構造的には超簡易式DTですね。
ショッププロの道具ではないと思っていますが
一般の方が使う分には十分だと思います。
ただ、さっきも書いたように 同じコンディションを維持することが
重要なので その点には気をつかってください。
「扱い次第で目盛りの幅が可変するモノサシ」的な危うさがあります。

DSC09730amx2.jpg
パークツールの工具の名前は「アクロニム+サイズ品番」か
「アクロニム+バージョン品番」です。

ハブスパナ(パークツールでの呼称はショップコーンレンチ)の場合は
ShopCornWrenchのアクロニムのSCWに
13mmならSCW-13、17mmならSCW-17と
名付けているので これはサイズ品番です。

フロアポンプの場合はProfessionalFloorPumpの
アクロニムのPFPのあとに品番が続きますが、
現存しているのは PFP-5とPFP-7とPFP-8です。
これはバージョン品番なので かつては1から始まって2・3・4・6が
あったということです。

何が言いたいかというと TM-1は1番目のTensionMeterだということです。
カタログでいうところの「スポークテンションの管理の必要性」に
パークツールが気づいたのは ごく最近ということですね。
あるいは他社で信頼できるメーターが定番の地位を確立していたから
参入しにくかったのかもしれません。
そう考えると「よそが出している物より ずっと安いものを」というところを
あえて狙って 簡便ながらチャチくなく想定売価も抑えるという
ギリギリのラインから出た 傑作のようにも思えてきます。

もし この世にTM-1しかスポークテンションメーターが無いのであれば
もちろんそれを利用します。指の感覚だけを頼りにはしません。
ただ、価格さえ厭わないなら私には他の選択肢があるというだけのことです。

いつかTM-2とかが出て それがカッチリして信用できそうなものなら
5万円でも高いとは思いません。いやむしろ期待しています。
ネタ工具で有名なピザカッターですら いまPZT-2ですからね。

category: スポークテンションの話

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