のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

カンパニョーロのG3組みの話 その1  

先に書いておきます。この記事、長いです。

全てのG3組みホイールユーザーに捧ぐ←大げさ

カンパニョーロのG3というスポークアレンジメント、
パッと見 単なるペアスポークですが、ペアスポークと断じて見ているだけでは
非常に惜しい理屈のかたまりです。今日はそれについて。
DSC01079amx.jpg
その前にダフり角の話の補足をします。
上の図ではダフり角が負になっています。
先日 分銅で例えたものをニップルとして見てみます。
ゴルフクラブのスイングよろしく振られたスポークの先に付いている
ニップルが、リム(とタイヤ)に対してダフります。

DSC01077amx.jpg
そのとき、上の図のようにダフり角が正になっている方が
スポークが伝達してきた力をより効率よく伝えるのではないか、
という話でした。


DSC01080amx.jpg
本題に入ります。ここから先しばらくは、リヤホイールのフリーボディ側の
スポークのことだけについて書いていきます。
上の図では ハブの二分線に最も近いスポーク穴から交差させた
2本のスポークを描いています。
青がヌポーク、赤が反ヌポークです。

DSC01081amx.jpg
ヌポークの引っ張り方向をF1、反ヌポークの引っ張り方向をF2とします。

DSC01082amx.jpg
F1とF2を均等な力で引っ張ることによってハブ軸が引っ張られる方向をF3とします。
F1とF2の力の合成がF3になります。F3は、F1とF2の交差部分を通ります。
F3は最も直接的に 力の損失なくハブ軸を引き寄せる線になります。
F3をそっくりなぞる組み方はラジアル組みになりますね。

タンジェント組みは、ラジアル組みから見ればF3から逸れる力の損失分だけ
余計にスポークテンションを上げてやる必要があります。
ニップルがリムに食い込む力が同じなら、スポークがF3に近づくほど
スポークテンションは下がります。

これを重視してフリー側をラジアル組みしようという考えがあります。
(フリー側のテンションが下がる=左右均等に近づく)
しかしフリー側ラジアルはスプロケットの回転方向のねじれ(第3作用)に対して弱く、
首折れスポークでは(他にも問題があることもあり)しない方がいいです。
完組みホイールでは堅牢なハブフランジやアルミスポークの採用で
これが回避できるかもしれません。それがキシリウムです。
手組みホイールではハブの穴数が許す限りヨンロク組みやヨンパチ組みにすることで
疑似キシリウムともいえるテンションの左右差の是正を狙えます。

DSC01086amx.jpg
では、いっそのこと こうしてみてはどうでしょう。
この場合でもF1とF2の合成はF3になります。
見かけ上ラジアル組みに近づいたので、同じ縦硬さのホイールとして成立したとき
こちらの方がタンジェント組みよりも低いスポークテンションで組めるのではないでしょうか。
ニップル1回転あたりに ニップルがリムに食い込む力の張力特性が
ラジアル組みのそれに かなり似通ったものになりそうです。

DSC01087amx.jpg
さらに、ハブは市販ながら リム側のスポーク穴は好きに設定していいよという
条件も付け足しました。
F1とF2を F3と平行に配した先に、リム側のスポーク穴を設定します。
これを今後パラレル組みと呼ぶことにします。

DSC01088amx.jpg
これをするにあたって、F1とF2のハブ側の出どころが
可能な限り離れていることが理想です。
x本のスポークでy本組みしたい場合、y≦x/4が成り立つなら組めますが、
ハブの二分線に最も近い穴からタンジェント組み(最接線組み)する場合は
y=x/4が成り立つときに限られます。

DSC01089amx.jpg
↑現実的には24Hの6本組みか 32Hの8本組みがそれに該当します。

DSC01091amx.jpg
28H、20Hではy=x/4が成り立つのが7本組みと5本組みになります。

DSC01092amx.jpg
ハブの二分線に近いスポークがヌポーク同士、
または反ヌポーク同士になるので組めません。
上の図では結局28Hは6本組み、20Hは4本組みで組んでいます。

DSC01090amx.jpg
また、F1とF2を近づければ近づけるほど限りなく
ラジアル組みに近づいてしまいます。
第3作用のねじれ耐性のためにもここはなるべくF1とF2を離したいところです。

DSC01096amx.jpg
ということで、F1とF2でパラレル組みを設定しました。
ハブの二分線を越えた隣のスポーク穴でも1組、
拮抗するパラレル組みを描いておきます。

DSC01094amx.jpg
↑首折れスポーク用の普通のフランジのハブでは、スポークの出どころを
横から見て重なり合う位相に設定できません。

DSC09328amx.jpg
DSC00329amx.jpg
↑完組みホイールでは、やり方は色々ありますが スポークの出どころを
横から見て同じ位置(または重なり合った位置)に設定できます。

DSC01097amx.jpg
ということで、ハブも普通のものではなく スポークの出どころを
重なり合わせにできるよという条件を付け足しました。

DSC01098amx.jpg
↑32Hのフリー側 片側という設定なので、16本のスポークはこうなります。

DSC01099amx.jpg
ここでダフり角に付いて考えてみます。
ラジアル組みのダフり角は当然ゼロです。

DSC01100amx.jpg
では、パラレル組みのF1スポークはというと・・・
F3と平行にスポークを配したので、タンジェント組みからそれなりに逸れていますが
DSC01102amx.jpg
一見ラジアル組みに見えるパラレル組みのスポークですが、ダフり角が正になるんです!
パラレル組みはラジアル組みのスポークの張力特性に近いので
「タンジェント組みより低いスポークテンションでホイールの硬さを得られる」
というラジアル組みの特徴を持ちつつも、
「ダフり角が正になる=スポークの向きによる力の伝達効率がラジアル組みよりも良い」
という性質を持っているということです。

DSC01129amx.jpg
ここだけまた普通のハブで描きます。
左右ともパラレル組みにするよりは、フリー側のみパラレル組みにすることで
フリー側のスポークテンションを下げる方がバランス的にはいいですね。
パラレル組みは 第3作用のねじれ対策として
ハブの二分線に最も近いスポーク穴からスポークを出しているので
反フリー側も同じように最接線組みをしなければなりません。
32Hなら8本組みということです。反フリー側のタンジェント組みを
6本組み→4本組み→2本組み→ラジアル組みとしていくほど
スポークテンションの左右差がひどくなります。
私はパラレル組みで得られるスポークテンションの左右差の是正量は非常に少ないと
見ていますので、おそらく反フリー側を6本組みにした時点で
パラレル組みの意味は無くなるのではないかと思います。

上の図のように F1とF2のスポークが F3と平行になるのは
リム側のスポーク穴をそうなるように設定した場合に限られます。

DSC01130amx.jpg
↑普通のリムで組めば、ややF3から開いた状態になると思われます。
(超ラージフランジならF3と平行になるかも知れませんが)

DSC01106amx.jpg
あと、ダフり角の算出根拠の「接地面」ですが、ニップルの真下ではありません。

DSC01107amx.jpg
↑スポークの延長線が地面に接地する位置で計測します。
この図では接地面ではなくなってしまいました。

DSC01109amx.jpg
↑改めて描き直すと こういうことです。

DSC01111amx.jpg
線が煩雑になるのがいやなので、
16Hのリヤホイールのフリー側パラレル組み8本で考えます。

ホイールのスポークテンションは、左右差があるものの
リムが真ん中にある状態になるように引っ張りあっています。
スポークの引っ張り角度の違いで 反フリー側のスポークテンションが低いですが、
反フリー側だけ半分の数に間引いてやれば、今までの半数のスポークで
ホイール片側のテンションの総量を保持しないといけなくなります。
そうすると反フリー側の1本当たりのスポークテンションが増え、
それがフリー側のスポークテンションと見かけ上 非常に近くなるので
ホイールバランスが良くなる、という考え方があります。
ということで、フリー側パラレルの状態からスポーク本数を
右:左で2:1にしてみたいと思います。

DSC01112amx.jpg
左右8Hの16Hが 右8H左4Hの12Hになります。
反フリー側の4Hを上の図のように配しました。

DSC01113amx.jpg
こうした方が、リム1周でのニップルの間隔差が少なくなるからです。

DSC01114amx.jpg
それを簡単な展開図にしてみました。

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このスポーク配列では、先日書いたジグザグひずみが もろに出ます。
バイクに取り付けて目視で分からないレベルで横振れを取るのはまず無理でしょう。

DSC01116amx.jpg
ということでこういう風にして見ました。

DSC01117amx.jpg
振れが取りにくいゾーンが大きく存在しますが、
縦振れはタイヤの変形量以下に抑えられれば問題ありません。
横振れに関してはこちらの方が 先ほどよりもずっときれいに取れます。
これをG3組みと名付けます。名付けたのはもちろん私ではなくカンパニョーロです。

これがカンパニョーロのG3組みの正体です。

私の手組みホイールでのホイールの左右バランスの是正の手段の一つに
「フリー側に、反フリー側より太いスポークを使う」というのがあります。
フリー側を2.0mmプレーン、反フリー側をCX-RAYにすると
スポークの重量比が100:65になります。
これはスポークの左右の総容積が100:65だということです。

G3組みでは同じ断面積のスポークが右:左で2:1の本数になっていますから、
これもスポークの左右の総容積で考えれば2:1です。
100:50ということなので、私の左右異径スポーク組みよりも
強烈にバランスの左右差が是正されます。

厳密には左右でスポークの長さが違うので、反フリー側のスポークを半分にすると
左右のスポークの総容積は75%きっかりになるというわけではありませんが、
概算なので気にしないでください。

あと、G3組みで左右ともにでスポークの断面積が同じなのはアルミスポークのモデルです。
スチールスポークのモデルによっては左右でスポークの断面積が違うという例もあります。
突っ込まれそうなので先に補足しておきます。

先ほども書きましたが、私はフリー側パラレル組みの左右バランスの是正効果を
大きく見ていません。フリー側パラレル組みはスポークの本数を2:1にするなど、
かなり強烈な(完組みにしかできない)専用設計あってのもの
だと思っています。
普通の32Hホイールでハチハチ組みから フリー側のみパラレルにしても、
効果は薄いと思っています。
手組みの場合は パラレル組みよりヨンパチ組みの方が良さそうです。

DSC01123amx.jpg
↑中心にスポークが来るようにテープを張り、テープの延長が接地した位置で
写真を撮りました。これがダフり角です。
ラジアル組みはF1とF2の合成であるF3の線上にあるのですが、
当然ながらダフり角はゼロです。

DSC01127amx.jpg
↑キシリウムの反フリー側タンジェント組みのF1スポークです。
ダフり角が正です。

DSC01128amx.jpg
↑続いてエウラスG3のフリー側パラレル組みのF1スポークです。
一見ラジアルに見えるスポークですが、接地面から見れば通常のタンジェント組みと
遜色ない正のダフり角になっているんですね。
あと、これはメガG3ではないのですが、メガG3のハブは何が違うのでしょうか。

DSC01120amx.jpg
散々このブログで書いてきたことですが、
フリー側のフランジ径が大きくなるとフリー側のスポークが短くなり
スポークの変形量が減り 硬いホイールになります。
更に、スポークの角度が反フリー側と近くなるので、
左右のスポークテンションの差も縮まります。
この方向から見れば、そんなとこでしょう。

DSC01121amx.jpg
実は、フランジ径が大きくなると
DSC01122amx.jpg
ダフり角も正方向に大きくなります!スポークの力を伝達する効率がさらに上がるということは
一言でいうなら「より走るホイールになる」ということです。

スポークの左右のテンション差を究極的に縮めるという考えがキシリウム組みで、
ペダリング踏力をタイヤが地面を蹴る力に究極的に高効率で変換するという考えが
G3組みといったところでしょうか。
G3組みにも欠点はあります。結果としてペアスポークの一種ではありますから、
均等かつ細やかな横振れ取りには対応していないという点です。
逆に言えばそれを捨てるだけでこれだけ色々と 普通のホイールにない特徴を
盛り込んでいるわけですから、総合的に見ればかなり良くできたホイールです。

最後に。ペアスポークのリムについて。
DSC01134amx.jpg
普通のリムを
DSC01135amx.jpg
切って
DSC01137amx.jpg
(位相を)ずらして
DSC01138amx.jpg
いるだけにすぎません。
これに合わせてハブのスポーク穴の位相も変えています。

私はこれにG3組みに匹敵するような理論上のメリットを見い出せません。

長かったですが、G3組み関係でまだまだ書くことはあります。
一区切り入れるにしても、ここまでは切るポイントがありませんでした。
後日 続きを書きます。

category: G3組みの話

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2012/12/14 15:19 | edit

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