のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

RD-6800-GS 脅威のメカニズム  

最近 11Sアルテグラのロングケージのリヤメカ、
「RD-6800-GS」ですごいなぁと感心したことがあるので
それについて書きます。
DSC07480amx3.jpg
その前に。
上の画像は私のバイクに付いている
何の変哲も無い(※)アテナのリヤメカです。

※ここは特にツッコミ待ちではないのでスルーしましょう

DSC07493amx3.jpg
シフトワイヤーを固定する位置ですが、
進行方向右側からリヤメカを見た場合
固定ボルトの奥側で留めてあります。
これを この記事中で今後「奥引き」と呼ぶことにします。

DSC07489amx3.jpg
↑次に、わざと間違って固定ボルトの手前側で
シフトワイヤーを留めてみました。
これを今後「手前引き」と呼ぶことにします。

奥引きと手前引きでは、アウター受け以降から固定ボルトまでの
シフトワイヤーの長さが ほんの少し違うわけですが、
たったこれだけの違いで間違ったほうは変速が合わなくなります。
実際にこれで変速操作をしたところ
2回目のシフト操作で全く合わなくなりました。

奥引きで設計されているリヤメカは奥引きで、
手前引きで設計されているリヤメカは手前引きで
ワイヤーを固定しないといけません。

DSC07486amx3.jpg
↑リヤメカを下から見ると こんな感じになりますが、
上の画像で色付きで描いている
アウター受けから固定ボルトまでのワイヤーの部分の長さを
この記事中では「ワイヤー長さ」と呼ぶことにします。

ワイヤー長さが少しでも変われば
一定量シフトワイヤーを引いた時に(レバーでシフト操作をしたときに)
リヤメカのパンタグラフが動く量も変わります。
なのでリヤメカのワイヤー長さと パンタグラフの辺の長さは
トータルで精密に考えられています。



DSC07513amx3.jpg
つづいて話が変わりますが、
これは世界初のSTIレバーと それに対応するリヤメカの

DSC07512amx3.jpg
ST-7400と
DSC07510amx3.jpg
RD-7402です。

この後に セカンドグレードの600アルテグラでもSTIレバーが出ますが、
ST-7400を出した後にシマノのほうで思うところがあったのか
STIレバーのシフト操作一回分のワイヤー巻き取り量を変えたので
(おそらくはストローク量を増やしてでも引きを軽くしたかった)
ST-7400とST-6400の間には互換性がありません。

DSC07504amx3.jpg
↑こういうことですね。
ついでに書いておくと、トップからセカンドの変速だけは
ワイヤーの巻き取り量が それ以外の変速よりも多くなっています。
このレバーの違いに対して、

DSC07515amx3.jpg
リヤメカではパンタグラフの長さを変える・・・のではなく
「ワイヤー長さ」を変えることで
STIレバーの巻き取り量と合わせて

DSC07516amx3.jpg
リヤメカの動作量(=対応するスプロケットの歯間距離)を
同じにしています。

これ以降のリヤメカは7900系まで 基本的に
「パンタグラフ長さ/ワイヤー長さ」の比率が同じです。
RD-7402だけが特異な比率になっています。
プーリーの幅など無視して乱暴に言えば、例えば
ST-7900とRD-6401で 10Sリヤ変速ができ、
ST-7800とRD-7700で10Sリヤ変速ができ、
ST-7700とRD-7800で9Sリヤ変速ができ、
ST-6400とRD-7900で8Sリヤ変速ができるということです。
レバーの段数に準拠するということですね。
上から2段目の赤字にしてある組み合わせですが、
7800系が出たばかりで供給が追いつかないときに
シマノドリ○キングの選手のバイクは だいたいこれになっていました。

ここで要注意なのは、例えば RD-7700とRD-7800では
パンタグラフの長さは同じではないということです。
ワイヤー長さのほうと合わせてトータルで同じ比率にしています。

このワイヤー長さについて、シマノのロード用のリヤメカで
過去にたった一度だけ 面白いことを公言していまして、

DSC07517amx3.jpg
↑ST-7400にRD-6402以降のリヤメカを使いたい場合、
上の図のBの引き方でワイヤーを固定すればOKとなっているのです。
この図のポジションBは冒頭の手前引きとは異なりますが、
手前引きだと思っていいです。つまり、
ST-7400×RD-7402奥引きと
ST-6400×RD-6401奥引きと
ST-7400×RD-6401手前引きは
シフト操作1回分の動作量が「同じ」だというわけです。
私の見立てではこの「同じ」は「完全に同じ」ではありません。
これを同じといっていいなら
現行のシマノ11Sとカンパニョーロ11Sのスプロケットの歯間距離も
「同じ」といっていいのでは、と思います。
まあ 今よりは変速に関してシビアではなかったことと
すでにST-7400を買ってしまったユーザーへの救済措置もあって
これを公言したのでしょう。

ついでに書いておくと、
10Sのレバーで RD-6401~7900のリヤメカで
ポジションBで引くと、シフト操作1回の動作量が
9Sに近似します。
こちらはメーカーの保証の限りではなかったと思いますが。

~前振り 終わり~

DSC06623amx3.jpg
本題です。
ここにRD-6800が2つありますが、
DSC06624amx3.jpg
↑左がロングケージのGS、右がショートケージのSSです。
これまでのシマノのロード用リヤメカでは、
SSとGSを2つとも出している場合は GSはフロントトリプル用でした。

DSC07494amx3.jpg
ケージを長くする理由について。
多段ギヤは 変速した前後ギヤの組み合わせによって
チェーンの長さが変わり、
前×後で22Sなら 22通りのチェーン長さがありえます。
このうち最も長いアウター×ローで
余裕のある長さにする必要がありますが、

DSC07496amx3.jpg
そこから最も短い組み合わせである
インナー×トップにかけたときに、
チェーンの下側と アッパープーリーが接触しないだけの
チェーンたるみ取り量が リヤメカに必要になります。
これがフロントダブルなら プーリーケージを
それほど長くしないでもいいのですが

DSC07497amx3.jpg
フロントトリプルになると さすがにプーリーケージを長くせざるを得ません。
上の図では52-42-30Tと書いていますが
これは7703系以外での シマノのフロントトリプルの歯数です。
フロント30Tに変速すると
チェーンの下側が直線を保てない(たるみが取りきれない)ので
プーリーケージを長くしないといけないのが 想像できると思います。

DSC07498amx3.jpg
ところが6800には フロントトリプルの仕様はありません。
RD-6800-GSは、
GS仕様のリヤメカが無い9000デュラエースに非対応な
ローギヤ30Tのスプロケットに対応しているという特徴があります。
9000と9070のリヤメカは28Tまで対応していますが、
チェーンのかかる約半周分で考えると
28Tと30Tは 1T(チェーン1リンク)の差しかありません。

なので フロントトリプルを想定していないRD-6800に
GS仕様が必要なのかどうか、というのが疑問でした。
現物を見るまでは。

DSC07499amx3.jpg
リヤメカのパンタグラフがストロークする角度のことを
「スラント角」といいますが、これはロードとMTBでずいぶん異なります。
ローギヤの最大歯数が大きいMTBのほうが
スラント角が深くなっています。

で、RD-6800の場合ですが

DSC06629amx3.jpg
↑SS
DSC06630amx3.jpg
↑GS
GSのほうがスラント角が深くなっています。
リヤメカ固定ボルトと パンタグラフの角度差を見てください。
全てのリヤメカが、調整ねじを結んだ線とスラント角が直行している
というわけではないですが
RD-6800の場合は 概ねそうなっているので
分かりにくければ 調整ねじの部分の角度で見てください。
ここがまず すごいのです。
今までのGSリヤメカは、SSとプーリーケージ以外に違いのない
「ケージを伸ばしただけの手抜き」だったのですが、
このGSはパンタグラフの部分から専用設計になっているのです。

DSC06632amx3.jpg
↑SS
DSC06633amx3.jpg
↑GS
どちらも裏側のプレートの銘は「RD-6800」になっているのですが、
これ、同じパーツではありません。
GSのほうがパンタグラフの支点間の距離が長いのです。

DSC06644amx3.jpg
↑SS
DSC06643amx3.jpg
↑GS
よーく見ると細部が異なるのが分かります。
パンタグラフが長くなると、

DSC07501amx3.jpg
同じ角度あたりの横移動量が増すので

DSC07502amx3.jpg
大きなローギヤに対して スラント角を深くしたときに
パンタグラフの移動可能量が足りないといったことが
起きないようにできます。

で、パンタグラフを長くしただけだと
当然 シフト操作に必要とするワイヤー巻き取り量も変わってくるので、
専用のSTIやスプロケットを用意しなければなりません、
ということは コスト的にありえませんから

DSC06634amx3.jpg
↑SS
DSC06635amx3.jpg
↑GS
冒頭で書いた「ワイヤー量」をパンタグラフの支点間の長さと合わせて
変えることで 対応しています。
SSとGSで 表側プレートの形状とワイヤー固定位置が全然違いますね。

DSC07524amx3.jpg
RD-9000系の機械式リヤメカの欠点として、トップギヤに変速したときに
シフトワイヤーがかなり折れ曲がるという点があります。
現在はここにライナーが標準で付いていますが、
ごく初期のRD-9000だけは付いていませんでした。
私は独断でライナーを付けていましたが
外径が かなり細いものが必要で、苦労したのを覚えています。
で、RD-6800-GSでは、ここの角度がさらに厳しくなるということで、

DSC06625amx3.jpg
DSC06626amx3.jpg
SSでは手前引きになっているところを、
DSC06627amx3.jpg
DSC06628amx3.jpg
GSでは奥引きに変更しています。

DSC06638amx3.jpg
↑SS(手前引き)
DSC06639amx3.jpg
↑GS(奥引き)
下から見比べるとこうなります。
GSが奥引きでなかったらかなり厳しくなるのが分かります。
あと、なるべくカメラとの距離を同じくして撮ったので
パンタグラフの長さの差も分かるかと思います。

まとめると、今までは SS仕様をロングケージにするだけだった
GS仕様が、RD-6800では
・スラント角を変えて
・パンタグラフの長さも変えて
・それに応じた「ワイヤー長さ」になるよう 固定ねじの位置を設定して
・さらにワイヤーの角度を気にして手前引きを奥引きにした
ということになります。
これがすごいのは、アルテグラは一番上のグレードではないということですね。
「まずデュラエースに採用して、
そこからグレードが下がるごとに仕上げと材質を変えていく」
ことで開発コストをペイするということができません。
ただ、ローギヤ30Tに対応するグレードとしては最上級ですから、
105やティアグラに順次 この寸法を採用すれば
報われるのかもしれません。

「ローギヤ30T仕様のロードバイク」が一般化するとは言わないまでも
増えてきてはいるようなので、
むしろ増やすために本気を出したのかもしれません。
そう、シマノの本気を見た気がするのです。

そもそもの発端はGSが奥引きになっていることに気付いたからですが。

あと、
「SS=短いパンタグラフ/短いワイヤー長さ」と
「GS=長いパンタグラフ/長いワイヤー長さ」で
比率が釣り合ったとしても
シフト操作のタッチの軽さは 同じにはならないはずなのですが、
それぞれ組み付けたフレーム側の条件
(インナーワイヤー内蔵仕様の有無や アウターの長さなど)が
違うので体感上の顕著な差は ありませんでした。

category: その他 機材の話

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