のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

アメリカンクラシックのリヤハブの話  

昨日のENVEの組み換えの記事について、
「アメクラのフランジ幅の狭さは
フランジ径の大きさとセットにして考えるべきのような気がするのですが」
というコメントをいただきました。
アメリカンクラシック(以下アメクラ)のリヤハブは
フランジ径の大きさを勘案しても とても擁護できない仕様なので、
それについて書きます。
DSC01600amx.jpg
その前に。
スポークの変形(たわみ)を2つの方向に分けて考えてみます。
ホイールとして完成した状態でスポークをたわませるとして、
1つは上の図のようにスポークを横から押してたわませた場合。

DSC01601amx.jpg
もう一つは同じ側のスポークを2本まとめて握ってたわませた場合。
前後方向のたわみです。
タンジェント組みなら交差している2本を握ることとします。

DSC01602amx.jpg
どちらにしてもスポークテンションを上げれば たわみは減りますが、
ハブフランジを大きくすることによっても たわみの軽減は狙えます。
(これはリム高が高くなっても同様です)
それだけならいいんです。
アメクラのリヤハブが擁護できないのは、
左フランジが内側に寄っているということです。
これによる損失を、ラージフランジであるということによって
取り戻せていません。


DSC01605amx.jpg
まず、前後方向のたわみについて。
スポークテンションをST
ニップルがリムを食い破ろうとする力をRK(RimをKuiやぶる)と
呼ぶことにします。
STが上がればRKも上がります。

DSC01608amx.jpg
さっきの図ではラジアル組みでしたが、
これはタンジェント組みですね。

DSC01609amx.jpg
タンジェント組みで交差している2本のスポークの引っ張り方向を
それぞれF1、F2とします。
F1、F2を合成した引っ張り方向は上の図のF3になります。
F3は2本のスポークの交点とハブの中心を結んだ線と重なります。

DSC01610amx.jpg
ラジアル組みというのは元々F3の線上でスポークを引っ張っているので、
引っ張り方向の角度的な損失がありません。

DSC01611amx.jpg
同じハブ、同じリムで
ラジアル組みとタンジェント組みで同じSTにした場合、
ラジアル組みの方がより高いRKになります。
同じRKにするなら、ラジアル組みの方が低テンションになります。

ちょっとアメクラの話から外れますが、
私のしているヨンロク組みやヨンパチ組みは
フリー側を(タンジェント組みではあるけれども)少しでもラジアル組みに近付けて
反フリー側のテンションを相対的に上げようというのが目的です。

DSC01612amx.jpg
↑先ほどまでのハブをラージフランジとして、
横にスモールフランジのハブを書き加えました。
フランジ径が小さいからと言って
十分なSTが得られないということはありません。

それよりは組み方(ラジアルかタンジェントか)の方が
STとRKの関係において大きな要素です。

DSC01613amx.jpg
同じSTであれば、ラージフランジの方が「スポークの交点にぎにぎ」に対して
よりたわみが少なくはなります。それは事実です。
しかし、「スポークの交点にぎにぎ」時の変形(たわみ)量を減らすのは
簡単です。STを上げればいいんです。
現実的な範囲(ハブがTniかデュラエースか、それともアメクラか)であれば
ホイール完成間近のニップル一回転か半回転くらいでも
前後方向のたわみを体感レベルで上げる、または下げることができます。
何が言いたいかというと、前後方向のたわみを減らすという点に関して
ラージフランジに大したメリットはない
ということです。

DSC01614amx.jpg
次に横方向のたわみについて。
ラジアル組みの(←左右同じ組み方なら別に何でもいいのですが、ラジアル組みが
想像しやすいと思って)前輪で考えてみます。
ハブフランジとリムを結んだ線がスポークになるわけですが、
ホイールの中心線とスポークの斜線の間にいくらかの角度があります。
これが鈍角であればあるほどスポークのたわみを少なくすることができます。

DSC01615amx.jpg
↑ラージフランジにしてみました。書き加えた赤い線がそうです。
中心線とスポークの角度がより鈍角になりました。
ということは、このホイールは先ほどのホイールよりも(STが同じなら)
より横たわみの少ない(横剛性が高い)ホイールだと言って間違いないです。

DSC01616amx.jpg
次に、ラージフランジにしつつフランジを内に寄せたハブで考えます。
図ではラージフランジにしたものの中心線とスポークの狭角が
最初のホイールよりも鋭角になっていますね。
ラージフランジ化によって前後方向のたわみは減るでしょうが、
それは先ほど書いたようにスモールフランジでも取り戻せることです。
ハブフランジが内側に寄ったという横剛性の損失は、
「ニップル締めといたから!」では取り戻せません。

では、角度だけに注目して このハブフランジの寸法のまま元々のホイールと同じ
スポークの角度になるまでフランジ径を大きくしてみたいと思います。

DSC01618amx.jpg
↑こうなりますね。
スポークの長さが短くなるので、中心線とスポークの狭角が同じといっても
これは元々のホイールよりもずっと硬くなります。
私の図はかなりデフォルメされているので この図の正確さは怪しいものですが、
以下Tniのエボリューションのリヤハブとアメクラのリヤハブで
実際の数値を入れて考えていきたいと思います。

DSC01619amx.jpg
↑このホイールの図のうち、
DSC01620amx.jpg
反フリー側の、さらに上側だけを拡大して見てみます。

DSC01621amx.jpg
まずはリムをENVEの1-45チューブラー、
ハブをTniエボリューションの場合から。

DSC01622amx.jpg
ENVEのリム内径の半径を275mmとします。
実は275.0mmというわけではないのですが、メシノタネコードに触れますので
275mmで計算することはご容赦ください。
それでも四捨五入の範囲程度でかなり実測値に近いのですが。
Tniのエボハブはホイール中心からフランジ外側までの幅が37mm、
ハブ軸中心からハブフランジの穴の中心までが20.35mmとします。

DSC01623amx.jpg
↑リム内径の半分からハブフランジ径の半径を引いた長さを 高さ、
ホイール中心からハブフランジ外側までの長さを 底辺とした
直角三角形が見えてきました。
斜辺の長さはラジアル組みのときのスポーク長さです。
今回はホイール中心とスポークとの狭角の話なので、これを計算すると
DSC01625amx.jpg
8.27°でした。
この図に分度器を当てたら30°でした(笑)。
図は適当ですが、角度の数値は正確です。

DSC01627amx.jpg
↑同じことをアメクラのリヤハブでもしてみます。

DSC01628amx.jpg
7.28°でした。
約1°の違いです。ホイール中心からハブフランジ外側までの長さは
Tniエボハブ比でマイナス6.1mmです。
これらの数値差、そうは見えませんがかなり大きいんです。
では、アメクラの左フランジ幅のままで Tniのエボハブの
ホイール中心とスポークとの狭角に追いつくためには
実際にハブフランジを何mmにすればいいのか
を計算してみます。

DSC01629amx.jpg
半径62.5mm、直径125mmになります。
ほんのちょっと(のつもりで)左フランジを寄せたことによる角度の損失を
取り戻すには 理論上これくらいのラージフランジが必要になるということです。
これは角度を同じにするという点にのみ注視しています。
本当にフランジ穴中心間125mmのフランジのハブがあったとすれば、
スポークが短くなる分Tniのエボハブよりもカッチリしたホイールにはなります。

DSC01630amx.jpg
ラージフランジ化を上の図のAの方向(垂直方向)でのみ行えば
重量増のデメリットに目をつぶっても 剛性上のメリットはあるかも知れません。
しかし、上の図のBの方向のようにハブフランジを中央に寄せた場合の
角度的な損失はちょっとやそっとのラージフランジ化では取り戻せません。
経験的にもアメクラのリヤハブでは横剛性を確保するのは難しいので、
やはりフランジ穴間66mm程度では 反フリー側のフランジを中央に寄せた
損失を取り戻しきれてはいないと考えられます。
冒頭にあるように「フランジ径の大きさとセットにして考え」てみたところ、
以上のようになるというのが私の考えです。

余談ですが、フロントハブのラージフランジというのは
ロードバイク用のハブとしては一般的には見かけません。
カップ&コーンのハブであればダブルナットをかけるだけのナットの横幅が必要です。
オーバーロックナット寸法100mmという幅の中で、
ナットとスペーサーの横幅以外の 残りの寸法いっぱいで なるべく広く
フランジ幅を設定したようなフロントハブがほとんどです。
カートリッジベアリングであっても、
カップ&コーンのハブと同じようなフランジ幅になっています。
フロントハブに関しては、フランジの左右間の幅は似たり寄ったりです。
その中で「よし、ウチはラージフランジにしてスポークのたわみを減らすぞ」という
メーカーがあまり見当たらないのは、
前後方向のたわみに関しては「ニップルを増し締めしたら簡単に取れるから」です。
先ほども書いたように、ラージフランジ化による貢献度の低い方向ですから、
重量増のデメリット以上のメリットを感じているメーカーがないのでしょう。
横方向のたわみに関しては、ほとんどのメーカーが可能な限り
フランジ幅をいっぱいに広くとっているので、ハブによる違いは少ないです。

DSC01631amx.jpg
DSC01632amx.jpg
↑このウッドマンのフロントハブはWナットをしなくていいという
カートリッジベアリングのメリットを最大に生かしている寸法です。賢い!
アメクラのフロントハブもフランジ幅は広めです。
フロントハブはいい子なんです。

category: ホイールの話

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2013/05/24 13:27 | edit

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