オチョコ量の話 
2013/01/24 Thu. 15:30 [edit]
ホイールを組むにあたってスポークの長さを計算する必要がありますが、
そのために必要な情報はリムのサポート長(タイヤの乗る面同士の長さ)・
ハブフランジ幅・ハブフランジ径の3つです。
今日は ハブフランジ幅のリヤの左右差について書きます。

まず、フランジ幅について。
フランジ幅というのは、フランジの外側から反対側の外側までの寸法のことです。
上の図、ハブ全体の中心から右のフランジ端までをR、
左のフランジ端までをLとしています。
余談ですが、これで出る計算上のスポークの長さはヌポークの長さです。
反ヌポークのスポークの長さは、厳密にはフランジの内側までの寸法で
計算しなければなりません。
実際はそこまでしなくとも、ニップルのねじ山の長さで吸収される範囲の差なので
ある片側のフランジから出るスポークの長さを2つ計算する必要はありません。

シマノのFH-6700を例にとります。
シマノのカタログ(後述します)ではFH-6700は
フランジ幅が59.2mm、
オチョコ量が8.9mmと書いてあります。

フランジ幅59.2mmというのは上の図でのLとRを足した数字ですね。
オチョコ量は8.9mmということなのですが、これはどこの数字なのでしょうか?
この2つの数字からLとRを求めないといけないのですが、
オチョコ量という単語の定義がはっきりしていないので、
じつはこの数字からだけでは求められません。
私は答えを事前に知っているので 答えから式を出すという逆の過程で
シマノのいうところの「オチョコ量」とは どの寸法なのかを
計算することができます。

その前に。フランジ幅(L+R)のちょうど真ん中の位置を書き加えておきます。
59.2mmの半分なのでフランジ幅の端から29.6mmの位置です。

「シマノのいうオチョコ量」とは、Lから29.6mmを引いた分の寸法のことです。
上の図の青い線の部分がそうです。

フランジ幅の半分は(L+R)/2ですが、
そこから「シマノのいうオチョコ量」を引いた数字がR、
足した数字がLになります。
計算自体はしやすいのですが、シマノがオチョコ量と呼んでいる8.9mm、
これってオチョコ量と呼んでいい数字なのでしょうか?

オチョコ量というのは、そもそもリヤの右側にたくさんの枚数のスプロケットを
付けなければならない都合上 フリー側のフランジを中央に寄せたことから
生まれた概念です。その場合フランジ幅は必ずL>Rとなり、
L-Rは正数になります。
この「L-R」がオチョコ量という単語の指す数字だと思うのですが。

で、このL-Rを計算します。LとRの答えが分かっているので
簡単に出ます。17.8ですね。

17.8mmというのは、「シマノのいうオチョコ量」のちょうど倍の寸法です。
シマノのいうオチョコ量は、(L-R)/2ということです。
「オチョコ量」という単語の指す意味が(L-R)でも(L-R)/2でも
定義している範囲が分かれば あとは計算するだけなのでどっちでもいいのですが、

↑シマノは2011年までRとLの寸法そのものを表記していました。
(上の表の20.7/38.5というのがそれです)

↑これは2013年のカタログですが、
2012年からはフランジ幅と(自称)オチョコ量の表記に変わっています。
(上の表の59.2と8.9というのがそれです)
なんでこんなややこしい表記にしたのでしょうか。
オチョコ量が大きいほどスポークテンションの左右差は
増大しますが、右フランジ幅が同じならフランジ幅が広いということなので
ホイールの横剛性は上がります。
スポークテンションの左右差は組み方次第で取り戻せるけども
フランジ幅の狭さが生む横剛性の無さはどうしようもない、
というのは再三書いてきたことです。
基本的にはオチョコ量の大きいリヤハブが良いと思います。

FH-9000ではオチョコ量がFH-6700の8.9mmに対し
9.75mmと増えていますね。単純に見れば歓迎される要素ですが、
実際のRとLの幅を計算してみます。

↑実際にはFH-6700の方が左フランジが広いんですね。

↑このフリー側18.7mmというのが曲者です。
10Sまでは だいたいどのハブでも21mm前後なのですが、
11S化のためにフリー側のフランジを2mmほど詰めているので
見かけ上のオチョコ量が増えているだけで
フランジ幅は狭くなっています。
これを見えにくくするためにRとLの数字を直接表記するのではなく
フランジ幅と(自称)オチョコ量という表記に変更したとみるのは邪推でしょうか。

それとは別件ですが、FH-7900のハブは28Hのみ
右フランジが0.4mm狭くなっています。
0.4mm狭くすることに合理的な理由が感じられませんが、
もうひとつ不思議なのは24Hは32H・36Hと同じ寸法で、
28Hだけがこうなっているということです。

これも推測ですが、ハブ体を作るときに
「ハブ体を作る」→「後日 任意の数の穴をあける」ではなく

「ハブ体を作るときに穴まであけてしまう」という
工程なのではないでしょうか。
で、28Hのハブ体を作るときにフリー側だけ0.4mm分
他の穴数とちがう寸法のハブ体を大量に作ってしまったのではないのかと。
大量のハブ体を作り直すよりは、カタログにその旨 明記して
ペイするということではないでしょうか。

FH-9000も28Hだけ違いますね。
フランジ幅56.5mm、(自称)オチョコ量9.95mmということですが、
計算すると
FH-9000(28H)は R=18.3mm、L=38.2mmです。
FH-9000(28H以外)はR=18.7mm、L=38.2mmですから、
「FH-7900のハブ体の仕上げを変えて11Sフリーを付けたもの」が
FH-9000の正体のようです。

↑これはシマノのハブの寸法をまとめた資料のうち、
デュラエース・アルテグラ・105について抜粋したものです。
7900時代のものまでなのでちょっと古いですが、
フランジ幅の広さではなく 左フランジの張り出し具合を以って
「横剛性が高いハブ」というのを判断したくて探したものです。
全体図はPDFです。詳しくは→こちら
リンクを張ったのは一応1次資料というかシマノの公式的なものだと
示したかったからです。そのうちリンクが切れるかもしれないので画像として
取り込んだのが上の画像です。
これ、なかなかイカレてます。
・FH-7900のフランジ幅が左右逆
L=20.15mm、R=36.35mmとなっていますが、そんなわけないですね。
・FH-7900とHB-7900のフランジ径がおかしい
FH-7900が左52.8mm、右53.8mmで
HB-7900が左右とも48.4mmということですが、
これはデュラエースのピストハブのラージフランジと
ロードハブとの中間ぐらいの数値です。ありえません。
・アルテグラハブと思われていたFH-6500がデュラエースのグループにある
新事実です。
・105ハブ 5500とその後継モデル5501は
ハブ寸法こそ違いますが、
HB-5500(207g)→HB-5501(148g)、
FH-5500(286g)→FH-5501(348g)という
重量になっています。
調べたところ、正しくは5500もフロント148g、リヤ348gでした。
ツッコミどころが多いのでこれを信用せずに、信頼できる数値の載ったカタログから
ハブのフランジ幅を抜粋したいと思います。

↑デュラエース

↑アルテグラ

↑105

右フランジ幅20mm以上で 左フランジ幅38mm以上になるのは
上の図にある3つです。
このうち、FH-6600は24H、28Hも出していたという
素晴らしいハブだったのですが、
ほぼ同じ寸法のFH-6700では32Hと36Hのみの展開になりました。
のむラボホイール33号は6700ハブでいこうと考えています。


↑FH-6700の説明書はFH-6600のコピペなのか、
24Hと28Hの表記を消し忘れていますね。腹立つなー。
FH-6700に24Hがあれば10個でも20個でも買うんですけど。
穴数の展開はともかく、
FH-6700はシマノ史上 最も左フランジが張り出しているリヤハブ
のひとつだということが書きたくて色々調べていた次第です。
そのために必要な情報はリムのサポート長(タイヤの乗る面同士の長さ)・
ハブフランジ幅・ハブフランジ径の3つです。
今日は ハブフランジ幅のリヤの左右差について書きます。

まず、フランジ幅について。
フランジ幅というのは、フランジの外側から反対側の外側までの寸法のことです。
上の図、ハブ全体の中心から右のフランジ端までをR、
左のフランジ端までをLとしています。
余談ですが、これで出る計算上のスポークの長さはヌポークの長さです。
反ヌポークのスポークの長さは、厳密にはフランジの内側までの寸法で
計算しなければなりません。
実際はそこまでしなくとも、ニップルのねじ山の長さで吸収される範囲の差なので
ある片側のフランジから出るスポークの長さを2つ計算する必要はありません。

シマノのFH-6700を例にとります。
シマノのカタログ(後述します)ではFH-6700は
フランジ幅が59.2mm、
オチョコ量が8.9mmと書いてあります。

フランジ幅59.2mmというのは上の図でのLとRを足した数字ですね。
オチョコ量は8.9mmということなのですが、これはどこの数字なのでしょうか?
この2つの数字からLとRを求めないといけないのですが、
オチョコ量という単語の定義がはっきりしていないので、
じつはこの数字からだけでは求められません。
私は答えを事前に知っているので 答えから式を出すという逆の過程で
シマノのいうところの「オチョコ量」とは どの寸法なのかを
計算することができます。

その前に。フランジ幅(L+R)のちょうど真ん中の位置を書き加えておきます。
59.2mmの半分なのでフランジ幅の端から29.6mmの位置です。

「シマノのいうオチョコ量」とは、Lから29.6mmを引いた分の寸法のことです。
上の図の青い線の部分がそうです。

フランジ幅の半分は(L+R)/2ですが、
そこから「シマノのいうオチョコ量」を引いた数字がR、
足した数字がLになります。
計算自体はしやすいのですが、シマノがオチョコ量と呼んでいる8.9mm、
これってオチョコ量と呼んでいい数字なのでしょうか?

オチョコ量というのは、そもそもリヤの右側にたくさんの枚数のスプロケットを
付けなければならない都合上 フリー側のフランジを中央に寄せたことから
生まれた概念です。その場合フランジ幅は必ずL>Rとなり、
L-Rは正数になります。
この「L-R」がオチョコ量という単語の指す数字だと思うのですが。

で、このL-Rを計算します。LとRの答えが分かっているので
簡単に出ます。17.8ですね。

17.8mmというのは、「シマノのいうオチョコ量」のちょうど倍の寸法です。
シマノのいうオチョコ量は、(L-R)/2ということです。
「オチョコ量」という単語の指す意味が(L-R)でも(L-R)/2でも
定義している範囲が分かれば あとは計算するだけなのでどっちでもいいのですが、

↑シマノは2011年までRとLの寸法そのものを表記していました。
(上の表の20.7/38.5というのがそれです)

↑これは2013年のカタログですが、
2012年からはフランジ幅と(自称)オチョコ量の表記に変わっています。
(上の表の59.2と8.9というのがそれです)
なんでこんなややこしい表記にしたのでしょうか。
オチョコ量が大きいほどスポークテンションの左右差は
増大しますが、右フランジ幅が同じならフランジ幅が広いということなので
ホイールの横剛性は上がります。
スポークテンションの左右差は組み方次第で取り戻せるけども
フランジ幅の狭さが生む横剛性の無さはどうしようもない、
というのは再三書いてきたことです。
基本的にはオチョコ量の大きいリヤハブが良いと思います。

FH-9000ではオチョコ量がFH-6700の8.9mmに対し
9.75mmと増えていますね。単純に見れば歓迎される要素ですが、
実際のRとLの幅を計算してみます。

↑実際にはFH-6700の方が左フランジが広いんですね。

↑このフリー側18.7mmというのが曲者です。
10Sまでは だいたいどのハブでも21mm前後なのですが、
11S化のためにフリー側のフランジを2mmほど詰めているので
見かけ上のオチョコ量が増えているだけで
フランジ幅は狭くなっています。
これを見えにくくするためにRとLの数字を直接表記するのではなく
フランジ幅と(自称)オチョコ量という表記に変更したとみるのは邪推でしょうか。

それとは別件ですが、FH-7900のハブは28Hのみ
右フランジが0.4mm狭くなっています。
0.4mm狭くすることに合理的な理由が感じられませんが、
もうひとつ不思議なのは24Hは32H・36Hと同じ寸法で、
28Hだけがこうなっているということです。

これも推測ですが、ハブ体を作るときに
「ハブ体を作る」→「後日 任意の数の穴をあける」ではなく

「ハブ体を作るときに穴まであけてしまう」という
工程なのではないでしょうか。
で、28Hのハブ体を作るときにフリー側だけ0.4mm分
他の穴数とちがう寸法のハブ体を大量に作ってしまったのではないのかと。
大量のハブ体を作り直すよりは、カタログにその旨 明記して
ペイするということではないでしょうか。

FH-9000も28Hだけ違いますね。
フランジ幅56.5mm、(自称)オチョコ量9.95mmということですが、
計算すると
FH-9000(28H)は R=18.3mm、L=38.2mmです。
FH-9000(28H以外)はR=18.7mm、L=38.2mmですから、
「FH-7900のハブ体の仕上げを変えて11Sフリーを付けたもの」が
FH-9000の正体のようです。

↑これはシマノのハブの寸法をまとめた資料のうち、
デュラエース・アルテグラ・105について抜粋したものです。
7900時代のものまでなのでちょっと古いですが、
フランジ幅の広さではなく 左フランジの張り出し具合を以って
「横剛性が高いハブ」というのを判断したくて探したものです。
全体図はPDFです。詳しくは→こちら
リンクを張ったのは一応1次資料というかシマノの公式的なものだと
示したかったからです。そのうちリンクが切れるかもしれないので画像として
取り込んだのが上の画像です。
これ、なかなかイカレてます。
・FH-7900のフランジ幅が左右逆
L=20.15mm、R=36.35mmとなっていますが、そんなわけないですね。
・FH-7900とHB-7900のフランジ径がおかしい
FH-7900が左52.8mm、右53.8mmで
HB-7900が左右とも48.4mmということですが、
これはデュラエースのピストハブのラージフランジと
ロードハブとの中間ぐらいの数値です。ありえません。
・アルテグラハブと思われていたFH-6500がデュラエースのグループにある
新事実です。
・105ハブ 5500とその後継モデル5501は
ハブ寸法こそ違いますが、
HB-5500(207g)→HB-5501(148g)、
FH-5500(286g)→FH-5501(348g)という
重量になっています。
調べたところ、正しくは5500もフロント148g、リヤ348gでした。
ツッコミどころが多いのでこれを信用せずに、信頼できる数値の載ったカタログから
ハブのフランジ幅を抜粋したいと思います。

↑デュラエース

↑アルテグラ

↑105

右フランジ幅20mm以上で 左フランジ幅38mm以上になるのは
上の図にある3つです。
このうち、FH-6600は24H、28Hも出していたという
素晴らしいハブだったのですが、
ほぼ同じ寸法のFH-6700では32Hと36Hのみの展開になりました。
のむラボホイール33号は6700ハブでいこうと考えています。


↑FH-6700の説明書はFH-6600のコピペなのか、
24Hと28Hの表記を消し忘れていますね。腹立つなー。
FH-6700に24Hがあれば10個でも20個でも買うんですけど。
穴数の展開はともかく、
FH-6700はシマノ史上 最も左フランジが張り出しているリヤハブ
のひとつだということが書きたくて色々調べていた次第です。
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2013/04/02 18:37 | edit
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