のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

24Hリムを36Hハブで組みました  

お客さんから 内装変速リヤハブの小径ホイールをお預かりしました。
DSC00797amx6.jpg
これのリムを交換してほしいということです。
組み換え後のリムはALEXRIMSのDA16ですが、
シングルウォールリムからダブルウォールリムになるので
強度の面でも ニップルが原因のパンクが無くなるという面でも
メリットがあります。

DSC00798amx6.jpg
ハブはスターメー・アーチャーのスプリントというモデルで
36HロクロクJIS組みになっています。
ここで問題がありまして、組み換え希望で持って来られたリムが24Hなのです。

36Hハブで24Hリムが組めるか?という話なのですが
「ちゃんとしたもの」には なりません。
どういうことなのかは これから書いていきますが、

DSC00795amx6.jpg
まずは ホイールの展開図から。
今回はハブ~リム~ハブ型にしました。

DSC00814amx6.jpg
このようになります。
90°の部分で切ると中途半端なので180°にしました。
これの2回反復分で360°です。

36Hから24Hは 穴数が3分の2になるので、
ハブの3穴から2穴を使う形になります。
なので上の図では「3本組み1クロス」になっています。
組めるかどうかの確認と、位相ずれを調べるだけなら
タンジェント組みは1クロスで表現して問題ありません。
2クロス以上になると さっと描くのが面倒だからです。

いま「位相ずれ」と書きましたが、今回は これが起きています。

DSC00816amx6.jpg
交差しているスポークをそれぞれA・Bとします。
計算すると、
Aのスポークは 展開図上では ハブの5°とリムの37.5°を結んだ線分になります。
同様にBのスポークは ハブの45°とリムの7.5°を結んだ線分です。
ハブから、展開図の平行線と直交する破線を書き足しました。
これは、ラジアル組みのスポークの軌道になります。
リムの線を直角三角形の底辺とすると、Aの底辺は差し引き32.5°の長さ、
Bの底辺は差し引き37.5°の長さになります。
底辺の長さが異なるということは、斜辺の長さ(=スポークの長さ)も異なるわけで
スポークAよりも スポークBのほうが長いということになります。
また、斜辺の角度が ラジアル線に より近いスポークAのほうが
ラジアル組みに近いということになるので
スポークテンションはAのほうが低くなります。

これについては 別件でいずれ書くかと思いますが、
こういう場合にAのほうのスポーク比重を小さくすることで
スポークテンションのバランスを取ることは理論上は可能です。
ただ、現実的には 安定供給されるスポークは
スポーク比重100%と85%と65%の3種類程度なので
狙って ちょうどのバランスにするのは無理です。

DSC00819amx6.jpg
左右同本組みするとして、反対側の交差でも同じことが起きているので、
タンジェント組みの最終交差左右セット4本のうち 真ん中の2本(A)は
縦横振れを取り切った状態で 相方のスポーク(B)より
スポークテンションが低くなる、ということになります。

さらに、今回のハブはオチョコがあるので
都合4種類のスポーク長さが必要になります。

これが位相ずれ問題です。


ここまでの図では、ハブのお休み位相を中心にして
3本組み1クロスとしているわけですが、
現実には2クロスで組みたいところです。
24Hハブ24Hリムであれば4本組みになりますが、
36Hハブ24Hでは5本組みになります。

それを図で描くと
DSC00820amx6.jpg
↑これはまだ 3本組み1クロスで・・・

DSC00821amx6.jpg
5本組み2クロスは こうなります。

DSC00822amx6.jpg
お隣さんを追加

DSC00830amx6.jpg
さらに追加
スポークがハブからリムまで届く間に 2回の交差があります(2クロス)。

DSC00831amx6.jpg
ここで重要なのが、この展開図は始めから
奥の(図でいうと上側の)お休み位相のハブ穴から覗いて
手前(図でいうと下側)のお休み位相のハブ穴が
右にずれた位置関係になっている、ということです。

仮に これを「右休み」と呼ぶことにします。

DSC00832amx6.jpg
右休みで 反対側も5本組み2クロスにしました。

DSC00833amx6.jpg
右休みの場合、左右タンジェント組み4本1セットのスポークが
バルブ穴をまたぐことはありません。

DSC00834amx6.jpg
↑左休みの場合、バルブ穴が かっこ悪い位相に来ます。

DSC00799amx6.jpg
片側のみ仮組みしました。

DSC00800amx6.jpg
実は、この時点ではまだ 位相ずれは起きていません。
お休み穴のラジアル線上に最終交差があります。

あと、反ヌポークのスポークヘッドを見ると分かりやすいのですが
同じ反ヌポークのスポークヘッドは 3つ隣になります。
これを覚えておいてください。

なぜ まだ位相ずれが起きていないのかというと、
DSC00839amx6.jpg
それは「36Hハブで18Hリムを組む場合」で簡単に説明できます。
(この図は冒頭と違いリム~ハブ~リム型です。ご注意ください)

上の図ではまだ 18Hハブと18Hリムなので、
DSC00840amx6.jpg
このように
DSC00841amx6.jpg
過不足なく(←当たり前ですが)
ハブ穴とリム穴がスポークでつながります。

DSC00843amx6.jpg
ハブを36Hにしました。
穴数が倍になりますが、ハブの線上でいうと
18Hのときに右左右左右左・・・の位相にあった穴は全て右穴となり、
その中間に左穴が発生します。
左穴は赤で描きました。

DSC00844amx6.jpg
右側のラジアル組み「だけ」を通すと こうなりますが、

DSC00846amx6.jpg
左側は位相ずれが起きます。

DSC00847amx6.jpg
そこからスポークテンションを上げていくと、
先ほどの図の右0本ラジアル組みと 左0本位相ずれ組みで
左右のずれが平均化して このようになります。

ここから、ハブの線より下側(右リム)を 上に向かって折り畳むと

DSC00848amx6.jpg
こうなります。

DSC00850amx6.jpg
それをホイールの図に戻すと こんな感じです。
左右とも0本組みなのに、スポークの軌道が
それぞれ逆の向きに絞ったように少しそれているため
厳密な意味でのラジアル組みではありません。
この状態のホイールが「ちゃんとしたもの」と言っていいのなら
今回の36Hハブ24Hリム組みも ちゃんとしたものと言えるわけですが、
私は そうは思いません。

で、片側のみの仮組みでは
36Hハブ18Hリムの0本組みが ラジアル組みであったように、
36Hハブ24Hリムの片側のみの仮組みも
位相ずれを まだ起こしていないということです。

DSC00824amx6.jpg
反フリー側の長さになる予定のスポークを、5本組みで通してみました。
両方ともヌポーク通しなのは、仮に通すだけなら こっちのほうが楽だからです。
先ほど「反ヌポークのスポークヘッドが次に来るのは3つ隣」と書きましたが、
これは5本組み位相が3つ存在していて、4つめからは1つめと同じ位相となり
ループしているということです。
3つの位相のうち スポークを突き合わせた先端が
フリー側のリム穴に最も近くなる位相が、
最も位相ずれが少ないということになります。

DSC00827amx6.jpg
位相その1

DSC00826amx6.jpg
位相その2

DSC00828amx6.jpg
位相その3

位相その1か その3、どっちでも良さそうですね。
しかしこれは 先ほど書いた右休み左休みの違いです。

DSC00809amx6.jpg
反フリー側のスポークを通しました。

DSC00810amx6.jpg
左休みになっているので

DSC00813amx6.jpg
バルブ穴は ここです。
見せようと思ってやったのではなく 不覚にもナチュラルにやらかしました。

なお、穴振りを正リムではなく 逆リム扱いして組めば
バルブ穴の位置を変えられますが
このリムの内周側の穴は 明確に正リム穴振りがあるので それはできません。

DSC00835amx6.jpg
組めました。

DSC00836amx6.jpg
左右とも5本組み2クロスなので ヨンヨン組み相当です。
左右異本組みをしよう、とは思いませんでした。
このハブ、オチョコがありますが その左右差は
現行の平均的な11Sフリーハブの ちょうど半分くらいです。
なので左右同本組みでも極端なテンション差はありません。
それよりも「左右4本セットのうちの真ん中2本がヌルい問題」のほうが深刻です。
これは、真ん中2本がゆるみを起こしにくいほど張ったうえで
(ということは端の2本はもっとキンキンに張ることになりますが)、
さらに ちょっと強めのねじ止め剤を使うことで、
ゆるみを防ぐことができると思います。

DSC00838amx6.jpg
↑奥のフランジの休み穴から見て右休みです。
休み穴からのラジアル線上に最終交差が来ていないということは、
位相ずれを起こしているということです。

DSC00851amx6.jpg
↑正リム扱いで バルブ穴ずれを起こしていません。

DSC00852amx6.jpg
ところで、冒頭から当たり前のように
3本組み1クロス・5本組み2クロスと「奇数本組み」をしていますが、
フランジ穴3つのうち2つを選ぶわけなので
2本組み1クロス・6本組み2クロスなどの「偶数本組み」も可能です。
最終交差の根元のフランジ穴から出たスポークが
お休み穴に向かうのが
3本組み1クロスと 6本組み2クロス(上の図 )、
お休み穴に背を向けるのが
2本組み1クロスと 5本組み2クロス(上の図 )です。

DSC00823amx6.jpg
↑一応 思いついてたという証拠

で、位相ずれを起こすので 36Hハブ24Hリム組みは
ちゃんとしたものにならない!と言いながら
今回組んだ理由ですが、
お客さんが リムをすでに買ってしまったからです。
で、何とかしてくれと言われたからです。

ところで、ちょっと調べたら 同じようなことを前に書いてました(→こちら)。

category: 位相の話

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