のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

反フリー側ラジアル組みの話 その1  

私の組んでいるホイールで、
左右異径スポーク仕様や結線ハンダ付けに関しては
実は私自身でも100%説明しきれない部分があります。
ただ、私または私のホイールを使った方の経験上で
良しとされたものを残していくと
現行ではそうなったということです。

のむラボホイール成立以前に推論と実践をそれなりに重ねたつもりなので
当店が出来てからの のむラボホイールの仕様に大きな変節はありません。
さきほど「今のラインナップは最適解かも知れないけれど、よりよい別解があるかも」
というようなコメントをいただきました。確かにそうです。
可能性はあります。

しかしその私でも確実に「これはあかんやろ」と言えるのが
反フリー側ラジアル組みです。

DSC02683amx.jpg
もともと左右のスポークテンション(以下ST)に差があるのに、
DSC02684amx.jpg
それをさらに広げようというのが反フリー側ラジアル組みです。
これはスポークテンションゲージ上での変形量(見かけ上のST)でもそうですし、
そこから概算される真のSTでもそうです。
真のSTは疑似的なRK(ニップルがリムを食い破ろうとする力)でもありますので、
RKの左右差が最もひどくなる組み方とも言えます。

反フリー側ラジアル組みのホイールでは、反フリー側のスポークは
フリー側に対して釣り合うとは思えないほど低テンションです。
タンジェント組みであれば、低テンションのスポークがたわむと
(編んでいれば)交点で異音がするので気が付きますが、
ラジアル組みはスポーク同士の接触がないので そういう理由で
「実は弱いホイールなんだ」とばれることはありません。
空力的にはタンジェント組みよりも有利、という意見もありますが
それが分かる速度でどれほどの時間 走るのかという疑問はあります。
それが分かるくらいの速度を自分の足で出せる人は、
まずホイールの空力よりも剛性を気にすると思われます。
誰でも(脚力がなくても)ホイールの空力を感じることができる状況は
下りですが、空力のために コーナーでよれてもいいというなら
反フリー側ラジアル組みがオススメです。

とはいえ、反フリー側ラジアル組みでも仕方ない、
または一応 擁護できる条件というのが私なりにはあります。
3つほどあるのですが、どれも手組みホイールではまず無理なもの揃いなので
手組みホイールでは反フリー側ラジアル組みをしない方がいいのでは、
と考えています。

条件その1 2:1組みである
DSC02685amx.jpg
16Hのラジアル組みの前輪を考えてみます。
左右のスポーク本数が同じで、リムがセンターにあれば
左右のスポークテンションの総和も同じということです。

DSC02686amx.jpg
片側のスポークのうち、等間隔な2本に1本が間引かれました。
それでいてリムはセンターになければなりません。
片側8本で引っ張っていたスポークテンションの総和を
今度は4本で引くことになります。
スポーク1本当たりにかかる力は単純に言えば倍ですね。
そうでなくとも、2:1の 1側のスポークのテンションが
増大するのは確かです。
これは前輪ですが、後輪で この1側を反フリー側にすれば、
ラジアル組みでもいいような気がしてきます。

DSC02687amx.jpg
↑これは2:1というよりG3組みですが、カンパニョーロのG3組みホイールを
精査すると 左右のスポークテンションが非常に近いんです。
反フリー側がフリー側の90%を超えています。
これはG3の2:1スポーク数だけでなく、超ハイローフランジなど
他の要素も混ざり合っての結果ではありますが、
DSC02688amx.jpg
もしG3の反フリー側がタンジェント組みなら、
スポークテンションの左右逆転が起きると思われます。

これは超ハイローフランジもあってのことですが、そうでなくとも
2:1組みでは反フリー側はラジアル組みのほうがむしろ良い
とすら考えられます。

反フリー側ラジアル組みというのは、私から見て
ホイールの理屈において擁護すべき点があまり見当たらない
シマノホイールでさえも これまで一度たりとも手を出さなかった組み方です。
現行の9000系は反フリー側ラジアル組みですが、あれは
OPTBALRIGINAL ATEN Y ROVALの略?)
で2:1組みの一種なので問題ありません。


条件その2 十分なハイローフランジである
OPTBALと フルクラムの2:1との決定的な違いはここです。
十分なハイローフランジであれば 反フリー側をラジアル組みで組むことによる
スポークテンションの左右差を多少は緩和できるはずです。
DSC02619amx.jpg
↑これは私のリヤ12Hシャマルとリヤ16Hシャマルですが、
DSC02620amx.jpg
DSC02624amx.jpg
↑これくらいのハイローフランジであれば、まあ一応 反フリー側ラジアル組みを
容認してもいいのではないかと(私が勝手に)思うのです。
特にシャマル12などは完組みホイールの草創期あたりから
すでにこんなハブ形状をしています。なぜかというと、
こうしないとちょっと苦しいということが初めから分かっていたからです。
手組みホイールで反フリー側ラジアル組みをするなら、
最低でもこれくらいのハイローフランジ具合ではあってほしいのですが、
首折れスポークでこれくらいのハイローフランジのハブはまずありません。
(ストレートスポークならあります)

DSC02204amx.jpg
現行のホイールでこれをしているのは、例えばイーストンがそうです。
左右同径フランジで反フリーラジアル組みをするほどアホではありません
と考えると
DSC02682amx.jpg
Tniのエボリューションハブ程度のハイローフランジでは
反フリーラジアル組みが容認されるほどではないと思われます。
これでも左右同径フランジのハブと比べて
ホイールを組む感触に現れるくらいの
ハイローフランジの恩恵を感じはしますが、
それほど大きなものではありません。
(でもそのちょっとが大事)

DSC01559amx.jpg
↑アメクラハブで左右CX-RAY、反フリー側ラジアル組みのホイールを
Tniのヨンロク組みに組み換えてというのをこれまでに数件お預かりしました。
フランジ幅の狭いハブは「スポークテンション上げたから!」が
横剛性にあまり変換されないという欠点がありますが、左右のSTはかなり近くなります。
それをわざわざ反フリー側ラジアル組みで崩しているのが上の画像の組み方です。
持ってこられるこのホイールのほとんどが
フリー側のSTをリムの閾値寸前まで上げていますが、
そうでもしないと反フリー側が十分なSTにならないから
そうせざるを得ないだけです。
しかしフリー側のSTをどれほど上げようが
フランジ幅の狭さによる横剛性の無さを
カバーすることは出来ません。


今から書くことは今日の話とは脱線しますが、
「ある人にとって剛性が低いと感じないホイールは、
その人にとって100%を超えていると表現する」とします。
AさんとBさんで体重や乗り方が違えば、
ある同じホイールを弱いと感じない100%というラインは当然異なります。
Aさんのほうがパワーも体重もあったとすると、
Bさんがギリギリ問題なく使えると感じる100B%のホイールも
Aさんにとっては80A%かも知れないということです。
また、Aさんにとっての100A%のホイールは
Bさんにとってはだいたい125B%になるということです。

私の考えでは「ある人にとって剛性が100%以上のホイールであれば
それが110%でも130%でも必要十分という意味では同じ」だと思うのです。
ひたすらSTが高いホイールを組めばいい、という考えは幼稚で危険です。
STを必要以上に上げれば スポークの首飛びリスクが上がります。
ある人にとって110%のホイールを130%にするのに、
ホイールの寿命を縮める必要があるのかどうかが疑問なのです。
誰のホイールを組むにしてもリムの許容テンションすれすれで組むというのなら、
完組みホイールと同じではないでしょうか。
それはお客さん(乗り手)を見ていない自己満足です。


あるいは「いや それはちょっと違うやろ」というツッコミを承知で書きますが
ホイール体の変形量が少ないほど走る!というならタイヤの空気圧も
常に限界付近のパンパンで乗ればいいんです。

脱線終わり



条件その3 スポークの素材が特殊である
DSC02689amx.jpg
例えばR-SYSのスポークですが、
これは通常のスチールスポークのような曲げや伸びを示しません。
ということは、普通のホイールの理屈を以って考えてはいけないということです。
また、R-SYSとは全く違いますが、ライトウェイトのホイールも
スチールスポークと同列に考えてはいけません。
そしてこれらも明らかに通常の手組みホイールでは達成しえない条件です。


条件1の2:1組み、手組みホイールでも不可能ではないですが
反フリー側のスポークがリムに及ぼすRKを考えると
それ用に設計されたリム以外ではしない方が無難です。
DTの585ならいける、と言われてもそんな重いリムならいいや、となるでしょう。
(いや、DTの585でも私は売り物の手組み2:1組みホイールを組みませんが)

条件2のエボリューションハブ程度のハイローフランジでは
反フリー側ラジアル組みにはちょっと・・・という件ですが、
これは「組んで」と言われればお断りはしないです。
乗り手にとって危険というわけではないからです。
横方向にぬるいホイールが欲しいという方にオススメです。

条件3は手組みホイールの材料ではまず無理ですね。
こういうのが特殊設計の完組みホイールのいいところです。

以上が私の「反フリー側ラジアル組み」に対する考えです。

category: 反フリー側ラジアル組みの話

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