のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

経年使用によるセンターずれと ニップル1回転当たりのリムの横移動量について  

組んだときに間違いなく センタードンピシャであったはずの後輪が、
1年間とか数千kmくらい使ったあとで点検すると
ほんのうっすら リムがフリー側に寄っている、という現象が起きることは
経験的に分かっていました。
スポークのねじ山からニップルがゆるんだ、
というのは もちろん除外しての話です。

経年使用でずれるのは、厳密には「後輪」ではなく
「オチョコがあるホイール」です。
なので、両切りのピストの後輪は ずれず、
ディスクブレーキ仕様の前輪は ずれるということになります。

といってもディスクの前輪では、オチョコ量が少ないためか
実際に 明らかなずれを観測したことはありません。

もし両切りピストの後輪で 片側のギヤのみを使い続けたときに
センターずれが出るようであれば、
ドライブトレインの動作によるストレスも原因だということになりますが、
これも経験上 有意な観測結果はありません。

DSC007495amx8.jpg
↑これは、私が組んだR450リムの後輪を
オープンプロに組み直した件のときに、
後輪をバラすついでに ある実験をしたものです。
画像のデータによれば撮影日は2016年2月13日で、
約2年前ですが そのときからこの記事を書こうと思っていたのです。
ちなみに この件です(→こちら)。
のむラボホイール5号の32Hリムが当時 欠品していたので、
オープンプロの32Hで組み換えています。

実験というのは、
センタードンピシャ横振れ無しの状態で
フリー側のセンターゲージの位置を採り、
それから左右のニップルを きっかり1周ゆるめて
再びフリー側にセンターゲージを当てると
どうなるのか?というものです。

DSC007496amx8.jpg
こうなりました。
フリー側で当てたのは、実験の結果を知っていたからです
(ハブ側のすき間を撮りたいので)。
ニップルをきっかり1周ゆるめた、といっても
厳密に狂いなく360°ずつでは無いでしょう。
358.2°のところもあれば360.9°のところもあるかもしれません。
が、ほぼ360°になるよう かなり気を遣って回しました。
実は、横振れさえなければ 少々センターがずれていてもいいですし
リムがオフセットリムでも構わないのですが(R450は違う)、
一応 非オフセットリムのセンタードンピシャ状態で始めました。

DSC03051amx8.jpg
↑こういうことです。
ここで確かなことは、オチョコがあるホイールの場合
ニップル1周あたりのリムの横移動量が左右で違う
ということです。
条件により異なりますが、経験上
フリー側1周と 反フリー側3/4周が同じくらいになります。
「条件」については あとで書きます。
このことは ホイール組みをするうえでも知っておくと便利です。

で、思ったのですが、
経年使用(あるいは年単位で放置)したホイールは
スポークテンションが低下しますが
(先ほども書きましたが ニップルのねじ山ゆるみは除外します)、
これはスポークに伸びが発生しているためです。
伸びが発生しているということは、かすかながら
スポークの長さが長くなっているということになります。

DSC03053amx8.jpg
なので、多少乱暴に言えば
経年使用のスポークの伸びと 意図的にゆるめたスポーク長さの伸びは
リムの横移動量に及ぼす影響が同じということになります。
これが「経年使用でフリー側にリムがずれる理由」です。

DSC03054amx8.jpg
リムがセンターですら ありませんが、
かなり極端な状態として上の図のようなホイールを描いてみました。
ここから、同じ量だけ(例えば1mm)スポークが伸びるか
ニップルをゆるめるかすると
DSC03055amx8.jpg
リムはフリー側に寄るはずです。
同じ1mmが横に向かって使われる割合が
左右で異なるためです。

DSC03056amx8.jpg
「同じ1mm」という前提ですが、
これはスポークの伸びの場合では正確ではありません。
ニップルをきっかり1周ゆるめた場合は「同じ長さ」だけ
スポークが伸びることになりますが、
オチョコがある後輪は 左右でスポークの長さが異なるので、
スポークの伸びは「長さに対する割合」で伸びると思うのです。
例えば シマノハブとオープンプロリムで32Hの反フリー側が
6本組みだとするとスポーク長さは295mmとなり、
ラジアル組みだと281mmになります。
ここからスポークが0.1%伸びるとすると 6本組みが0.295mm、
ラジアル組みが0.281mm伸びることになりますが、
経験上間違いないこととして
「ラジアル組みのほうが リムのずれが起きるスピードが早い」というのがあります。
ラジアル組みのスポークのほうが リムの伸びに対する角度の損失が無いので、
要素の大小で言うと スポーク長さに対する割合よりは
角度のほうが大要素ということになります。
これは 先ほどのニップル1周ぶんの横移動量の条件のひとつでもあって、
反フリー側ラジアル組みは フリー側のニップルの回転量に比べて
非常に少ない量で横移動量が釣り合います。
フリー側1周に対して 反フリー側2/3周か、半分ちょっとくらいでしょうか。
ハブの寸法的条件でも変わりますが。

DSC03057amx8.jpg
私の想像では こうです。
ここでは左右に厚みのあるホイールではなく平面的な図として見てください。
ラジアル組みのスポークはスポークの軌道そのもの、
タンジェント組みのスポークは最終交差を通るラジアル線(上の図青い線)で
1mmぶんだけリムを押し出すのに必要な長さは、
タンジェント組みのほうが大きくなります。

「ハブとリムの関係はスポークの「引っぱり」だから押し出すという表現はおかしい」
というツッコミをいただきそうですが、すでにテンションによって
内周側に引っぱられたリムが、テンションが和らいで外周側に移動するのを
見かけ上「押し出す」と書いたまでです。

あとこれは 私の気のせいかも知れませんが、
2:1組みの反フリー側のスポークが伸びるのは
左右同数スポークよりも早い気がします。

その原因として「左右異数組みは左右同数組みと比べて
反フリー側のテンションが高いので より伸びやすい」というのは誤りです。
もし そういうことであれば 普通のホイール、
つまり左右同数組みの後輪の場合は
「フリー側のほうが高テンションなので フリー側のスポークが伸びやすい、
よって経年使用ではリムは反フリー側にずれる」ということになります。
が、実際は そうはならないので
経年使用におけるリムのずれに関して スポークテンションは
オチョコによるスポーク角度の差より 小要素ということになります。
反フリー側ラジアル組みは ずれるのが早い、というのは経験上間違いないので
左右異数組みの反フリー側は基本的にラジアル組みになる以上
そういう感覚に陥るだけの事かも知れません。

で、ひとつ前の記事にあるように
4年間ノーメンテの のむラボホイール1号の後輪の点検をしたときに
リムがフリー側にずれていたと書きましたが、
お客さんには事前に
「おそらくは、フリー側で採った寸法を反フリー側で当てると リム側で空きます」
と言って フリー側にずれていることを言い当てました。

あるトライアスリートのお客さんのレーシングゼロの後輪で、
センタードンピシャにした1年後に点検すると
思っていた以上にずれていたということがありました。
ほぼ振れ無し、当店以外で触った履歴は 確実にありません。

私物の常用している後輪を 紙1枚ほど反フリー側に寄せて組み、
チューブラータイヤを交換するたびに
センターゲージを当てて調べていましたが、
1年半ほどでセンタードンピシャになったことがあります。

経年使用でセンターずれが起きることは間違いないのですが、
こういうことを書くと 微細なフリー側へのセンターずれ全てについて
「ああ、これ よく乗ったからですよ」などと言い出す
同業者が出てきそうなのが嫌です。ここを読むまで知らんかっただろ絶対。
実際は、短期間に大きなずれが発生するわけではありません。
私が フリー側への微細なセンターずれには寛容で(あくまで微細な場合)、
反フリー側へのセンターずれには「これは元からずれてるわ」と
断言するのは こういうわけです。

それなりの数の カンパニョーロ/フルクラムの後輪を
点検していれば分かることですが、
リムがずれている場合は ほとんどがフリー側に寄っています。
新品に限ってもそうです。
これは、組んでから売れるまでの 数ヵ月~2年くらいの間に
スポークが伸びてずれた、という現象が起きているような気がします。
とくに アルミスポークのモデルでは。
後輪で散見されるセンターずれの量を
前輪ではほとんど見かけない、というのも そう思う理由です。
前後輪ともメーカーの検品の段階では
センタードンピシャだったのではないかと。


例外的に、ほとんどの場合反フリー側に(しかも思いっきり)
ずれている後輪があります。R-SYSです。
DSC03058amx8.jpg
R-SYS系の後輪ですが、
反フリー側のスポークのみカーボンで、カーボンは伸びません。
スポークの伸びでリムがずれる要素が フリー側のみなのです。

DSC03059amx8.jpg
マヴィックのアルミスポークもカーボンスポークも、
ねじ山の径が大きく ねじ止め剤が強いことから
経年使用でニップルがゆるんでくることは ほぼありません。
しかもカーボンスポークの場合
スポークヘッド、カーボンのスポーク部分、ニップルのねじ山部分が
ひとつのカタマリになっているので なおのこと自然に回ることがありません。

R-SYS系の後輪のセンターずれについては
反フリー側にずれていたのが
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)←この記事中に 今日の記事の伏線あり
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)(→こちら)、

フリー側にずれていたのが
(→こちら)(→こちら)(→こちら
(→こちら)←R-SYS系としては珍しく リムがフリー側に寄っていますが、
という記述あり
です。
ざっと調べただけなので漏れが無いとは言い切れませんが
恣意的に抜き出したわけでもないので、これって「統計」と言っていいのでは・・・。
ていうか ずれてる場合のずれの量が えぐいですね。
あと もうひとつ重要なことを。
R-SYSはニップル1周あたりの
リム移動量の左右差が最も大きい後輪です。
フリー側1周の移動量が 反フリー側1/2周か、それ未満で釣り合います。
左右アルミスポークのキシリウムの場合、フリー側がラジアル組みですが
それでもニップル1周あたりのリムの移動量は反フリー側のほうが上です。
ラジアル組みかタンジェント組みかより オチョコのほうが大要素だからです。
R-SYSでは 反フリー側がラジアル組みなので
「スポークの角度が寝ているほう+ラジアル組み」という条件がそろい
キシリウムよりもニップル1周あたりの横移動量の左右差が大きくなっています。

つづいて、先日のレイノルズの後輪の増し締め(→こちら)について
記事中で補足できる量ではなくなったので
ここで しておきます。
DSC03060amx8.jpg
センターずれ無しの最初の状態のフリー側のH1ST(A)を、
お客さんに見せました。

そこから、張ってあるフリー側の増し締めが困難なので
反フリー側を3周ゆるめ、
フリー側を1周+1/2周+1/4周締めました。
このとき、微細な縦振れ取りもしていますが
テンションの多寡には ほぼ関係ありません。
この時点の、リムが最もフリー側にずれきった状態の
フリー側のH1ST(B)をお客さんに見せました。
反フリー側がゆるいのにAとBが ほぼ同じくらい(Bがやや高い)です。
これ以降、微細な横振れ取り以外では フリー側を触りません。

そこから、反フリー側を再び3周 締めました。
フリー側を1と3/4周増し締めているので
リムはセンターにまで戻りません。

そこからさらに、リムがセンターになるまで
反フリー側を一方的に増し締めできるわけですが
この増し締めボーナスぶんの
上の図プラスアルファのニップルの回転量は、
フリー側の増し締め量の1と3/4周より少なくなるはずです。
実際にそうなりました。
最終的にセンターが出た状態でのフリー側のH1ST(C)が、
数値のバラつきの下限が H1ST(A)の上限と同じか
やや上になったのを お客さんに見てもらっています。

追記:さらに別件ですが、かなり前にいただいたコメントで
「後輪を組むときに、左右同量ニップルを回しているのに
センターがずれます」という内容のものがありましたが、
それは左右同量で回しているからです。

category: ホイールの話

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