のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

リムセメントかリムテープか  

お客さんから たまに訊かれる質問に、
「チューブラータイヤの接着、リムセメントとリムテープではどっちがいいの?」
というのがあります。
私個人は断然リムセメント派ですが、それぞれメリット・デメリットがあるので
書いていこうと思います。
以下、
リムセメント=セメント
リムテープ=テープ
チューブラータイヤ=タイヤ
と略します。

まず、単純な接着力について。
これはセメントのほうが上です。
テープで貼ったタイヤを剥がすのに それほどの労力は要りませんが、
セメントでしっかり貼ったタイヤは 剥がすのにたいへん難儀することがあります。
また、シクロクロスでは実質セメント一択です。
テープが泥の水分に弱いのでしょう、テープで貼ったタイヤがずれたり
最悪 剥がれたりという事例をよく見ます。

次に、ブレーキ熱の耐性について。
これはテープのほうが上だと思います。
急勾配の下りで ブレーキレバーを握りっぱなしでいると、
リムがシューとの摩擦で徐々に熱くなっていきます。
最終的に、リムを触ると やけどするくらいの温度まで上がりますが、
これによってセメントが溶けてタイヤがリムに対して前方向にずれます。
テープでもなるかも知れませんが、セメントのほうが先に起こります。


次に、出先でパンクした場合について。
DSC03717amx.jpg
↑セメント式であれば、タイヤを剥がしたリム面にいくらかのセメントが残ります。
また、スペアタイヤを使い古しのタイヤ、もしくは あらかじめフンドシにセメントを
塗ってあるタイヤにしておけば 出先でリムセメントを塗る必要はありません。
このままリムにはめて7気圧でも空気を入れれば、よほど下りを攻めるなど
無茶をしない限りは大丈夫です。そうそうは剥がれません。
後述しますが、リム側に「ベッド」をきちんと作っておけば なおさら安心です。
テープ式の場合は スペアタイヤの装着にテープを必要とします。
ということはテープを携帯する必要があるということですね。
これが面倒だというのが私がセメント派である最大の理由です。
というより、私が自転車を始めたときは
テープというものがなかったというのもありますが。
DSC03718amx.jpg
↑このビットリアと延々書いてあるタイヤのセメント塗布面が
元来「リムテープ」と呼ばれる部分なのですが、
俗称では「フンドシ」と言います。
現在では「リムテープ」と言うと「チューブラータイヤの接着用テープ」を
差す場合が多いので 混同を避けるため 先ほどはフンドシの呼称を用いました。

話がそれますが「スーパーレコード」という単語の指すものも
「1985年ごろまでのカンパニョーロのコンポのフラッグシップモデル」ではなく
現行の11Sコンポのフラッグシップモデルを指す場合が一般的になりました。
それと同じで、サンマルコに「コンコールスプリント」という
後ろが はね上がった形状のコンコールがあったのですが、
現在 同名で普通の形状の全く違うサドルが出ているので
非常にまぎらわしいですね。
私が話をする場合 古いほうのものを指す場合が多いのも
混乱に拍車をかけます。
脱線終わり


次に、タイヤの貼り方について。
この点がセメントについての食わず嫌いを生んでいるのではないでしょうか。
まずテープの場合ですが、リムに一周テープを貼って、
端の部分だけを少しめくっておきます。
その上でタイヤをまず張り、軽く空気を入れます。
チューブラータイヤは「センター出し」という作業が必要です。
目安はリムから見えるフンドシの出しろが左右一緒、
かつ片側一周で同じくらいに見える感じになれば
あとはタイヤ自身のセンター精度の問題となります。
タイヤの中心がホイールの外周の頂点に来るようにセットした後、
先ほどめくっておいたテープの端を引き出せばタイヤ貼りとなります。

セメントの場合ですが、まずはリム側にセメントを塗布します。
夏と冬(というより気温)で乾燥時間が変わりますが、
指でセメントを触っても糸を引かない程度
(指にセメントがつかない程度)まで乾かします。
それからすぐにタイヤを張って 軽く空気を入れ、センター出しをします。
これは速やかに行わないとタイヤがリムに完全に接着されてしまうので
もたついてはいけません。
また、タイヤ張り時にセメントに触れると 指にセメントが付いてしまい
なかなか落ちなくなってしまいます。
特に個体差として内径の小さいタイヤ(コンチネンタルの高級モデルと TUFO)では
リムにタイヤをはめるのを手こずるあまり バルブの反対側の部分のタイヤサイドと
指をセメントまみれにすることもあるでしょう。
このあたりもセメントが敬遠される理由のようです。

また、セメントの場合ですが
接着力を上げるために タイヤ貼り時はタイヤのフンドシにも
うっすらセメントを塗布した方がいいです。
リムに張っていないタイヤに空気を入れると
フンドシ面が横を向いてきますので(TUFOなどで例外あり)
地面に横たえたときにフンドシが真上を向く状態にしておくと
この作業がしやすいです。
慣れてくると「タイヤ交換時にすぐ剥がれる方がいい」という理由で
接着力を必要以上にしないため あえてこの工程を省いたりもしますが、
私が仕事として預かる場合は100%タイヤにもセメントを塗ります。

また、新しいリムであれば まずリム側にセメントをうっすらと塗り、
完全に乾燥させます。その後 再びセメントを塗り重ねます。
これを何度か繰り返し、タイヤ剥がし時でも そうそう簡単に剥がれない
セメントの膜をリム側にきっちり作ることをオススメします。
この膜を「ベッド」と言います。
最近のセメントは高性能なので
ベッド無しの1回塗りでもタイヤはちゃんと付きますが、
ベッドありのほうが接着力が上になります。
シクロクロスではセメント1回塗り程度では
タイヤ剥がれが起きることがありますから、
ベッドをきっちり作ることはロードバイクよりも重要です。
また、ベッドには リムのタイヤ貼り面を保護する役割があり、
アルミリムではどうでもいいですが カーボンリムではこの点が
重要となることがあります。これについても後述します。


次に、どっちがいいの?という点について。
タイヤ貼りの作業時の簡便さと失敗しにくさ(指が汚れない)から
私はまず初心者の方にはテープをオススメしています。
もうひとつテープを勧める理由があります。
テープを使う場合は リムのタイヤ貼り面がセメントなど全く乗っていない
クリーンな状態でなければいけない、というのが理由です。
DSC03719amx.jpg
↑これはベッド・・・を通り越して 単なるセメントカスになってますが、
この上からセメントを塗るなり もういちどベッドを作るなりすることは容易です。
しかし、テープに移行するために これをきれいに落とすのは至難の業です。
「リムセメントクリーナー」なるトルエン入りの溶剤を使うのですが、
消しゴムで鉛筆の字を消すような簡単な作業ではないのです。
ラリッてしまいそうになる臭気の中、金属のブラシでゴシゴシこすって
リムセメントカスまたはベッドを落とさねばなりません。
なので、セメント→テープへの移行は実質 不可能だと思ったほうがいいです。
私としてはセメント派が増えてほしいのはやまやまですが、
テープ→セメントがいつでも移行可能なのに対して
セメント→テープは実質 不可逆という事情から、
まずはテープをオススメすることにしています。


次に、作業後の接着力について。
テープの、作業の簡便さ以外での もうひとつのメリットです。
セメントで貼ったタイヤは、貼った直後にハードなブレーキングをすると
タイヤが進行方向に対してずれます。
十分な接着力を得るのに作業後 最低でも数時間を要します。
テープの場合はそんなことはありません。
貼ってすぐにレースで使うことも可能です。
最終的な接着力はセメントが勝りますが、
貼った直後に限って言えばテープのほうが上です。


次に、カーボンリムに対するダメージについて。
Tniのリムの説明書には「セメントの場合 溶剤の影響でリムが剥がれることがあります」
とあり、テープを推奨しています。が、これはちょっと疑問です。
カーボンリムからタイヤを剥がすときに
タイヤ張り面のカーボンの表層が剥がれることがありますが、
経験上セメントよりもテープのほうが剥がれ事例が多いです。
セメントの話ですが、これを防ぐために カーボンリムの場合は
アルミリム以上にベッド作りが重要になってきます。
先日のボーラワンの振れ取りの後日談がそれに関連するので
ご紹介します。
DSC03666amx.jpg
↑これ、ボーラワンですが あろうことか
テープの上からセメントを塗るということをしています。
やったのはお客さんではなくてショップらしいですが。
そのときに「タイヤを剥がしたら表層が剥離したぜHAHAHA」と
言われたそうなので(これ自体は起こりうることなので仕方ないです)、
リムの保護を考えて 今後は完全にセメントに移行することになりました。

DSC03672amx.jpg
爪がもげそうだ。
まず、リムに癒着したテープを剥がすのが難儀しました。
これを怠るとベッドが作れません。
頑張ります。

DSC03675amx.jpg
↑きれいにしました。クリアな層が乗っている質感ですね。
これは表層剥がれの起きていない部分です。

DSC03674amx.jpg
↑こちらは表層剥がれの起きている部分。
色つやの無いのが分かります。
今後ここをテープで剥がした場合、
剥がれ箇所がさらに広がる可能性があります。

DSC03676amx.jpg
というわけで1回塗りではなく、
ベッドを厚めに作りました。
本当なら1週間以上かけることができればいいのですが、
白浜のクリテリウムに間に合わせる都合上そういうわけにもいきません。

DSC03678amx.jpg
で、貼れました。

DSC03679amx.jpg
このボーラワンに付随した作業についての私信です。
気にしないでください。
このディスクホイール、コリマのフレキシブルバルブエクステンダーを使うと
かえって良くない(穴に収まらない)ので 延長なしにしておきましたよ~。

DSC03722amx.jpg
話がそれました。
上の画像のリムですが、これはセメント1回塗りで貼った後なので
ベッドがありません。この程度ならきれいに剥がしてテープに移行するのも
不可能ではないかなという感じです。

DSC03725amx.jpg
タイヤを剥がすときに、リム側にセメントが残る方がいいのですが、
DSC03726amx.jpg
タイヤ側にセメントの膜を持っていかれることもあります。
そうしてベッドが無くなった、または薄くなった部分は
次回以降 やや厚めにセメントを塗って乾かします。
先日、ヴェロフレックスのタイヤのフンドシにワックスのようなコーティングが
あると書きましたが、それについて「接着力に不安はないですか」
というようなコメントをいただきました。
セメントでもテープでもそれについては全く問題ありません。
あれはタイヤ剥がし時に ベッドが剥がれにくくするためのタイヤ側での工夫です。


最後に。
セメントとテープ、どちらが有利不利というのはありません。
使いやすいほうでいいと思います。
(シクロクロスではセメントを推しますが)
チューブラータイヤでセメント式の場合、
出先のパンクのとき パンクから再発進までに要する時間は
慣れればWOや チューブラーのテープ式よりも短時間で済みます。
チューブラータイヤは思ったほど面倒くさいものでもありません。
タイヤの構造上 WOよりも乗り心地が良く、
コーナリングの限界が高いものが多いので
機会があれば ぜひ使ってみてください。

category: その他 機材の話

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