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のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

レーシングゼロのリム交換ごっこのやり直しをしました  

お客さんから レーシングゼロコンペティツィオーネの前後輪をお預かりしました。
DSC04319msn4.jpg
まずは後輪から。
縦振れがあるので 直してほしいとのことです。
カンパニョーロ・フルクラムの、リム穴に お休み位相がある後輪は
その構造上 取りようが無い縦振れがありますが、
その縦振れの量は 振れ取り台にかけずに
目視で判別できるような量ではありませんし、
接地面のタイヤの変形量より小さいので
乗って分かることもありません
(タイヤに10気圧くらい空気を入れて 3本ローラーに乗る、
などの極端な状況を除く)。

あと、縦振れ取りの精度が異常に低いものについても
吊るしの状態では まず存在しないと言っていいので、
この手のホイールで お客さんから
縦振れを自己申告されるような場合は
吊るしの状態以降に 振れ取りごっこなどで
いぢくられた場合に限られます。

今回の件では、振れ取りごっこではなく
「リム交換ごっこ」でした。
やらかしたクソショップの名前は お客さんとの約束で書きませんが、
いわゆる老舗です。やらかしたのは 丁稚ではなく2代目店主です。
そのショップは持ち込みのホイールを整備することはないと思うので
元のホイールからして そこでの購入品だと思いますが、
お客さんが リムを壊して修理をお願いしたところ
「リム交換にはスポークの全交換が必要だ」と言われました。
で、出た~!クソショップの常套句!

お客さんは
「カンパニョーロ・フルクラムのアルミスポークのホイールの
リム交換の際に スポークの全交換は不要。
今までに数十件やったけど 全交換を要した例は一例も無い。
全交換を提案する奴は スポーク全交換くらいカネがもらえるなら
やったってもええわというカスか、
客がモノを知らんと思ってフカシてる詐欺師の どっちか。」
というようなことを書いているブログを読んだことがあることから
かなり念を押して「スポークの全交換は不要だ」と言って
前後輪を預けたのですが、それでも勝手に前後輪のスポークを全交換されて
全部で12万円ほど支払ったとのことです。
一応、リムとスポークが全て定価で
工賃がホイール1本1万円、前後輪で2万円ほど取ったのであれば
12万円というのは ありえる金額になります。
というか12万円くらいかかるというのであれば
新品への買い替えを提案したほうがいいのでは・・・?
なお、元のスポークは勝手に廃棄されていたので
本当に交換を要する状態だったのかどうかは うやむやにされています
(リムが変形するくらいであれば、
数本程度は本当にダメだったということはありえるが
全数ダメというのはありえない)。

で、12万円かけてリム(とスポーク)を交換した前後輪ですが、
目に見える縦振れと センターずれ疑惑があるので
前輪を1回、後輪を2回 あとから再度 修理を頼んだそうですが
どー見ても直っていないので 当店にお持ち込みされています。
なお、センターずれ疑惑については
「センター出してるから大丈夫」と言って
目の前でゲージを当てたりなどは してくれなかったそうです。

DSC04320msn4.jpg
DSC04321msn4.jpg
リムが フリー側に ずれています。
12万円かけてフルクラムの吊るしの精度以下とか ナメてんのか。
横振れが1ヵ所ありましたが、ゲージを当てた位相はそこを避けています。

なお、作業は全て お客さんの目の前で やりました。
私が触る前が どうであったか、触ったあとに どうなったかも全て説明しています。
仮に クソショップにクレームを言いに行くとして、
当店の名前を出しても かまわないし
この記事を見せても かまわないと言ってあります。
「ちゃんとやってた!言いがかりつけんな!」という寝言は言わせません。

縦振れですが、反フリー側のリム穴7ヵ所の縦位置が そろえば OKです。
逆に言うと、構造上 それ以上は追い込みようがありません。

バルブ穴から 時計回りに数えて 反フリー側のリム穴の位相7ヵ所に
1~7までの番号を付けて 縦振れを見たところ、
3の位相が内側にゴバッと入っていて、
ついで4の位相も 3の位相ほどではないものの内側に入っていました。

DSC04322msn4.jpg
↑これは1~7の位相のうち 最も外側に振れていた箇所です。
お休み位相だと もっと外側になっていますが、そこと比較してはいけません。

DSC04324msn4.jpg
↑3の位相
DSC04323msn4.jpg
うまく撮れていないので 分かりにくいですが、
けっこう 内側に引っ込んでいます。

あと、全般的にテンションがヌルめでした。
張ればいいというものでもないですが、これについては
当店にあった 吊るしのレーシングゼロと
スポークテンションを テンションメーターの数字で
比べて見てもらって、触る前と後で明確に違っているのを
確認してもらっています。
最終的には わりと張り気味の吊るしの個体と同じくらいにしました。

で、作業に取り掛かろうとしたのですが
(ここまで まだニップルを全く回していません)、
とんでもないことに 気が付きました。

DSC04325msn4.jpg
↑これは反フリー側のスポークですが、短すぎます。
適正に締めれば ちょうど良くなるというのではなく、
明らかに長さを間違っています。

この後輪のスポークは フリー側の刻印が「70」、
反フリー側の刻印が「68」です。
このホイールの中には無かったですが、例外はあります。
それについては次の記事で。

通常、反フリー側ラジアル組みの後輪は
フリー側のタンジェント組みのスポークのほうが長くなりますが、
メガフランジ化以降のレーシングゼロの場合は
フランジ径が大きいことと、スポークの軌道が ほぼフランジの接線になることから
フリー側のスポークのほうが短くなっています。
「70」と「68」では、「70」のほうが短いということです。

上の画像の状態、明らかに ねじ山のかかりが浅くて異常なんですが
組んでる最中に これが分からないくらい 組み手がアホなのか
なんかおかしいけど まあいいやと思って強行したのかは不明です。
そして、どちらの場合でも プロショップとしてはアウトです。

スポークの長さが間違っているというのは
この時点では 仮説に過ぎません。
証拠の画像がないと クソショップが
「間違えたわけが無い!」と ほざく可能性があるので

DSC04326msn4.jpg
実際に 反フリー側を全数バラしました。
ちょっとした振れ取り作業で済むと思ったら
大変な手間になっています。

DSC04327msn4.jpg
DSC04328msn4.jpg
文字入り赤スポークは フロント用とリヤ左用の2種類しかないので、
フリー側の長さである「70」の文字入り赤スポークというのは ありえません。
実際 赤スポークは「68」でした。
で、残る黒スポーク6本のうち 3本が「70」でした。
ねじ山かかりが異常に浅く、仮に そのままでお渡しすると
近い将来 私もお客さんも お互い いやな目に遭うことが予想されるので、
仕方なく 当店で「68」の黒スポークを3本 買ってもらうという話になりました。
なに、外した「70」の3本は フリー側のスペアになるので
そのまま お渡ししときます・・・。と言いかけたときに ふと思いました。
フリー側に「68」を入れている間違いも ありえるのではないかと。

DSC04329msn4.jpg
↑「70」です。
厳密には「70・」となっていますが、
これは数字の向きを示す点です。
「・0ム」となっていた場合 読む向きが逆だということです。

DSC04330msn4.jpg
↑ここも「70」です。

DSC04331msn4.jpg
↑これは「・89」ではなく「68・」なので
「68」です。
反フリー側のスポークをフリー側に入れています。
こちらは、スポークのねじ山を ほぼ使い切っています。
もしかして スポークテンションがヌルいのは
フリー側に入れた「68」が
どん突きで締められなくなったからかもしれません。

DSC04332msn4.jpg
↑ここも「68」です。
しつこく書きますが、お客さん(とその次に作業を待っていた
別件のお客さん)の目の前で作業しているので
これが私の捏造した画像だという可能性はありません。
いや、そのレベルの言いがかりをしてきそうな奴なので
一応 予防線を張っているだけです。

DSC04333msn4.jpg
間違っているスポーク、反フリー側の「70」と
フリー側の「68」に目印のテープを貼りました。

DSC04335msn4.jpg
↑反フリー側の「70」は3本です。

DSC04334msn4.jpg
↑フリー側の「68」も3本です。
つまり、スポークを一部 間違えていただけなので
新規に買う必要はありませんでした。
いやー、その点だけは良かった。
フリー側のスポークの刻印は ニップルをゆるめずとも読めるので
この時点でも フリー側のニップルは一切 触っていませんが、
上の画像のフリー側の「68」は いずれも「70」と最終交差を成しています。

DSC04336msn4.jpg
↑フリー側の「70」
DSC04337msn4.jpg
↑フリー側の「68」
このホイールのニップルですが、
画像のフリー側は まだ一切 触っていないわけですが
すでに やたらと角がナメ気味なんですよね。
前のホイールから ニップルを使い回したとしても
これは ひどいです。

DSC04341msn4.jpg
直しました。
DSC04342msn4.jpg
間違っていたスポーク3本ずつを交換したので
暫定センターだの 冒頭に書いた3の位相の縦振れが大きいだのは
全部ふっとんで、いちからのホイール組みより ややこしい内容になりました。

お客さんからも、私がたまに ここで書く
「ホイール1本組むより 時間がかかったわ」というのが
まさか自分のホイールで起こるとは思わなかったと言われました。

ちなみに この後輪の工賃は4000円です。
我ながら安いと思いますが、そもそも私は関係ないとはいえ
ひとつのホイールで工賃を2重取りされるのは不憫だと思ったからです。
クソカスショップが払うというなら1万円くらい請求しますが。

DSC04338msn4.jpg
DSC04339msn4.jpg
センタードンピシャ

DSC04340msn4.jpg
縦振れも追い込んでいます。
上の画像のホイールは回転しています。

DSC04344msn4.jpg
DSC04345msn4.jpg
つづいて前輪。
お休み位相が無いのに 後輪より縦振れが大きかったです。
うっすらセンターずれありで、横振れだけは ほぼ取れていました。

上の2つの画像ですが、ゲージの位置は同じです。
お客さんは リム交換ごっこ後に ホイールを少し使ったので
ブレーキゾーンに磨耗痕がありますが、
お預かりした時点の状態では この磨耗痕は真円です。
磨耗痕の上下の、ブレーキシューが当たった跡が無い部分の
幅を見てもらえれば分かりますが、
磨耗痕と振れ取り台のゲージの距離は同じです。
ホイールを回すと、磨耗痕よりの外周側の きれいな部分の幅が
位相によって うわんうわんと変わります。

という状態から 縦振れを取ったところ
(横振れも取ってセンターも出してます)、
リムの輪郭が限りなく真円に近く、
ブレーキゾーンの中で かつて真円だった磨耗痕が
上下に うわんうわんと踊るという状態になりました。
画像は撮っていませんが お客さんには見てもらっています。
そして、もし この前輪を一切使わなければ
元の状態の縦振れを視覚化した状態が維持されるので
なんならクソショップに見せてやってもいいですよと言っています。



ホイール組みも 振れ取りも、
「作業する者の妥協点100%まで、
材料が許す限り 精度を追い込む」という点では
実はやっていることは同じです。
この「妥協点100%」には 個人差がありますが。

妥協点100%は(プロの場合は)
「これでやっと お金をもらっても恥ずかしくないところまで
追い込めたぞ!」という到達点ですが、
元の状態は フルクラムの吊るしに遠く及ばない、
非常に低い妥協点100%でした。
しかもスポークの左右を一部間違えているという おまけ付きです。
これは私もお客さんも一致した意見ですが、
今回のクソショップは「どーせ手を抜いてもバレへんやろ」という感じで
妥協点30%でホイールを渡したわけではないと思います。
100%であることは確かで、それが非常にレベルが低い内容というだけのことです。

このクソショップの店主は 当店と
このブログのことは知っているということで、
あるいは いずれ このホイールのお客さんが伝えた場合は
どのみち ここを見ることになると思うので書いておきます。
今回の件、自転車屋1年目2年目の丁稚がやらかしたことであれば
今後 改善される可能性はありますが、
お前のように無駄に歳だけ食ってるクソカスで
現状 この程度のことしかできないのであれば
技術的な面で大成することは絶対にありません。一生そのままです。
絶対に、というのは少なくとも私は 例外を見たことがないからです。
なので お前に出来るのは、
幸か不幸か お前の仕事のレベルがクソだと気付かないような眼識の
お客さん達から しょーもない仕事でお金を毟って糊口をしのぐことだけです。
今回の内容が、精一杯、100%だとすれば
恥ずかしいことをしているという自覚も無いと思いますが、
そのこと自体が手遅れです。
胸を張って堂々と 今回の件は12万円に見合う内容でしたと言えますか?
一応、お客さんは「縦振れあるんじゃないの、センター出てるかな?」と
2回、最終的に ちゃんとした仕事をしたと言えるチャンスをくれたわけですが
(いきなり当店に持ち込むのが 不義理になると思ってくれたのかも知れん)、
お客さんの前でセンターゲージを当てて見せず
私が当てた瞬間に 明確に ずれていた時点で
今回のリム交換、初めて作業を完了させたのは お前ではなく私です。
まあ それ以前にスポークを間違ってたから 振れが無くてもアウトやけどな。
あと、さらにそれ以前にスポークの全交換を強行してるのもアウトやったわ。

category: のむラボ日記

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