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のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

1.0mmロースペーサーの話  

ひとつ前のレーシングゼロのフリーボディ破損の話が
長くなったので、別記事として分割しました。
RIMG3648amx15.jpg
なぜ フリーボディの端が切れたのかという話です。

RIMG3657amx15.jpg
切れている部分を 割れに合うように
指で押して はめ込むと

RIMG3658amx15.jpg
欠けている箇所があるのが分かります。
このフリーボディについては お客さんのほうで
交換なり何なりするので とりあえず放置でいいということになりました。

RIMG3650amx15.jpg
↑これは 時系列が戻って ハブの分解洗浄前ですが、
今回のハブにはシマノ10S用フリーボディが付いていました。
シマノの10Sスプロケットには
ローギヤの奥に 厚み1.0mmの「ロースペーサー」なる
スペーサーの取り付けが必要ですが、
それを取り付け忘れると フリーボディのスプラインに占める
スプロケットパーツの寸法が1mm足りないことになります。
すると当然 スプロケットに左右のガタが発生するわけですが
それを ロックリングの締め込みがゆるいことによるものだと
勘違いして ロックリングをバカ締めすると
スプラインの端の薄い部分が切れて割れることになります。
これは ノヴァテックのフリーボディでも
起きた事例が複数件あります。

11Sフリーボディに 10Sスプロケットを取り付ける場合
11Sと10Sの寸法差を埋める1.85mmスペーサーを
フリーボディの奥に入れるわけですが、
その1.85mmスペーサーを入れると
なぜか1.0mmロースペーサーを抜く人がおり、
その状態でロックリングをバカ締めして
フリーボディの端を切るという発生の手順です。
さすがに1.85mmスペーサーの入れ忘れは
スプロケットがガチャガチャと動きすぎるので 気付きますが、
それが1.0mmだと 気付かないこともあるようです。
11Sフリーボディの場合は 1.85mmはハブ側のパーツ、
1.0mmはスプロケット側のパーツで
どちらも必要なので 都合 2枚入れることになります。

RIMG3665amx15.jpg
↑これが1.0mmロースペーサーです。
当然ながら フリーボディのスプラインの奥まで入ります。

RIMG3666amx15.jpg
↑これはシマノの7800ハブのフリーボディですが、
10S「専用」となっていて これ以前の9Sコンポの
スプロケットが取り付けられないように
スプラインの高さを途中から高くしています。
このフリーボディの場合には ロースペーサーは要りません。

「新10Sのデュラエースホイール(またはハブ)には
以前の9Sスプロケットの取り付けは不可!
これを使いたければコンポを10S化しろ!」
という ほんの一時の しょーもない嫌がらせ、
露骨な計画的陳腐化
を図ったために
それ以降 ロースペーサーが要るだの要らんだのという
ややこしい問題を後世に残しました。
ちなみにスペーサー関係の問題は起こしていませんが
現行のデュラエースグレードの後輪も
「新12Sのデュラエースホイールには
以前の11Sスプロケットの取り付けは不可!
これを使いたければコンポを12S化しろ!」
と 全く同じことをしています。
物の売り方が透けて見える話です。
あっ、表向きの理由は「軽量化などを追求したら
どうしても こういう形になってしまったんだよ」
ということになっています念のため。

RIMG3667amx15.jpg
10S専用フリーボディには
1.0mmロースペーサーが奥まで入りません
(ついでに書くと 9Sスプロケットも ここで引っかかります)。
なので、ロースペーサーを要するフリーボディに
入れ忘れることはあっても
ロースペーサーが不要なフリーボディに
過分に入れてしまうことは無いということになります。

RIMG3668amx15.jpg
図にすると こうなります。
10Sスプロケットの裏側には
ロースペーサー用のヌスミ寸法が設けてあります。
ここまでの話であれば、ロースペーサーが不要な場合
そもそも取り付けようが無いのだから
「ロースペーサーが奥まで通るフリーボディの場合 必ず入れる」
ってことで いいんじゃないの?と思うかもしれませんが
これには例外があります。

RIMG3671amx15.jpg
↑これは 6600系アルテグラの
14-25Tの10Sスプロケットです。

RIMG3672amx15.jpg
トップギヤが13T以上あるスプロケットは、
UCIのジュニアカテゴリーのレギュレーションで
アウター×トップのギヤ倍数に制限があったころに(現在では撤廃)
高体連で よく使われていたころから
通称 高体連ギヤとも呼ばれていました。
CS-6600では13-25T・14-25T・
15-25T・16-27Tの4種類がありますが、
16-27Tは どちらかというと 当時のロード用として
最も大きいローギヤである27Tに加えて
18・20・22Tが付いていて
ロー側の歯数を詰めて寄せているので
ヒルクライム用としての用途が大きかったり、
13-25Tは 時速50kmオーバーの下りで
ガンガン踏むことをしない限り困らない
クロスレシオの歯数なので 使いでがあるなど
必ずしも高校生専用のスプロケットというわけではありません。

13-25Tの10Sに 11Tと12Tを加えた
11-25Tの12Sスプロケットというのがあれば
非常に有用なのですが、現在のロードバイクでは
最小ローギヤのコンビネーションを選んでも
11-30Tというクソアホワイドレシオだったりします。
まあシングルテンションのリヤメカで
最小ローギヤの歯数を 25Tにも34Tにも適合させるのは
無理でしょうから仕方がないのでしょう。

おっと。話が それましたが
この高体連ギヤ、
RIMG3673amx15.jpg
ローギヤの内側の形状が
ロースペーサー1.0mmを内包した寸法になっています。
なので 10S専用でないフリーボディに対してであっても
高体連ギヤの場合のみ ロースペーサーは不要という
例外となっています。ややこしい!

RIMG3670amx15.jpg
図にすると こうなります。
10S新デュラエースへの買い替え圧を より強めたいという
メーカー側の 一時の しょーもない都合の押し付けで
ロースペーサーが要るだの要らんだのという問題に
さらに ややこしい例外を設けているわけです。
ひとつまえの記事のレーシングゼロですが、
高校の自転車部の部室にあると書きました。
ホイールの年代からしても ギヤ比規制があったころのものです。
練習などで 11Tまたは12Tトップの
普通のスプロケットを使うことは違反ではないので、
普通のスプロケットと高体連ギヤを
部室でとっかえひっかえして
ロースペーサーを入れ忘れることは 充分にあり得ます。

なので 結果フリーボディの端を
ロックリングの締め付け力で切ってしまうのも
起こること自体は仕方がないという話です。


おまけ
RIMG3674amx15.jpg
↑これは11-25Tの11Sスプロケットですが、
RIMG3675amx15.jpg
10Sフリーボディに取り付けるために
ローギヤのスパイダーアームの内側を削いでいるものです。
この記事の論旨に全く関係ないので
見たことを忘れてください。←じゃあ載せるな

category: ホイールの話

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2023/05/12 07:37 | edit

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