のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

ハトメの話とニップルの話  

今日は豪華2本立て!ハトメの話とニップルの話です。
2つとも、TniのAL300のインプレを書く前に
書いておかないといけない話なので いっぺんにいきます。

まずはハトメの話から。
DSC00074amx.jpg
一般的なリムでホイールを組む場合、
まずニップルをリムの外側から中に入れます。

DSC00075amx.jpg
で、こう組むんですが、
DSC00076amx.jpg
スポーク張力が高くなってくると、ニップルがリムを食い破って
出てこようとする力が働きます。

DSC00077amx.jpg
リムは、成型機から押し出された直後はカーテンレールみたいな
まっすぐの形状なのですが、
DSC00078amx.jpg
それを曲げわっぱのように 丸く曲げて接合、
接合部の真反対側(例外あり)にバルブ穴をあけて完成です。

DSC00080amx.jpg
わざとボコボコ気味に描いてますが、押し出し成型の精度が甘いと
ニップル穴周りの厚みが不均一になり、厚みの薄い部分で
リムが破損しやすくなります。

DSC00081amx.jpg
↑それの補強としてリベットのようなものをかしめているのが
「ハトメ(アイレット)」です。材質はしんちゅうです。
重量増にはなりますが、リム破損のリスクが軽減されます。
これはリム内側だけの「片ハトメ(シングルアイレット)」というもので、
DSC00082amx.jpg
リムの上下に通っている「両ハトメ(ダブルアイレット)」というハトメもあります。
この場合はスポーク張力をリムの外側でも受けることになるので、
リム破損リスクはさらに軽減されます。

DSC09409amx.jpg
以前ご紹介した新旧コスミックカーボンの図ですが、
上のコスミックカーボンSLは片ハトメ、
下の旧コスミックカーボンは両ハトメです。
これがリムの重さの違いの理由のひとつになっています。

DSC00083amx.jpg
アイレットを日本語でハトメと呼ぶのは、鳩目、つまり鳩の目に似ているからです。

DSC00104amx.jpg
↑今ではリムの成型技術が上がっているので、こういう複雑な
形状も可能です。外側だけでなく、内側でみても
スポーク穴の周辺だけ肉厚を増やすということもできるので、
ハトメは必ずしも必要ではなくなってきています。
こう書くとハトメは成型技術の低さを隠すために入れているような
印象を受けますが、ハトメが付いているからといって
悪いリムというわけではありません。


つづいてアルミ(とカーボン)スポークの完組みホイールのニップルについて
DSC00084amx.jpg
スポーク張力によるリム破損リスクの軽減のため、だけではないですが
キシリウムのリムはリム内側にしかスポーク穴があいていません。
これは高熱のビットを回転しつつリムに押しつけることで
ねじ付きの穴をあけるというマヴィック独自の技術です。

DSC00085amx.jpg
それを専用のアルミスポークで張るわけですが、この 専用リムに
専用スポーク&ニップルという組み合わせは 手組みホイールでは
なかなか出せない剛性を出すことができます。
1996年デビューのヘリウムはストレートスポークでこそありますが、
スポークやニップルは手組みホイールと同じ規格なので
手組みホイールでも同等か それ以上のものを作れる可能性はあったわけです。
1999年デビューのキシリウム以降、専用設計の完組みホイールで
手組みホイールでは絶対出せないような縦剛性でホイールを組めるようになったので、
重量的に手組みホイールと変わらなくても、乗ったら全然違う(完組みの方が硬い=走る)
というホイールができるようになりました。

先日のTni AL300ホイールは、そういう専用設計完組みホイールには
剛性(ホイールで一番重要な要素)ではまず勝てないと はっきり認めたうえで
それより一段下のスチールスポークの完組みホイールと伍して 走りますよ、
価格も加味すればコストパフォーマンス的にもいいですよ、という立ち位置です。

DSC00087amx.jpg
この構造ではリムテープがいらないのもメリットです。
リム外側にバルブ穴以外の穴がないので、このままでは無理ですが
チューブレス化もしやすいですね。
チューブレスタイヤはマヴィックとハッチンソンがMTBで始めたのが
最初なので、マヴィックがロードチューブレスを最初に出すと思ってましたが、
後発のカンパニョーロとシマノよりも なぜかロードチューブレスに消極的です。

DSC00089amx.jpg
2006年にフルクラムがレーシング1・3・5というラインナップで
登場しましたが、その中でフラッグシップモデルのレーシング1が
「リム内側のみにスポーク穴があいた完組みホイール」として発表されました。
この時点ではカンパニョーロのミドルハイトホイールのトップモデルである
エウラスはスチールスポークです。

実はレーシング1の構造は、マヴィックとの間で 特許に関して争っていました。
名目上カンパニョーロと別会社なら もし裁判で負けても会社をたためばいい、
ということでわざわざフルクラムという会社を立ち上げたのだと思います。
マヴィックと和解したのか どうなのかは知りませんが
フルクラムのレーシング1の構造を世に出すことに問題はなくなったようで、
カンパニョーロのホイールも後にフルクラム化してしまいました。

その特許避けのためだと思うのですが、レーシング1型のリムは
ニップルをひとつひとつ磁石で呼ぶようになっています。

DSC00090amx.jpg
初代レーシング1はしんちゅうニップル、レーシングZEROはアルミニップルですが、
キシリウムにしろレーシング1にしろアルミスポークは断面積を稼がないと
剛性が確保できません。スチールスポークは太くて2.0mmの真円断面ですが、
アルミではそんなに細くできないので、太いスポークに合わせて
DSC00101amx.jpg
当然ニップルも ごつくなります。
DSC00102amx.jpg
普通のニップルはこんな感じです。

DSC00095amx.jpg
↑スチールスポークの場合

DSC00096amx.jpg
↑アルミスポークの場合
外周部にこんなごつくて角ばったものがあると、
DSC00097amx.jpg
整流効果(当ブログではエヘン虫受け流し特性とも呼びます)
の面では明らかに不利です。

DSC00099amx.jpg
ホイールの頂点はバイクの速度の2倍で前進していると
サイクロイド曲線の話のときに書きましたが、計算してみると
キシリウムないしレーシング1のニップル部分は、
ハブの真上を通過するとき車速の約1.85倍で前進しています。
車速が40km/hならニップル部分は約74km/hです。

しかしこの構造のおかげで剛性が飛躍的に上がっているので
差し引きのホイールの性能では間違いなく向上しています。
そうでないとレーシング3(スチールスポークでリム内側のみスポーク穴の仕様)が
最強ってことになってしまうので。

DSC00093amx.jpg
じゃあニップルを内蔵すればいいじゃん、と思ってしまいますが、
それをやるとリムの外側にも穴をあけないといけなくなります。
リムテープ分の重量増や チューブレスにできなくなるなどの
問題も発生しますが、
DSC00094amx.jpg
太いスポーク、とそれを取り巻くニップル、をさらに囲むスポークレンチが
通るような穴といえば かなり大きな穴径になります。
この面でもアルミスポークの内蔵ニップルは実質無理なのではないでしょうか。

DSC00107amx.jpg
チューブラーリムならリムテープを張ることはないので、
リムの外側にニップルを入れる穴を設けても重量増にはなりません。
さらに、ニップルを磁石で呼ぶ必要もなくなります。
ということで 私はシャマルウルトラのチューブラーリムで
スポークの穴位置ドンピシャに穴をあけていますが、
もちろん自己責任です。

DSC00091amx.jpg
今回の話と直接関係ないですが、チューブレスタイヤ用リムについて。
チューブレス用のリムは、リム中央にまずビードを落ち込ませる凹みが必要です。
DSC00092amx.jpg
さらに、空気が入った後 ビードを保持するハンプという部分を
設ける必要があります。その2点を上の図では青い線で書いてるんですが、
ちょっと分かりにくいですね。この分だけリムが重たくなります。
だいたい15gくらいでしょうか。
キシリウム(チューブレス非対応のレーシング1型ホイールも)に
チューブレスバルブを付けてチューブレスタイヤをはめて空気を入れると
一見チューブレスとして使える状態にはなりますが、
パンクの時に一瞬でタイヤが外れる可能性があるので非常に危険です。
ニップル用の穴をピッタリふさぐことで普通のリムをチューブレス化する
というキットも存在しますが、ハンプなしのリムにチューブレスタイヤを
付けるのは何となく こわいですね。

category: ホイールの話

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