のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

2:1スポークをはじめとする左右異数スポークのホイールについて  

少し前に当店で ノヴァテックの2:1スポーク用ハブでホイール組みをしました。
ボーラのセンター出しもしましたし、初代レーシング1をバラから組んでもいます。
それらについて「2:1スポークのホイールについて どう思いますか?」というような
コメントを5件ほどいただいているので私なりの考えを書きます。
DSC08913amx2.jpg
その前に。ホイールの振れ取りで、
上の図のような状態のリムをセンターに寄せたい場合を考えます。
真ん中に寄せるには、ニップルを締めてリムを引っぱるか
その反対側のニップルをゆるめて押し出すかになります。
横振れに関しては締めもゆるめも同じように見えます。

上の図の赤と青の矢印は 本当は重なっているのですが
見にくいのでちょっとずらして描いています。

DSC08915amx2.jpg
ニップルの締めもゆるめも横振れに関しては同じ、だとしても
縦振れに関しては違います。
締めればリムは内周側に、ゆるめれば外周側にひずみます。
なのでリムの移動量は横と縦の合成となり、
上の図の破線のような感じになります。

DSC08917amx2.jpg
横振れを取るときに、もっとも大きく振れている部分の
ニップルの調整だけで取ってしまうと 縦振れが出てしまうので、
縦振れを中和させるように その前後のニップルも同時に調整することがよくあります。
私が思うに この加減はホイールを組んだことのある人にしか分からないことなので、
「ホイールは組めないけど振れ取りは出来る」というのは
振れ取りが出来るうちに入らないのではと思います。
組みかけのホイールを その人なりの「組めた!」という妥協点まで持っていくことと
ホイールの振れ取りというのは多分 同じ作業です。

DSC08921amx2.jpg
で、可能な限り精度の高い縦振れ取りのためには
リム穴の間隔が均等で、かつスポークの引っぱり方向が交互であることが最良です。
要は普通のホイールが最も良いということです。
上の図の2:1ホイールで 2つ続けてフリー側のスポーク(青)が続く部分あたりで
反フリー側にリムを寄せたい場合、
フリー側のニップルをゆるめる以外に手段はありません。
その部分では外周部にリムが移動しますが、
これを(横振れを出さずに)内周部に戻す手段はありません。
完組みホイールの場合はスポークテンションが高いことが多いですから、
2:1スポークのホイール用のリムは スポークテンションが縦振れに反映されにくい
=頑丈な≒重いリム であることが望ましいです。
縦振れに関して完全剛体に近い硬さのリムというものはありませんから、
2:1スポークのホイールは厳密な縦振れ取りを実質放棄しないといけません。
「縦振れの量がタイヤの接地面の変形量以下なら走っても分からないから平気」
というのが妥協点なのでしょうが、これは私には受け入れがたい点です。

DSC08922amx2.jpg
リムは横方向にも完全剛体ではないので、反フリー側のラジアル組みは
フリー側のタンジェント組みの交差の真向かいにあるのが望ましいです。

DSC08923amx2.jpg
リムの変形をなるべく左右で拮抗させた状態のほうが
横振れが出にくくて(少なくて)済むからです。

反フリー側をラジアル組みに決めているのは、
2:1スポークで反フリー側をタンジェント組みにしたりすると
(条件次第では)スポークテンションが左右で逆転しうるからです。

DSC08924amx2.jpg
ここからはスポークの本数の比を図と照らし合わせていきたいので、
「左:右」で表現することにします。
24Hで1:2スポークにするなら8:16本になります。
これを「フリー側が16本のとき」で比べると16:16の32Hホイールと
比べることになりますが、スポークの左右全部の本数を合わせたいので
12:12で24Hのホイールと比べることにします。
組み方は引き続き 反フリー側ラジアル組み・フリー側タンジェント組みで考えます。

1:2スポークは左右のスポークテンションが非常に近しくなるというのが
(縦振れ取りを放棄してまで得た)メリットですが、
「フリー側のスポークの数が増える」という点でも優れています。

DSC08925amx2.jpg
ペダリングパワーをリムとタイヤに伝えているのは おもにフリー側のスポーク、
さらに その内のヤマアラシさん方向のスポーク(上の図の赤いスポーク)です。
私は、極端に言えば グッ!とペダリングを踏み込んだ瞬間に限れば
駆動効率に関してはヤマアラシさん方向のスポークしか
存在していないとさえ考えています。
この考えを突き詰めれば ヤマアラシさん方向のスポークが多いほど
駆動効率があがるということになります。
12:12の24Hでは それが6本ですが
DSC08926amx2.jpg
8:16の24Hでは それが8本になります。
このことも左右異数スポークのメリットとして考えていいのではないでしょうか。
ただ、私には「ホイール片側のスポークテンションの総和を 片側の本数で分割担保する」
という考えもあり、それに基づけば反フリー側8本というのはスポーク1本当たりの
負担が大きいのではないか、とも思うのです。
(特に首折れスポークでは)スポーク飛びが起きやすくなるのでは?という懸念です。
また、リム側の負担も大きくなると思います。
このブログでいうところのRK(ニップルがリムを食い破ろうとする力)ですね。

これについては
「RKについてですが、リムの穴振りを無視するとして、
左右のテンションがほぼ等しくなるということを考えると、
フリー側のテンションに耐えられるリムであるならば、
そのテンションを超えない限りは、
リム側の問題は無いのでは?と思うのですが、いかがでしょうか?」
というコメントをいただきました。
例えば 1:2スポークで スポークテンションが左右とも120kgfで
リムの公称限界が130kgfなら大丈夫なのでは、ということですね。

厳密には リムが壊れるのはスポークの張力がリムの耐RK値を超えるからです。
ただ、だからといってメーカー側がRKの限界値を示したところで
ホイールを組む側には まずRKを測りようがありませんから、
疑似的な目安としてスポークテンションとして示しているだけです。

24Hで左右異数スポークで組むとして、左<右の条件で最大差になる場合を考えてみます。
スポークドホイールが成立するホイール片側の最低スポーク本数は3本です。
なので24Hなら3:21となりますが、
フリー側の21本は奇数なので タンジェント組みに出来ません。
なので4:20が 24Hの左右スポーク本数が最大差になる場合ということになります。

DSC08927amx2.jpg
フリー側のヤマアラシさん方向のスポークが10本になりました。
24Hでは理論上最多の本数です。
スポークの太さを左右で同じにするとして(左右同径組み)、
左右のハブフランジ径だけを厳密に調整してやれば
このスポーク数の条件下でも左右のスポークテンションを同じには出来るはずです。
それがリムの「スポークテンションとして示している閾値」以下であっても
スポークの飛びにくさやRKが12:12の24Hと同じとは
私には とても思えないのです。
さっき書いた「ホイール片側の負担をスポークの本数で分割担保」でいうと
反フリー側は たった4本でそれをしていることになります。

反フリー側のスポーク本数を減らしても
「スポークテンション」が同じならOK、なのであれば
4:20の24Hというのがあってもいいはずです。
極論のように見えますが
12:12→8:16→4:20というのは
フリー側のヤマアラシさん方向のスポークの本数を
24Hのままで2本ずつ増やしていっただけです。

この3つの中で
「8:16こそメリット・デメリットを勘案して24Hのベストな落としどころだ」
と言えるだけの確実な論拠は私の中にはありません。
「8:16は 12:12(普通のホイール)と比べて
4:20に片足を突っ込んでいる」という見方しか出来ないのです。
それなら12:12で左右異径異本組みなどの悪あがきをすれば・・・
というのが 私が普段組んでいるホイールです。
これも 完組みホイールをハブから何から設計する側の立場であれば
また変わってくると思います。
「8:16に最適なハブの寸法とリム穴の間隔を見出したぜ!」
ということが出来ますので。
ただ、均等間隔穴のハブとリムによる市販の材料で1:2組みする
メリットは、少なくともデメリットを超えないと思います。

長くなりましたが左右異数組みは
特殊設計の完組みなら ありかもしれない、
手組みでは ちょっとやめといたほうが・・・。
というのが私の結論です。


おまけ
DSC08928amx2.jpg
4:20ですが、スポークの引っぱりの間隔をどうあっても均等に出来ません。

非1:2の左右異数スポークといえば
コリマに20Hの後輪があります。8:12です。
リム側の穴でスポークを1周ぐるりと見ていくと
RRLRLRRLRLRRLRRLRLRLという穴振りになっており、
しかも穴の間は均等間隔ではありません。
これの振れ(縦も横も)、とにかく取りにくいです。
センターがずれていたのを直したこともありますが、
横振れはともかく 縦振れの妥協点を かなり甘くしないといけませんでした。
(触る前に見た縦振れと同程度かそれ以下にはしていますが)

category: ホイールの話

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2014/01/30 07:21 | edit

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