のむラボ日記

自転車工房「のむラボ」のブログです

うにょーんを出さない技術  

このブログではスポークの塑性変形を「うにょーん」と呼んでいますが、
ホイール組みの過程で 技術如何によってこれを出さなくすることは可能なのでしょうか?
というような質問をされました。
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ニップルを増し締めすると、あるスポークテンションまでは
スポークの長さに変化は(ほぼ)ありませんが、
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ある点を超えてスポークが「もうあかん」と 音を上げると
うにょーんが出て スポーク自体の長さが伸びます。
特に丸バテッドスポークのバテッド部分でこれが起きます。
こうなると これ以降の増し締めはスポークテンションに反映されず、
おもにスポークが伸びていくだけとなります。
当然ですが、ニップルをゆるめたところでスポークの長さが縮むわけではありません。

サピムのレーザーとCX-RAY、またはDTのレボリューションとエアロライト、
この2つは同メーカーで ほぼ同比重の丸バテッドとエアロバテッドのスポークですが、
エアロバテッドのほうが極端に うにょーんが出ません。
これは材質的な違いではなく エアロの方は扁平にしたことによる加工硬化が
起きているためだと思われます。

私個人としては扁平スポークの空力的な効果というものを
軽視しているわけでもないのですが、
CX-RAYの何がありがたいかというと
「軽い割りに うにょーんがほぼ出ない」点を最も重視しています。

レボリューションとCX-RAYでは ホイールの重量はほぼ同じになりますが
うにょーんを出さずに張れる限界は雲泥の差です。
もしレボリューションでうにょーんが出ないというのであれば
必ずしもCX-RAYにこだわることはないのですが・・・。

当店でDTのエアロライトを常用しないのは、
DTの問屋さんの通常取り扱い長さが10mm刻みで
サピムの問屋さんの通常取り扱い長さが2mm刻みであり、
安定供給度もCX-RAYのほうがいいからです。
もしこの事情が逆ならエアロライトを常用します。それだけのことです。
この2つは、物としてはほぼ同じだと見ています。

レボリューションですが、110kgfくらいまでスポークテンションを上げれば
かなりの高確率でうにょーんが出ます。
これには多少のばらつきがあって、100kgf以下でも出るときは出ます。
スポークテンションメーターが無いと分からないことですが。

ホイール組みの過程で、うにょーんは散発的に出るものではありません。
例えば32Hの前輪で ニップル32ヵ所を同時に増し締めすれば話は別ですが、
1ヵ所ずつ増し締めしていくと 最もこらえ性の無いスポークが「もう あかん」と
音を上げて うにょーんモードに移行する感じです。

この「もう あかん」ポイントを超えれば 誰がニップルを締めても
うにょーんは発生する、というのが私の考えです。
(私の考えというより 当たり前の話ですが)

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↑天井からワイヤーを吊るして ワイヤーの先にバケツをくくりつけたとします。
天井はリム、ワイヤーはスポーク、バケツの重さはスポークテンションです。
このバケツに水を注いでいくのですが、バケツの容量いっぱいになるまでに
先にワイヤーがプッツリ切れるものとします。
バケツとワイヤーを結ぶ針金はどんだけ頑丈やねん、というツッコミは無しでお願いします。

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仮に水1リットルがちょうど1kgで
バケツ部分の自重が20kg、ワイヤーの自重は考えないものとします。
このワイヤー、吊るしたものの重さが100kgを超えると うにょーんを生じ始めて
200kgを超えるとプッツリ切れる(破断する)ものだとします。
水満杯のバケツの重量は ワイヤーが破断する限界よりずっと上だとしておきます。

仮に「俺がホイールを組んだら うにょーんは出ない」と言っている人がいるとしましょう。
バケツに注ぐ水が80リットル未満であれば 誰が水を注ごうが
ワイヤーは伸びません。
なので「うにょーんは出ない」というのが
「うにょーんの出ない範囲でホイールを組む」というのであれば
それは当たり前のことです。

これがもし「80リットル以上180リットル未満の範囲でも うにょーんは出ない」
「俺以外の人間の場合は うにょーんが出るのに、俺は出ないようにできる」と
いう意味であれば それはオカルトです。
水の注ぎ方(ニップルの締め方)を どばっと注いでも ちょろちょろ注いでも
水入りバケツの重さが100kg以上になると うにょーんを生じるからです。

バケツに人が飛び乗ったような、衝撃加重的な水の入れ方は考えません。
ここで言うところの 数十kgの水を一気に入れるような
ニップルの締め方というのはできないからです。

私が過去ここで「レボリューションで組みました」と書いたホイールは
リムがマヴィックのGEL280だったと思いますが、
ああいう軽いパイプ系リムはスポークテンションが そもそもあまり上げられず、
スポークテンションによるリム穴の変形も大きいので
レボリューションでも うにょーん発生前にホイールが組み上がります。

リムの変形というのは上の図で言うと天井が重みでひずんでくるような状態を指します。
このリムの変形はスポークテンションをスポークと分かち合うので
スポーク側にかかる負担が軽減され、降伏点も破断点も(ほんの少しだけ)
先送りになるのではないか、という考えが私の中にあります。
経験的にはどうも肉厚の薄いリムほど うにょーんが起きにくい気がするからです。

うにょーんを出さない技術というのは
「うにょーん以前でホイールを組み終える」か
「そもそも うにょーんが出にくいスポークを選ぶ」ことを
技術と呼ぶならありえますが、
「あるスポークテンションで必然的に出るうにょーんを
組み方(技術)で回避する」ことはありえないと思います。

同じRK(ニップルがリムを食い破ろうとする力)のとき、
タンジェント組みよりもラジアル組みのほうが低スポークテンションになるので
例えば前輪をタンジェント組みしないことで うにょーんを出にくくする、
というのは一見「技術」に見えますが
スポークそのものの降伏点が変わったわけではありません。
そのままさらにスポークテンションを上げていけば
いずれ うにょーんが出ますが、その閾値が組む人によって
変わるというようなことはありません。

category: スポークテンションの話

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右フランジ幅VS左右異本組み  

今日もホイー(以下略)。
DT585のリムで後輪を2つ組みました。
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その前に。リムはDT585、スポークはDTコンペ、ニップルはしんちゅうで
ハブ以外の材料は全く同じです。
ハブはひとつがFH-7402デュラエース、
もうひとつがFH-T660 LXのハブをOLD130mmに加工したものです。

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右のフランジを揃えると
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LXのほうが かすかにフランジ幅が広いのが分かります。
この程度ではホイールの横剛性には大差ありませんが。

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今度は右エンドで合わせます。

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改造LXハブのほうが右フランジ幅が非常に狭いです。
OLD135mmのハブを130mmに加工すると
純正ロード用ハブ比でこのような状態になります。
右フランジ幅の実際の差は2.2mmです。
昨日書いたことと関連しますが、シマノ11S用ハブの多くは
フリーボディを長くした結果 この改造LXと同じくらいの
右フランジ幅になっています。

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組みました。
これは同じお客さんのホイールで、一応お客さんではありますが(←一応言うな)
古くからのレース仲間ということもあり
多少は実験的な試みも了承していただいています。
デュラエースハブのほうはロクロク組み、
改造LXハブのほうはヨンパチ組みで組みました。

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↑改造LXはヨンパチ組み

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↑デュラエースはロクロク組み

デュラエースのロクロク組みですが、要は普通の6本組みです。
左右同じスポークなので見かけ上のスポークテンションを比較することが
できますが、フリー側121:反フリー側95となりました。
これを基準とします。
(反フリー側がフリー側の約78%ですが、
換算後の真のスポークテンションが100:78になるわけではありません)

次に改造LXのヨンパチ組みですが、デュラエースのロクロク組みと
フリー側のスポークテンションを合わせるように組みました。
こちらはヨンパチ組みなので反フリー側のスポークテンションが
より高く組めることが期待されます。
結果はフリー側125:反フリー側98でした。
あれ?ほぼ同じですね。

右フランジが約2mm内寄りになって オチョコの条件が悪くなったのを、
ヨンパチ組みでほぼ相殺しただけの結果になりました。


最近のシマノ11Sハブの右フランジ幅は
この改造LXと同じ程度であることが多いですから、
最近のハブで左右同本組みはちょっと厳しいのでは、というのが私の結論です。

category: スポークテンションの話

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ホイールのスポークテンションの左右差の話 その4  

リヤホイールの剛性バランスの左右均一化の話の続きです。
横剛性確保のためにオチョコ量は 思いっきりひどくする、
それによって生じるスポークテンションの左右差は
何とか考えるとして、その「何とか」の具体策をこれまで出してきました。
オフセットリム、ハイローフランジハブ、スポーク本数を左右で変える(2:1)、
組み方を左右で変える(完組みではフリー側ラジアル組み、
手組みではヨンロク・ヨンパチ組み)などありましたが、
どうしたところで剛性が左右均一になったり 反フリー側が強くなったりはしません。

しかし こうした策をやるとやらないでは出来あがるものが全然違ってきます。
今日は最後の悪あがき、スポークの太さについて。
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反ヌポークラジアル組みの前輪を考えてみます。
スポークの通し方は別にヌポークでも構いません。
深い意味はありません。

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スポークの先に、省略していたニップルを書き足して、
左右別々に考えることにします。

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以前書いたことと同じですが念のため。

スポークがどれだけ張っているのか調べたいとき、
スポークの張り具合はスポークの変形量に比例するので、
スポークの変形量からスポーク張力を調べることができます。
これは専用の計器を使えばすぐにわかります。
これによって得られる数値、スポークテンションを
以後「ST(スポークテンション)」と呼ぶことにします。

スポークテンションが増せばニップルの首元がリムを食いやぶろうとする力も
増します。これを以後「RK(RimをKuiやぶる力)」と呼ぶことにします。

リムのメーカーは 自社のリムそれぞれに対してSTの上限を定めていますが、
これはリムのスポーク穴に力がかかりすぎてリムが破損するのを
防止するために定めています。本当はRKを計測できればいいのですが、
実質 不可能なので RKに比例すると考えられるSTのほうで
上限値を定めています。

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向かって右側のスポークで考えます。
ある太さのスポークで100STに張ったとき、
リムに100RKのストレスがかかるとします。

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スポークの太さが同じであれば左側も同じになります。

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↑話は変わりますが、上の図のような状態を考えてみます。
天井(リム)から吊るした2.0mmのスポークと1.8mmのスポークに、
同じ重さのおもりを付けたとします。
スポークの長さは同じです。
1.8mmのスポークのほうが細い(断面積が小さい)のですが、
同じ重さをより少ない面積で受けるので、スポークにかかるSTは
1.8mmのスポークの方が大きくなります。

ニップルの首元にかかるRKは、おもりの重さが同じなので 同じです。
(厳密にはスポークの自重が違うので、完全に同じではないですが)

ここで重要なのは、細いスポークほど1RKあたりにつき
必要とするSTが大きくなるということです。

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話をもどします。
先ほどの図で、向かって右側のスポークを2.0mmのプレーンだとします。
それを100STで張ったとき、リムに100RKのストレスがかかるとします。

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向かって左側のスポークを全て1.8mmのプレーンにしました。
それを100STで張っても、リムがセンターに来ません。
リムがセンターに来るのは左右のRKが釣り合ったときです。
上の図で左側のRKが約90としているのは概算で、
100以下であるということは間違いないです。

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リムがセンターに来ているのかどうかは、
RKを測らなくてもリムセンターゲージで確認できます。
リムを実際にセンターに持ってきました。
このとき、左右のRKは釣り合いますが STは釣り合いません。
上の図で左側のSTが約110としているのは概算で、
100以上であるということは間違いないです。

左右でスポークの太さを変えた場合、
細いスポークの側のSTが高くなります。


これをリヤホイールのスポークテンションの左右差を是正する為に
使えないかというのが今回 私の言いたいことです。

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↑これは私のエッジ1-68リムで組んだホイールです。

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反フリー側反ヌポークラジアル組みです。
自分で組んでおいて こう言うのもなんですが、
全然気に入っていません(組み方の話です。リムは気に入っています)。
そのうち組み直すかもしれません。

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フリー側を2.0mmプレーンスポーク、
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反フリー側を星のエアロスターブライトIII型で組んでいます。
これぐらいのリム高であっても私はフリー側を2.0mmプレーンで
組むのが好きなんです。
このホイールの場合は反フリー側ラジアル組みなので
フリー側に太いスポークを使ったくらいでは
左右のテンション差を是正とはいきませんが、
フリー側に発生するペダリングによる フリーボディのねじれに
少しでも耐えてほしいという思いからこうしました。

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ものすごく乱暴な話なので私は支持しませんが、
「リヤリムやリヤタイヤの前面投影面積に隠れるスポークは
整流効果にあんまり関係ないよ説」というのがありまして、
この理屈が本当ならアルミスポークの完組みホイールの角ばった大きなニップルも
(ホイールの外周部でありながら)空気をかき乱さないということです。
エヘン虫もびっくりです。
ここまでは主張しませんが、フリー側はスポークがほぼ直立しているので
反フリー側よりは 丸スポークを使うことの空力的なデメリットは少ないかも、
と思っています。

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↑私が一番 気に入っている手組みの後輪はこれですが、
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フリー側を2.0mmプレーンの4本組み、
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反フリー側をサピムのCX-RAYの8本組みでヨンパチ組みにしています。
この場合は左右のスポークの太さを変えることで
左右の剛性バランスを近づけることを意識しています。
8本組みも普通の8本組みではなく Wクロスで結線ハンダ付けしていますが、
Wクロスで結線すると、スポークが1本飛んだ時、片側すべてを換える羽目になるので
オススメしません。自分のだから しているだけです。

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スポークの太さを左右で変えるという仕様は、のむラボホイールに反映していません。
ちょっとしたデメリットがあるからです。
スポークの重さを2.0mmプレーンスポークを基準にして 概算する話(→こちら)を
書いたことがありますが、これを使います。

2.0mmプレーンスポークの断面積は、半径×半径×円周率になりますから、
1.0×1.0×π(パイ)で 1π平方ミリメートルになります。

1.8mmプレーンスポークの断面積は、同様に
0.9×0.9×πで 0.81π平方ミリメートルになります。

スポークはまっすぐな部分以外に 首元とねじの部分があります。
スポークの同じ長さ当たりの重さ(ここでは比重と呼ぶことにします)を
2.0mmプレーンスポークで100とした場合、
1.8mmプレーンスポークの比重は(私調べでは)82.6になりました。
各メーカーごとの 自称ステンレススポークのスチールとクロムとその他微量元素の
配合比は同じではないでしょうが、概算する分には ほぼ同じと言っていいと思います。
2.0mmからみた1.8mmスポークは断面積比で81%、
比重で82.6%ですから、比重≒断面積と見なせそうです。
サピムCX-RAYは薄い側が0.9mm、扁平な側が2.3mmなのですが、
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0.9×2.3mmに収まるスポークの形状と言っても様々です。
0.9×2.3mmと聞いても断面積を求めることは出来ません。
上の図では2種類の0.9×2.3mmを描いていますが、
実際の形状に近いのは上側ですね。
サピムCX-RAYの比重はDTチャンピオン2.0の65%なので、
断面積もおおよそ65%前後と言えそうです。

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すでにばらして 後輪に組み換えていますが、
私のインプレ用のむラボホイール1号の前輪に使っていた20本のCX-RAY、
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量ってみると全部で89gあります。
10本で44.5gですが、片側をDTチャンピオンにしたとすると
10本で68.4gになる計算です。
これは前輪での概算ですが、スポーク1本に付き2.4gほど
ホイールの全体重量が重たくなってしまうんですね。
24Hなら片側の12Hで30g弱 重たくなります。
これは外周部重量ではないので私は気にしませんが、
「ホイールの前後セットで1500g」みたいな大雑把な品評にさらされたときに
「うーん微妙に軽くないな」と思われちゃうんです。
実はより走るための(と私が思っている)工夫の結果の重量増なのに、
単純にカタログ重量だけで判断された場合の見栄えが不利になるので
のむラボホイールでは左右異径スポークを採用しませんでした。

シマノのWH-7950-C24-CLのリヤホイールのスポークは、
左右同じ長さ(302mm)ですが 左と右で品番が違います。
右が2.0-1.8-2.0のエアロスポーク、
左が2.0-1.5-2.0のエアロスポークです。
これはWH-6700およびWH-RS80-A-C24でも同様です。
右だけ太いスポークなのはテンション差の是正が目的ではなく、
フリーのねじれに耐えるためだと思われます。
しかし、左右同じ長さなら右スポークを左と同じものに組み換えたら
もっと軽くなるのでは・・・などと考えてしまいますね。
なんとWH-9000-C24-CLでは
左右とも2.0-1.5-2.0になってました。くそー私が先に考えたのにー(多分)

カンパニョーロのハイペロンやニュートロンも左右異径スポークです。
当然フリー側が太いスポークになっています。
「俺は単純な重量に騙されないぞ、左右異径がいいんだ!」という方は
そういう風にホイールを組むこともできます。ぜひご相談ください。


パークツールのスポークテンションゲージは、
スポークの変形量をみて、スポークの太さごとの換算表と照らし合わせて
スポークテンションをkgfで求めるように出来ています。
そこからちょっと数字を抜粋。
2.0mmプレーンの 76kgf≒1.8mmプレーンの 99kgf
2.0mmプレーンの 85kgf≒1.8mmプレーンの111kgf
2.0mmプレーンの 95kgf≒1.8mmプレーンの124kgf
2.0mmプレーンの107kgf≒1.8mmプレーンの138kgf
2.0mmプレーンの121kgf≒1.8mmプレーンの155kgf
となっています。
これは同RKのときのSTと見なしていいでしょう。
冒頭の図では私の感覚で2.0mmプレーンと1.8mmプレーンの
テンション差は1割くらいに描いていましたが、この表では約3割の違いがあります。
左右異径スポークはスポークテンションの左右差の是正に
それほど大きな働きをしていないと思っていたのですが、
実はそうでもないのかも知れませんね。


のむラボホイールではDTコンペティションの2.0-1.8-2.0を使っています。
2.0mmプレーンの90.3%の重さのスポークです。
ここで、右を2.0mmプレーンにするのではなく、
左をCX-RAYにすることで「軽くしつつ左右是正」を狙えますが、
丸スポークの方がきれいに結線できるという問題もあり、
「あちらを立てればこちらが立たず」の葛藤があります。
いや、本当に難しいですね。あと、値ごろ感のあるものにしたいという考えもありますし、
同価格帯で最軽量のものにしたいという思いもあります。
いろいろ考えた結果が現行の のむラボホイールです。うーん悩む。

category: スポークテンションの話

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ホイールのスポークテンションの左右差の話 その3  

スポークテンションの左右差を是正する話の続きです。
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↑毎度おなじみ、
「ホイールのリムをスポークの穴振りを縫うように交互に避けて切開し、
二枚貝のように開いた状態をリムのブレーキゾーン側から見た図」です。
ついでに言うとイタリアン組みです。

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ありとあらゆる手を尽くしたところで、スポークの角度がオチョコになっている以上
ホイールの剛性バランスの左右差(スポークテンションの左右差ではない)が
均一になることはありません。
極端な話、フリー側のハブフランジをリムにごく近いくらいの
超ラージフランジにすれば、左右のスポークのテンションがそろうことは
あると思いますが、スポークのテンションを均一にする=左右のホイールバランスが
均一になるわけではありません(差は縮まりますが)。
現実的な構造では完全な剛性バランスの均一化は無理ですね。

私のWフリーリヤホイールは完全な均一化(オチョコなし)を果たしていますが、
それは弱い方に合わせているだけであって 剛性がホイールの性能の第一義で
ある以上「意味のないバランス均一化」です。

オチョコはひどく、でもスポークテンションの差は小さく、が理想のホイールです。

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左右のスポークテンションを同じにすれば 左右の剛性バランスが是正されるとして、
今まではハブやリムなどの構造に手を出していましたが、
ここでは「スポークのテンション」という点だけに注目して
均一化する方法を考えてみます。

フリー側のスポークテンションの総和より、
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反フリー側のスポークテンションの総和の方が低いわけですから、
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反フリー側のスポーク本数そのものを間引いてやれば
スポーク1本当たりの分担テンションが上がります。

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これによってスポークテンションが左右同じくらいになるとすれば、
ホイールの剛性バランスも均一に近づくはずです。

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ただ間引いただけではスポークの穴位置の位相が狂いますから、
専用のハブフランジ穴を持つハブと 新しい穴数のリムが必要です。

そのあたりも再調整してスポーク本数の割合も
フリー側:反フリー側で2:1にした最初のホイールは・・・
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フランスのローヴァル(ROVAL)です。
フルクラムではありません。
現在のローヴァルブランドはスペシャライズド傘下でホイールを作っているようですが、
そのホイールも2:1スポークになっています。
上の画像のホイールは1990年代初め頃のモデルで、
オーバーロックナット寸法126mmのボスフリー仕様です。
この時代にこんなことを考え付くメーカーがあったんですね。
しかもこれ、専用形状のストレートスポークにリム内蔵ニップルで
ハイローフランジ、穴数は18Hという なかなか ぶっ飛んだスペックです。
これも手組みではないという意味では完組みホイールの一種ですが、
ヘリウムほど売れなかったので「最初のマスドロードレース用完組みホイール」
として認知されるには至りませんでした。
これ以降2006年のフルクラムまで このスポークアレンジメントを押し出した
ホイールが出なかったことを考えると、早すぎた名作です。
(フルクラムの出た年までローヴァルのパテントが効いていたという可能性もありますが)

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2:1スポークアレンジメントで手組みホイールを組んでみたいとは思うのですが、
ハブを専用設計にする必要があるので、なかなかできません。
仮に32Hのハブでフリー側16H、反フリー側8Hで24Hのリムを組もうとしても、
ハブとリムの位相が合わないのできれいには組めません。

私の知っている唯一の例外がこのヴァーチカルデサントです。
ハイロー気味のフランジに両側で36Hのスポーク穴がありますが、
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フリー側24H、
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反フリー側12Hとなっています。
現状、36Hのリムの多くはセミエアロ形状ですらないローハイトリムでしょうから
普通はリムのスポーク穴に穴振りがあります。それを無視して組む形になるのが
ちょっと気持ち悪いですが、アイデアは面白いです。

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私のWフリーリヤハブは同じハブを2つ買って、
ちょうど真ん中で切ったものを
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くっつけてます。

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これを32Hと16Hの同じモデルのハブでやるとします。
フリー側に32H(片側16H)、反フリー側に16H(片側8H)の
ハブフランジを持つボディ同士をくっつけます。
これで24Hのリムを2:1で組めないでしょうか。

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元32Hのハブボディの16個のスポーク穴は、当然均等な間隔であいています。

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ホイールの位相の4分の1の図を書くと、
片側16Hなので90°分では4Hになります。
リムは24Hなので90°分では6Hになります。

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フリー側からリム穴まで最短距離でスポークを張りました(上の図の青い線)。
ラジアル組みで、と書かないのは、これはラジアル組みではないからです。

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私のWフリーハブの場合、左右のハブボディを接着していないので
片側がもう片側に対して回転し、位相を調整することができます。
そうして反フリー側の8Hをラジアル組みで張りました(上の図の赤い線)。
フランジ穴は左右重ね合わせで描いています。

DSC00410amx.jpg
反フリー側はリム1周8Hに対してハブフランジ1周8Hが
均等な間隔でお互い対応しているので、ラジアル組みになります。
赤い線で描いたスポークを内周部に延長すると、ハブ中心を通ります(ラジアル線)。

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フリー側ではそうはなりません。ハブフランジから出たスポークに対応する
リム側のスポーク穴の間隔が、1:2:1:2・・・と規則的に不均等になっているためです。
この疑似ラジアルは初代キシリウムのフリー側の疑似ラジアル組みに似ています。
首折れスポークで組む以上は、フリーボディのねじれに耐えるよう
ラジアル組みや疑似ラジアル組みはまずいですから、タンジェント組みに
しなければなりません(上の図の青の破線)。
これだけのことをする手間は、得られるメリットから考えれば
単なる徒労といってもいいですね。
手組みホイールに限っては、無理して2:1組みを考えるよりは、
ヨンロク組みやヨンパチ組みのほうが手軽に
ホイールの左右のバランスを是正させる方法として妥当です。

2:1スポークアレンジメントは実質 完組みホイールの特権ということです。
フルクラムの場合はそれに加えて異常なハイローフランジ(ほめ言葉)と、
モデルによってはオフセットリムを採用しています。
うーむ やりおる・・・。

category: スポークテンションの話

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ホイールのスポークテンションの左右差の話 その2の補足  

先日の話にちょっと補足です。

補足そのいちーっ!(←夜のテンション)
DSC00109amx.jpg
キシリウムはフリー側がラジアル組みだと書きましたが、
上の画像を見れば分かる通り、厳密には違います。

DSC00263amx.jpg
ハブ側のスポーク穴の位相を少し絞った形状になっているんですね。

DSC00265amx.jpg
ハブの中心と リムのスポーク穴をまっすぐ結んだ線(ラジアル線)から
このように逸れています。
しかし、おおむねラジアル組みと言っても差し支えないので
フリー側ラジアル組み、と表現しました。
これは初代キシリウムですが、現行のキシリウムエリートも
こういう疑似ラジアル組みになっています。

DSC00267amx.jpg
キシリウムES以降のキシリウムは完全なラジアル組みです。


補足そのにーっ!きぇえぇぇー!!(←疲れています)
DSC00270amx.jpg
タンジェント組みするに当たって、片側のハブフランジを二分した線
(上の図の赤い線)に最も近い穴から通したスポーク同士で交差させる
場合を考えてみます。

DSC00271amx.jpg
↑こうですね。向かって右の穴から出ているのがヌポーク、
左の穴から出ているのが反ヌポークです。

DSC00273amx.jpg
ヌポークの穴から、もしラジアル組みしたらこの軌跡になるよという線、
ラジアル線を書き足します。

DSC00275amx.jpg
そのラジアル線とハブフランジの外周部が接したところから
直交する線、円の接線を書き足します。

DSC00276amx.jpg
ヌポークと円の接線の角度が平行に最も近くなるのは、この組み方です。
ラジアル線から逸れれば逸れるほど(=接線に近づけば近づくほど)
スポークのテンションが上げられるので、スポークテンションの左右差を
是正するには反フリー側を出来るだけ接線に近くなるよう組めばいい、
という話を先日しました。

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もしこれが24Hのハブであれば、6本組みになります。
6本組みでスポークが接線にどれだけ近づくかというのは、
スポークの穴数によって変わってきます。

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↑32Hの6本組み

DSC00279amx.jpg
↑100Hの6本組み
これは極論ですが、スポークを通している穴がハブの二分線から
かなり離れてしまっています(=接線から遠い)。

DSC00280amx.jpg
ハブの二分線に最も近くなる組み方は、実質 上の3種類だけです。

DSC00282amx.jpg
この3つの組み方は、接線との関係がほぼ同じです。

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ほぼ同じ、と書いたのは、ハブの穴数が増えれば増えるほど
穴の間隔が狭くなるので、最も二分線に近い穴が
より二分線に近くなるからです。

DSC00286amx.jpg
32Hと36Hで8本組みした場合、32Hは二分線に近い2つの穴から
スポークを通す形になりますが、36Hではそうなりません。
「じゃあ36Hは9本組みしたらいいじゃん」と思うところですが、
タンジェント組みは ヌポークと反ヌポークを交互にハブフランジに
通している形になっています。9本組みではヌポーク同士、
または反ヌポーク同士を交差させることになり、組むことができません。
3本組みや5本組みや7本組みが出来ない理由も同様です。

ある特殊な形状のハブフランジの場合は
5本組みや7本組みがありえます。
また、18Hのリヤハブで18Hのリヤホイールを組む場合は3本組みが必要です。
18Hのリヤハブというのは極めて珍品ですが存在します。

DSC00311amx.jpg
毎度おなじみ「x本のスポークでy本組みができる範囲はy≦x/4」を使って、
x(スポーク本数)が8本から40本までの範囲で、何本組みできるか
書き出していきます。

DSC00312amx.jpg
その前に。表からは除外しませんが、8Hのホイールというのを
見たことがないので ×を入れておきます。
650Cでなら見たことがあるのですが、700Cでは知らないので。
同様に、30Hと34Hと38Hも×です。
他は存在する穴数です。珍しい穴数の例を挙げると
10H ロルフプリマTT8の前輪
14H 初代ボーラの前輪
22H ハイペロンとニュークリオンとニュートロンとプロトンの前輪
26H ヘリウムの前輪
などです。

DSC00313amx.jpg
まずは0本組み(ラジアル組み)から。
穴数に関係なく組めます。

DSC00314amx.jpg
続いて2本組み。8Hから組めます。

DSC00315amx.jpg
4本組みは16Hから組めます。

DSC00316amx.jpg
6本組みは24Hから組めます。

DSC00317amx.jpg
8本組みは32Hから組めます。

DSC00318amx.jpg
10本組みは40Hから組めます。
なんとなく形が見えてきました。

DSC00319amx.jpg
これらのうち、「初めてy本組みできるようになった」という
穴数を青い○で囲ってみます。

DSC00321amx.jpg
それ以外を消します。
この5つは、x/4ではなく yx/4になります。

DSC00322amx.jpg
8Hの手組みホイールを組むことはまずないでしょう。
40Hのハブやリムはオールドパーツに存在しますが、
これも まず組むことがないので除外します。
y=x/4が成立する この3つが、ハブフランジの二分線に最も近い
2つの穴から通したスポーク同士で組める組み方のうち、
現実的に組むことのできる穴数です。

DSC00282amx.jpg
実はこの画像、2度目です。
この3つの組み方を「最接線組み」と勝手に名付けます。

~32Hのヨンパチ組みが 手組みホイールでスポークテンションの左右差を
軽減する最高の組み方だと思います。36Hでもヨンパチ組みは可能ですが、
なぜ32Hの方がいいのかは後日書きます~

という先日の文章ですが、36Hでは最接線組みが出来ないので
反フリー側を32Hで8本組みするのが最高の組み方だと書いたのでした。

category: スポークテンションの話

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